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朔良さん

のんびりまったり。 読むのは綺麗で残酷な話が好きです。 こちらで掌編・短編小説の勉強をさせていただいています。 遡って皆様の作品を読ませていただいてます。 古い作品に突然コメントすることがありますが、失礼があった時は申し訳ありません。 マイペースですが、頑張ります^^

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Bye bye オレンジチョコレート

13/11/04 コンテスト(テーマ):第四十三回 時空モノガタリ文学賞【 スイーツ 】 コメント:11件 朔良 閲覧数:1732

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 午前一時。
 僕は、時間をかけて丁寧に珈琲を淹れ、大嫌いなチョコレートを一口齧った。
 口腔で溶けるなめらかなチョコレートとオレンジピールの苦み。
 甘いもの好きな君がくれたチョコレートはさすがの味で……。でも、やっぱり僕は、チョコレートが嫌いだと思う。

 大きく伸びをして、狭いアパートの窓を開ける。
 少し冷たい夜風と秋の終わる匂い。遠い夜空の星。
 パチンとつけた深夜ラジオのノイズ混じりの掠れた音が、甘く耳をくすぐる。
 ノイズに紛れて聞こえてくる過去の声。

 冷蔵庫で冷え切っていた青い箱を片手に、ひとつまたひとつ、と、オレンジチョコレートを口に放り込む。
 君のくれた言葉も、ひとつまたひとつ、と、浮かんでは消えていく。


「ふふ。甘いもの嫌いな君に今日は特別なプレゼント〜。これ! 美味しいんだよ、ここのオレンジチョコレート。騙されたと思って食べてみて!」

「ねね、食べた? こないだのチョコレート。でしょでしょ、案外いけるでしょ? 甘すぎないしオレンジピールのほろ苦さがまたいいの。お気に入りなんだぁ。……とこで、知ってる? チョコレートって媚薬でもあるらしいんだけど……。効果はありそう…かなぁ?」

「ん? ああ、そんな顔しないでも大丈夫、わかってるよ、ヴァレンタインは来週だって。これはお薬がもっと効きますようにようにっておまじないなの。……でね、来週、君の部屋に遊びに行ってもいい?」

「む〜。なんで笑うかな、そこで。いいからお口開けて! 夢だったんだから、こういうの。はい、あーん! …もー! これ以上抵抗したらチュウしちゃうぞぉ」

「一緒にいたいな、ずっと。それだけでいいの。チョコレートを半分こして食べられる場所に君がいてくれれば、それが一番うれしいんだよ」

「……なんでかなぁ。こんなに一緒にいるのに、時々、すごくさみしいの。君の心が遠くにあるみたいな気がして…。気のせい? 考えすぎ、だよね。幸せすぎてちょっと贅沢になっちゃってるのかな? …今度またチョコレート持ってくから、わけっこして食べようね」

「……チョコレート、嫌いだったら、そう言ってくれたらよかったのに」

 チョコレートは嫌いだけど、チョコレートを好きな君は好きだよ。
 そう言うと君は、泣き出しそうな顔で「ごめんね」と言った。
 それが、君の最後の言葉だった。


 ふぅ。
 ひとつため息をついて、ラジオを消す。
 夜の静寂と指先のチョコレートの匂い。

 僕はチョコレートの最後のひとつを口に放り込み、窓を閉めた。
 すっかりぬるくなった珈琲で甘い苦みを呑みこむ。
 空になった青い箱をゴミ箱に放ろうとして…僕は結局それを、本棚替わりのカラーボックスの端に立て掛けた。

 うん。
 やっぱり僕は、チョコレートは嫌いだ。

 Bye bye オレンジチョコレート。


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このストーリーに関するコメント

13/11/04 草愛やし美

朔良さん、拝読しました。

チョコ嫌いな男性、ほろ苦い恋、その味が、オレンジピールのチョコで表されていて、なるほどなあって思いました。食べたこともないのに(苦笑)、口にその味が広がってきました。
甘い物は苦手な私ですが、チョコレートは好きです。でも、中にナッツとか入ってないと甘すぎて抵抗があるんです。だから、彼の気持ちがわかるように思いました。可愛い彼女と、成立しなかった恋、苦みのあるチョコレート、設定がうまいなあと思いました。ありがとうございました。

13/11/05 そらの珊瑚

朔良さん、拝読しました。

なんでうまくいかなったんだろう……
好きな人が好きなチョコレートを嫌いだと言い出せなかった男の子、私はなんだか好ましく思えるけど、当事者だったら違うのかもしれないですね。

ちなみにオレンジチョコレートは大好物です♪

13/11/05 朔良

草藍さん、こんばんは。
読んでいただいてありがとうございます。
実は、私は、甘いものは大好きなのですが、チョコレートは苦手で…。
草藍さんとちょうど逆ですね^^
オレンジチョコレートは一度使ってみたかった題材なのですが、真夜中テンションで書いてしまったので今一つすっきりしない作品になってしまいました…。
草藍さんのコメントで救われた思いです。ありがとうございました。

13/11/05 朔良

そらの珊瑚さん、こんばんは^^
読んでいただいて、ありがとうございます。

必要な時に必要な言葉を伝えるって、難しいですよね…。
僕の言葉は、きっと遅すぎて、もう、彼女の心には届かなかったように思えます。
彼女が不安で空回りする前に伝えられたらよかったのですが…。
そこらへんの微妙な心の機微を上手く表現できず、もっと精進しなければと思いました…。

オレンジチョコレート、そらの珊瑚さんもお好きなのですね!
チョコレート好きの方、やっぱり多いですね^^

13/11/07 クナリ

オレンジチョコレートはとても好きですが、
同じくらいほろ苦いこのお話もとてもいいですね。
ラストで、少年のさびしげな横顔が目に見えるようです。

13/11/10 ふぐ屋

朔良様

拝読させて頂きました。
チョコレートを口にする度に思い出される彼女との思い出。
そしてそれが溶けてなくなっていくように、記憶も溶けて行く。
全ての恋が成就するわけじゃないけど、彼の想いが叶わなかった事が
やっぱり僕は、チョコレートは嫌いだ・・・
という一言に込められている、そんな気がしました。

13/11/15 リードマン

拝読しました。
私に好き嫌いはありません! ですが、皆様ご存知でしょうか? 少し前、苦さをパーセンテージで調整してあるチョコレートが存在したという事を!! 私はアレで七割ぐらいのモノを良く好んで食べておりました。

13/11/17 朔良

クナリさん、こんばんは。
読んでいただいてありがとうございます。

オレンジチョコレートお好きなのですね^^
とっても思い入れのあるお菓子のひとつです。
ほろ苦い後味の作品を目指していたので、そう言っていただけてうれしいです。
ありがとうございます^^

13/11/17 朔良

ふぐ屋さん、こんばんは。
読んでいただいて、ありがとうございます。

記憶とか思い出を喚起する匂いやモノ曲…が好きで、それにまつわるエピソードを作ることが多いかもしれません^^
成就しなかった恋ってほろ苦くていつまでも忘れられない気がします。
最後の一言に注目していただいて、嬉しいです。
ありがとうございます。

13/11/17 朔良

リードマンさん、こんばんは^
読んでいただき、ありがとうございます。

リードマンさんは好き嫌いないんですか。うらやましいです。
カカオのパーセンテージが表示されているチョコレートは以前ありましたよね。
70%だとかなり苦そうです…。

14/04/27 朔良

凪沙薫さん
読んでいただき、ありがとうございます。

実は、別名義で作詞のようなこともしているのですが、これはうまく歌詞にできなかったものを、小説のカタチにしてみました。
歌詞を作るときって、印象的なフレーズを作りたいと思いながら書くので、そう思って頂けたのかもしれません。

チョコレート、苦手だったのですが、最近は美味しく感じるようになってきました。
凪沙薫さんも、チョコレートお好きみたいですね^^
コメントありがとうございました!

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