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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
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卑弥呼が愛したスイーツ

13/11/03 コンテスト(テーマ):第四十三回 時空モノガタリ文学賞【 スイーツ 】 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:3060

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 魏志倭人伝に〈南至邪馬壹國女王之所都水行十日陸行一月〉とある。
 つまり不弥(ふみ)国、現在の福岡市箱崎を起点に南へ、いやこれは間違い。東へ海路十日、もしくは陸路一月で、女王が統治する倭国の首都・邪馬台国に着くという。
 そして、〈卑彌呼事鬼道能惑衆年已長大無夫婿有男弟佐治國自爲王以來少有見者以婢千人自侍唯有男子一人給飲食傳辭出入〉、すなわち女王・卑弥呼は鬼道の宗主。夫を持たず、高齢(50歳)のため弟が国事を補佐していた。1000人の下女を侍らせ、人たちはその姿を見たことがほとんどない。ただ一人の男子だけが飲食などの世話をしていた、とある。

 春樹はサラリーマン。多忙な日々の中にあったが、やっと休暇が取れ、気分転換にと中国を旅した。そして訪ねた古都、洛陽の夜店でたまたま1冊の古書を手にした。表紙には外伝とだけ書かれてある。
 実のところ、最近付き合いだした亜美、世間では滅多に見掛けない古書大好き女だ。その彼女にもっと気に入られようと、そんな魂胆で購入し、土産として日本へ持ち帰った。
「えっ、信じられない。この外伝の伝記は──魏志倭人伝よ!」
 カフェで亜美に逢い、手渡した古本。これを手にしていきなり叫ばれても、春樹はコーヒーカップを持ったまま呆然。
「外伝には伝記の裏話や補足があるのよ。私に1週間くれない」
 亜美は食べかけのケーキをそのままにし、席を立ち、さっさと帰ってしまった。「これが古書女の振る舞いか」と春樹はただただポカーンと見送るしかなかった。

 それから1週間後のこと、亜美がケイタイの向こうから話す。「私、山に行きたいの。ご一緒してね」と、ほぼ強制的。
 女がだいたいこんな誘いをする時は、なにかが危ない。春樹はそんなこと百も承知。だが惚れた弱みか、「ああ、いいよ」と軽く返す。それでもちょっと気になる、「何しに?」と訊くと、亜美が甘い声で囁く。
「春樹と一緒に、アケビに山栗、それに自然薯(じねんじょ)を採りに行きたいの」
 春樹はこれで覚悟を決めた。要は汗水流す労役だと。そして予想は的中、まったくの肉体労働だった。例えば自然薯なんて穴を2m掘らないと採れない。それでも亜美のため春樹は頑張った。そしてアケビ10個、山栗500g、自然薯1本の収穫で、まさにヨレヨレ状態で亜美のアパートへと引き上げた。

「春樹、よくお仕事してくれたわ。今から赤米を炊いて、一緒に美味しいスイーツを作りましょ」
 そう宣言した亜美、春樹は何のことかまだわからない。それを察してか、亜美は「魏志倭人伝に、一人の男子が女王の食べ物の世話をしてたとあるでしょ。その外伝の裏話に、女王の好物とレシピが載っていたのよ。それを現代文に直しておいたわ」とノートを手渡す。春樹がそれを開くと、メモられてあった。

卑弥呼の糕点(ガオディアン)→ こなもち
 生地   古代紅米→ 赤米   水多めで炊き、炊き上がったらすぐに餅つき
 つなぎ  自然生 → 自然薯  すり下ろし、粘りで餅をつなぐ
 甘味   木通  → アケビ  種を取り去り、甘汁だけを餅に加える
 風味   山栗子 → 柴栗   茹で、渋皮を剥き、乾燥させ粉にする

「すべて山の幸、古代人はこんな素材でスイーツを作っていたのか」
 春樹は感心するばかり。しかし、亜美は「さあ、お仕事よ」とまたまた労働の強要だ。それからソファでゆったりの寛ぎタイムへ突入。
 それでも春樹は、どんな卑弥呼の糕点が出来るのかなと興味が湧き、餅をついたり、芋をすったりの大活躍。結果、ここに古代スイーツが見事に蘇った。
「ご苦労様でした」
 亜美はねぎらいの言葉を一言春樹に掛け、早速糕点一つ頬張る。春樹はそれをほほえましく見届け、一つ手に取ってみる。
 餅の表面を覆った山栗の粉、色鮮やかに黄色。二つに割ってみると、赤米のためか中は薄紅。それから口に入れると、しっとりとした自然薯の粘りがあり、アケビの清楚な甘さが口の中にふわりと。この世のものかと思うほどの貴賓あるテーストだ。
「これぞ卑弥呼が愛したスイーツだ」と春樹は涙が出そうに。亜美も古代餅を食べ、「美味しいわ」と満面の笑みを浮かべている。春樹はそんな亜美を見て心に誓う、亜美とこんな幸福感を分かち合い、ともに人生を歩んで行こうと。

 そんな感動の一時だった、亜美が妙なことを呟く。「懐かしい味だわ」と。
 それから春樹を真正面に見据えて告げる。
「2000年前、覇留黄(はるき)という召使いがいたぞえ。その男は毎日このスイーツを運んで来た。よ〜く聞け、春樹も、私へのご奉公……その命を掛けて果たされよ」
 こんないきなりの命令に春樹は喉に餅が詰まりそうになった。だが、戸惑いもなく返答してしまうのだった。
「はっはー、卑弥呼女王さま」


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このストーリーに関するコメント

13/11/03 草愛やし美

鮎風遊さん、拝読しました。

奉仕するお台所係りを命令したことって、ある意味、逆プロポーズなのかしら? 食べてみたいスイーツですね。ぜひとも、売り出してみてください。販売はネットでよろしくお願いします。苦笑
先日、ランチした海鮮屋さんのお寿司は赤酢を使ったものでした。寿司米のお色がほんのりピンクでした。あれも赤米でしたよね。趣のあるお色でした。あんな色したお菓子なんでしょうねえ。糕点という言葉初めて見ました。読み方は?

13/11/03 鮎風 遊

草藍さん

そうですね、ネット販売で大儲けの手も。
よろしく。

糕点は中国語でガオディアンと発音し、スイーツのことです。
特に「糕」という漢字、音読みでコウ、
訓読みで (こなもち)と読ませてもらってます。

いずれにしても、はっはー、卑弥呼女王さま、ですわ。

13/11/05 そらの珊瑚

鮎風遊さん、拝読しました。

赤米は古代米とも言われてますが今でも買うことができるので、
白米に混ぜて時々食べたりします。もちもちして美味しいです♪
小学生の頃、卑弥呼伝説の本にはまり真剣にどこが邪馬台国だったのか、
考えるのが楽しかったのを思い出しました。
今では私のような平民もスイーツは手軽に食べることができますが、
昔は身分の高い人しか食べられない貴重なものだったのでしょうね。

最後の亜美さんの一言、お茶目なのか、実はほんとのきおくだったりして?

13/11/06 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

きっと、この二人は邪馬台国の卑弥呼女王と料理人の生まれ変わりだったのでは?
と思ってしまいました。

このスイーツのレシピは実際にあるんですか?
ちなみに大昔、奈良時代とかの日本人はチーズを食べていたと何かで
読んだことがあります。

食品の歴史というのは少し興味がありますね。

13/11/10 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

コメントありがとうございます。

赤米の原産はラオス辺りだとか。
マレーシアで食べたことがあります。
古代の味がしました。

亜美は案外卑弥呼の生まれ変わりだったりして。

13/11/10 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

このスイーツのレシピ、
鮎風がこんなの一度食べてみたいなあと思った、想像レシピです。

だけど素材が・・・肉体労働が必要ですわ。

13/11/15 リードマン

拝読しました。
私はちょっぴり近代でワールドワイドなコメントをば。埼玉県において、とある農家さんがコシヒカリにインディカ米をブレンドした物を販売しております。・・・懐かしい味ですw

13/11/18 鮎風 遊

リードマンさん

コメントありがとうございます。

インディカ米ですか、美味しいでしょうね。
なにかカレーに合いそうな……。

13/11/22 リードマン

返信ありがとうございます。美味しいものに、国境も時代も、ありはしませんよw

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