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朔良さん

のんびりまったり。 読むのは綺麗で残酷な話が好きです。 こちらで掌編・短編小説の勉強をさせていただいています。 遡って皆様の作品を読ませていただいてます。 古い作品に突然コメントすることがありますが、失礼があった時は申し訳ありません。 マイペースですが、頑張ります^^

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雨上がりの虹

13/11/02 コンテスト(テーマ):第四十二回 時空モノガタリ文学賞【 都市伝説 】 コメント:8件 朔良 閲覧数:1497

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 あーあ。雨降ってんじゃん。
「うぇー。雨降ってんじゃん」

 なに、今の。

 心の中を言い当てられたみたいで、ドキッとしながら声のしたほうを見る。
 下足入れの影からひょっこり出てきたのは、クラスメイトの神崎誠だった。
 やたら荷物の多いスクバを肩にかけて、どしゃどしゃとグラウンドを叩いてる雨を恨めしそうに見上げる背の高い姿。

「ちぇ」

 軽い舌打ち。
 
 神崎も雨が嫌いなのかな。
 あたしの場合、濡れるからとかじゃなくて、「雨が降り出したから、今日はもうかえろ」とか「雨だからお外は駄目よ」って楽しいことを取り上げられた記憶が甦って、雨のさみしい感じが苦手なんだけど。

 よく日に焼けた横顔を見ながらそんなことを考えていたら、視線を感じたのか神崎がこっちを向いた。

 わ。やば。

 慌てて目を逸らそうとしたけど遅くて、ばっちり目が合ってしまう。
 あたしに気付いた神崎は、にかっと笑って、

「辛嶋も、今帰り?」
「う…うん」
「すっげぇ降ってるよなー」
「だねぇ」

 神崎、カサ持ってるのかな。
「辛嶋、カサ持ってんの?」

 あ。まただ。

 あたしは、ドキッとしたのを悟られないようにぶんぶんと首を振り、

「う、ううん。持ってない。持ってたらこんなとこ立ってないって」
「だよなー」
「えっと。神崎は?」
「今朝、天気予報は見たんだけど、カサのことは忘れてた」
「…役に立たないヤツ」
「お前も同類だろーがぁ」
「あたし、天気予報見なかったもん」
「じゃ、俺の勝ちだ」
「…それはどっちがバカかの勝負で?」
「そうそう、俺はこの高校でトップクラスの…って、そんな勝負するかーッ」

 あたしがぷぷっと噴き出すと、神崎も一緒になって笑った。
 
 でも、まあ、ぶっちゃけ、今日の雨じゃ…

 カサ持ってても、役に立たないよね。
「カサ持ってても、役に立たないって、今日の雨じゃ」

 あ…。

「……」
「ん? 辛嶋、なんでそんなびっくりした顔してんだ? 度を越した土砂降りとか強風の時はカサさすとかえって危ないらしいぞぉ? これ、豆な」
「…さっき、バカって言われたの気にしてるでしょ」
「う、うるせぇ。…えっと、ところで辛嶋さん」

 話を誤魔化すように神崎がころりと口調を変える。
 あたしは笑いながら、

「なんでしょう、神崎さん」
「雨上がりの虹の話、聞いたことあるでしょーか」
「ううん、知らない」
「じゃ、いいや」
「いいやじゃないよー、気になるじゃん!」
「いやいや、大した話じゃないし、忘れてくれ」
「余計気になる。眠れなくなる。悩みが増える。禿げあがる」
「そこまでないだろ」
「あるから、吐け。なぁ、神崎、吐けよ、吐いたら楽になるぞ。田舎のお袋さんが泣いてるぞぉ」
「今度は容疑者扱いかよ!」
「かーさんがーよなべーをしてぇ…」
「歌うなぁぁ」
「これ以上歌われなくなかったら吐くんだ、神崎」
「わかった、わかったって。えー、本当に大した話じゃないからなー。聞いて後悔すんなよ?」
「おう、どんとこい」
「…えー。俺もさ、友達から聞いた話なんだけどさ」
「うん」

 神崎はなぜか、すっとあたしから目を逸らした。
 そっぽを向いたまま、早口で、

「雨上がりの虹を手をつないで一緒に見たカップルって長続きすんだって。別の高校に行ったダチの兄ちゃんの友達の友達の親戚は、一緒に虹を見た彼女と結婚したらしいから、あたんのかなー…とか…」

 ほんのり赤くなった神崎の顔をじっと見る。
 神崎は顔の前でぶんぶんと手を振り、

「いやいやいや、俺と辛嶋はカップルじゃないから関係ないんだけどな! 女の子ってそういうおまじないとか都市伝説みたいの好きだよなーって思ってさ!」
「……ねぇ、神崎。雨は好き? 嫌い?」
「ええ? ああっと」

 突然の質問に戸惑った後、神崎は少し考え込み、うーんと唸った。

「雨かぁ…。雨は、」

「嫌いじゃないけどさみしい感じがして苦手かな」
「嫌いじゃないけどさみしい感じがして苦手だな」

 ぴったり同じように声が重なる。

「あたしも知ってるよー。都市伝説みたいなやつ。雨の日は空気中に漂う水分が過剰になって本心が溶け出すんだって。そこでシンクロ率が高いカップルっていつまでも仲良しらしいよ。ずっとずっと相思相愛でいられるんだって」
「それは都市伝説じゃないだろー」
「…ちぇ、バレた?」

 くすくす笑ってたら、神崎の手がそっとあたしの手を握った。

「なあ、辛嶋」
「ねえ、神崎」

 神崎の手を、ぎゅっと握り返す。

「雨、上がったらいいな」
「雨、上がったらいいね」

 虹を探して空を見上げる。
 まだまだ雨は降り止みそうにない。
 でも、なんだか、今日からは雨の日が好きになれそうな気がした。


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このストーリーに関するコメント

13/11/02 朔良

神崎誠(かんざきまこと) 辛嶋(からしま)
文字数ぎりぎりで読み仮名まで入れられませんでした。

13/11/03 そらの珊瑚

朔良さん 拝読しました。

うわーいいですね。この可愛さ、胸キュンでいつまでもこのカップルの会話をこっそり聴いていたいものです。
自然にほほがゆるんでしまって、はたからみたら、コワいかも(笑)
ハッピーアイスクリームじゃないですか!
とかく怖い都市伝説が多いけどこんな素敵な都市伝説があたしは大好きです♪

13/11/04 朔良

そらの珊瑚さん、こんばんは。
読んでいただいてありがとうございます。

可愛いやりとりと目指してみたのですが、どっちかというと漫才師の掛け合いになってしまったような…。
そらの珊瑚さんに可愛いと言っていただけてほっとしました^^
ありがとうございます。

13/11/04 草愛やし美

朔良さん、拝読しました。

いや〜、可愛いなあ、この二人。いいなあ、こういう若さって。忘れてしまった感覚というか、気持ちがとても新鮮に描かれていて、素敵でした。
これを読み終わった私は、都市伝説なんてなくても、きっと幸せになれる二人だよと、かってに確信しちゃいました。
楽しいお話で、ほんわかしました、ありがとうございました。

13/11/05 朔良

草藍さん、こんばんは!
読んでいただいてありがとうございます。

可愛いを目指してお笑い? のような話になってしまったので、草藍さんに可愛いと言っていただけてとてもうれしいです。
楽しんでいただけてよかったです。

13/11/14 リードマン

拝読しました。
シンギングインザレイン、ご存知でしょうか? 名曲ですよ〜。自慢ですが、自分達のシンクロ率は120%です! ・・・夫婦漫才ですかね?w 雨の結界の中で愛を育み、天架ける虹が二人の行く末を祝福するのですよ〜

13/11/18 朔良

リードマンさん、こんばんは^^
読んでいただいてありがとうございます。
雨に歌えば、名曲ですよね〜。好きです^^
シンクロ率120%はすごいですね〜! 見習いたいです。

14/04/27 朔良


凪沙薫さん^^
古い作品まで読んでいただき本当にありがとうございます。

仲のいい友達となんですが、以心伝心というか同じことを考えたりしてることがよくあるので、こんな話を思いつきました。
ささやかで、とても美しいなんて、お褒めの言葉をいただき、恥ずかしいくらいです。

岩井俊二監督、さり気ないシーンを美しく撮る監督ですよね。
古い作品ですがLove Letter とか好きでした。
そうか、最近は取られていないのですねー、なんかもったいないです。
コメント本当にありがとうございます^^

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