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YF-36さん

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将来の夢 仮面ライダー
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ありがとう

13/10/22 コンテスト(テーマ):第四十三回 時空モノガタリ文学賞【 スイーツ 】 コメント:5件 YF-36 閲覧数:1101

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「えぇ?欲しい物?そうだねぇ〜、久しぶりに甘い物でも食べたいね。」
「わかった!」
答えを聞くや否や、小さなインタビュアーは一目散に部屋を飛び出して行った。
またもや一人ぼっちになってしまった私は、窓の外へと目をやる。自分の目線だと、澄みきった青空が顔を覗かせるばかり。
季節は春。私にとっては可愛い孫娘が春風そのものだった。

__しかし誕生日なんて言われても、今年でもう70なんだけどねぇ。
そんな物がまだ私にもあったのかと、なんだか後ろ髪を引かれる気分さね。

孫のあかりもいつの間にか大きくなって、小学校に入学したって言ってたっけ?
本当に可愛いもんだよ。食べちゃいたいくらい。さすがは私の孫だね。

それに引き換え、彩香ったら今日はいつになったら顔を出すんだい。
一人娘だからって馬車馬の如く一生懸命育てたのに、私が歳を食えばお構いなしかい。全く、薄情でいやんなっちゃうよぉ。

あら。言ったそばからいらっしゃったわ。

「もう、あかりったらあんなにはしゃいで。迷惑じゃなかった?」
迷惑なもんかい。可愛い孫がこんなおいぼれにプレゼントをくれようってんだから、ありがくてしょうがないわよ。

「まぁ、私も一応用意したんだけどね。プレゼント。」
そう言って娘は、小さな包みを私へ差し出した。中身は、老舗の芋ようかん。私の大好物だ。

「お母さん、ここのお店の芋ようかん大好きだったもんね。私だってちゃんと覚えてるんですからね。」
珍しい事もあるもんだわ。あんたが私にプレゼントをよこすなんて。
なんか悪い物でも食べたのかい?

「私もあかりくらいの歳の頃は、やれ誕生日だ、やれ母の日だって言って張りきっていたけど、どんどん恥ずかしくなっちゃって、気付いたらお祝いなんて全然しなくなっちゃったな。」
それより私は、あんたがグレちまった事の方が悲しかったよぉ。
なんだっけ?あの、紅蓮隊だかなんだかよくわからないチームなんぞに入って。まぁ、そこで頭張っていたのは、さすが私の娘ってところだけどね。

「お母さんにも随分苦労かけて、未だに頭上がんないよ。」
当時はそんな事、微塵も思ってなかったくせによく言うよ。

「なんかね。あの頃は、どうしても恥ずかしかったんだよ。お母さんが一生懸命働いてくれてたのはわかってたけど、父親もいない上に母親が水商売で稼いでるんじゃ、周りからの視線はやっぱりきつかった。」
あんたを産んでからすぐ、あの人は死んじまったからね。女手一つで育てるには、どんな仕事でもやるしかなかったのよ。

…ちょっと、泣いてるのかいあんた?

「ごめんなさい。もっとお母さんに”ありがとう”って言えばよかった。お母さんだってずっとつらい状況で頑張ってくれていたのに、私はそれを知っていたくせに何も言わなかった。それどころか、お母さんの事を恥ずかしいとさえ思うようになっていたの!…本当に最低だね、私。」
あんまり自分を責めるんじゃないよ。あんたが裏ではちゃんと感謝してくれていた事くらい、私が気付かないわけないでしょ?そんなのお見通しですよ。だからそんな顔するのはおよし。もう、およしったら!

…ごめんね。つらい想い、いっぱいさせちゃったね。

「いざ自分が母親になって、どれだけお母さんに酷い仕打ちをしてきたのかわかった。あかりね、私が何かしてあげる度うれしそうに”ありがとう”って言ってくるの。多分、私の知らない間に旦那が仕込んだと思うんだけど、凄くうれしい反面、どこか自分への当てつけのような気がして。」
馬鹿言うじゃないの。あんな天使みたいなあかりちゃんが”ありがとう”って言ってくれるんだから、素直に受け取っとけばいいのよぉ。

「だからね。私もちゃんと返さなきゃって思わされた。お母さん…。」
なんだい、随分神妙な顔をして。まだ涙を拭ききれてないじゃないか。

「今まで本当に…ありがとうございました。」
嫌だよこの子ったら。急に畏まってどうしたんだい。今更そんな事言われても、こそばゆくて仕方無いよぉ。まぁでも…

「彩香、ありがとう。」
「え?」
「お母さぁ〜ん!!買ってきたよ!」
小さなインタビュアーのご帰還だ。手に握りしめているのが、今回の戦利品なのだろう。

どれ、早く見せておくれ。あら、可愛い御饅頭だねぇ。売店で買ってきてくれたのかい?

「はい、おばあちゃん!お誕生日おめでとう!!」
「ありがとう。あかりちゃんや、お母さんをよろしくね。」
「うん!わかった!」

窓の外の景色が、少しずつ色褪せてく。はて、爺さんのお迎えかね。
誕生日まで待ってくれるなんて中々気が利くじゃないか。
せっかく甘い物たくさん用意してくれたのに、なんだか申し訳ないねぇ。でも、今の気持ちは大好きな芋ようかんを食べてる時の気持ちにそっくりだわ。

とっても、幸せ__。


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このストーリーに関するコメント

13/10/23 リードマン

ご冥福をお祈りいたします。ありがとう、大変良い言葉ですね、自分の気持ちに素直になる事は、何よりも難しいモノです。開き直っていきましょうよ? ありがとう、愛してるぜ!

13/10/24 かめかめ

「さすがは私の孫だね。」
の、さすが、がいいですね^^根拠のない正しさ^^

13/10/24 YF-36

リードマン様
コメント誠にありがとうございます(^^)

気持ちを素直に言うのは本当に難しいですよね。
家族に対してなら尚更言いそびれちゃいます。
やっぱり、普段から感謝の言葉は口にした方がいいですね(^。^)

13/10/24 YF-36

かめかめ様
コメント誠にありがとうございます(^^)

根拠のない自信や正しさって、結構強みになったりするんですけど中々出てきません(笑)
でも、家族にさすが自分の○○だって言われると嬉しい気分になりますね(^−^)

13/10/27 リードマン

私的な話で申し訳無いのですが、私はいつも家族からいい加減にしろと言われてしまいますし、若干の畏怖さえ持たれてしまっています。もちろん、妻は例外ですがね。父がヒャド、母がメラです。そして私には一人、自慢の妹がおりますよ〜!!!w

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