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リードマンさん

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彼女と彼と二人のこれから2

13/10/21 コンテスト(テーマ):第十九回【 自由投稿スペース 】 コメント:1件 リードマン 閲覧数:1486

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   大地、保身がイヤ

「・・・朝、か」
 定刻通りに目を覚ますと、そのまま部屋を出る。
 と、彼女達4人の部屋の真ん前に、腕組み姿で立っている、老人がいた。
「おはよう」
「・・・驚いた、じゃなくてさぁ!」
 鋭過ぎる瞳を持つ中性的な少女、大神 大地おおがみ だいちは、怒り狂って目の前の祖父、雷蔵に蹴りを爆裂させる、筈だった。
「くっ!」
「まだまだじゃのう」
 彼女の音速を軽く超える蹴りを、いつのまにとりだしたのやら、大槌で受け止める雷蔵。 激しくスパークしたように見えたのは錯覚ではない、なぜなら、彼の持つソレは、文字通りのイカヅチだからだ。
 そしてそして、そんな老人に蹴りを放った    
彼女の姿が変わったように見えるのもまた、錯覚ではない。燃えるように赤い長髪と輝きを凝縮したような金色の瞳、無敵のプロポーションをした褐色の肌の女神は、間違いなく大地だ。
 この二人、というか、この家に暮らす五人はその全員がヒトではない。
 まず雷蔵は、ギリシアの最高神、“雷神”ゼウス。北欧ではトール、日本ではスサノオと呼ばれる、照日の弟である。大地に勝るとも劣らない鋭い瞳、荒々しく逆立った白髪を持つ、逞しい体をした老人である。
 そして大地は、同じくギリシアに名を残す“大地母神”ガイア。原初の混沌より生まれし最初のカタチ。全てのカタチあるものの王である。他の追随をゆるさない身体能力を持った彼女は、一度は破壊されてしまった世界の存続の為、何も知らされずにヒトとして生きてきたのだが、とある出来事をきっかけにして己の正体を知り、なお、前進する事を止めないタフな女である。現在、17年目にしてようやくやってきた春を爆進中。
「二階には上がって来るなって言ったでしょう!」
「そうじゃったかのう? 言われたような気が、はて? するような? いや、ないような?」
 叩きのめした、今度こそ。
 大地が自分を知ってからも、この二人が、祖父と孫である事は変わらない。正体からすれば、むしろ雷蔵こそが、彼女の孫に当たるとはいえ、彼女は、彼に育てて貰った暖かな記憶を、ただの一度だって、忘れた事はないからだ。
「いやそれにしても、手早くまとまったもんじゃのぉ、我が孫ながら手が早い」
 ムクリと起き上がった彼に言われ、ギクリとなる大地。
「・・・」
「よきかなよきかな、ワシも昔を思い出す」
 したり顔で頷く祖父に、孫娘は、いっそ開き直る事にした。
「・・・別に、決めたなら、進むだけでしょ。保身なんて真っ平よ。ライバル達も手強いしね。止まってなんて、いられないし、いたくないもの」
 ドンと胸を張る女神の姿に、かつて天上一の遊び人と言われた男は大笑した。
「嬉しくもあり、寂しくもあり、かの。なんにせよ、今日の酒は美味そうじゃな」
「珍しく早起きしたと思ったら、早速お酒?ま、いいか、用意するよ。ツマミは? 何がいい?」
 雷蔵は、ニヤリと笑って即答する。
「赤飯じゃ」
 勿論、大地に殴り倒されたのだが。

 なんて暖かで、幸福な家族。                        

その理由

「命ってのは、大事に取っておくもんだ」

 それがじいさんの口癖だった。
 俺がまだアイツに出会う前の話、病室から出る事が出来なくなっていた、じいさんのもとへと通っていた、時のこと。
「いい加減耳タコだぜ、じいさん。ようするに、使いどころを見極めろってんだろ?」
 ベッドの隣に腰掛け、リンゴを剥いてやりながら答える。
「・・・相変わらず口汚ねぇオンナだな・・・誰に似たんだ? 全くよ」
「確実にアンタだよ、じいさん」
 出来上がった、リンゴをホレとくれてやる。決して良い出来栄えではなかったが、じいさんよりはマシな筈だ。
「・・・マズイリンゴだぜ、しかもヒデェサマだ。俺の記憶違いじゃなけりゃあよ、確かリンゴってのは丸くなかったか?」
「新種だよ。それに味は、俺のせいじゃねぇ」
 近所のスーパーで買ってきたものだ。当然、元の形は丸かった。
「・・・テメェを引き取って、10年になる、か・・・俺も、歳をとる筈だぜ・・・」  
 8つの時に、俺の両親は事故で死んでしまって、それ以来、二人っきりの家族だった。そして、また、
「らしくもなく感傷的じゃねぇか。言うとおり、トシだな、じいさん」
 医者からは長くないと言われている。カルテを見る限り、生きているのが不思議なくらいの状態らしい。いつ時が来ても、おかしくないそうだ。それでも、このジジイは、しぶとく生きていた。いや、生きるしかなかった。
「よのなかに、ひとのくるこそ、うるさけれ、とはいふものの、おまえではなし」
「一人よりも二人、三人よりも二人きりってか。確かにな、支えあうなら、多人数は無理だよな。二人きりなら、全力で向き合えるしな」
「・・・解ってんじゃねぇか、ガキ」
「アンタに比べればな、じいさん」
 命を燃やす、それが、このじいさんの業だった。だから、このジジイは簡単にはくたばれない。いつも憎たらしく笑っちゃいるが、体はもう死に体だ。そうとう辛い筈、なのに、
「なぁ、那波。命は、輝くモノなんだよ。でっかくな、輝くんだ」
「・・・あぁ、それが、俺達の証明だ」
「テメェなら、きっと俺以上に輝けるだろう。けどな、命ってのは、大事にとっておくもんだからよ、溜めて溜めて溜めまくって、いざって時には」

「最高にカッコ良く、決めてやれ」

 二人、なんとなくわかってた。これが別れの時なんだって、不思議と、涙は出なかった。
バカみたいに笑ってたんだ、最後まで。
「じゃあな、じいさん・・・嫌いじゃなかったぜ?」
「照れくせぇ、笑わせるぜ」
「愛してた」
「大サービスだな、けどなんで過去形なんだよ、バカ野郎」
「野郎じゃねぇ、これでもオンナだ、俺は」
「カッケェヤツだぜ、俺の孫」
「ア・イ・シ・テ・ル! 俺の、クソジジイ」
 振り返らずに、病室を後にした。背中を押す、誰かさんの、視線があった。
 この時、病院の門で、アイツとすれ違った筈なんだが、俺の景色は、何故だか歪んでしまっていて、何も見えてやしなかった。

 その日の晩、じいさんは死んだ。

 空も泣いていた、じいさんの葬式の日。じいさんを慕っていた人達の多さに、まず驚いた。沢山の人達が、涙を流してくれていた。自分はじいさんの愛人だったのだ、なんて涙交じりの笑顔で言う人達も何人かいた。ヤリ手のクソジジイのケツ持ちとして、ばあさんって呼んでやったら、思いっきり抱きしめられたんだっけ。
 俺は、泣かなかった。誰かの前で、泣く訳にはいかなかったし、抱きしめられた時には正直決壊しそうだったんだが、耐えた。
「貴方は間違いなく、あの人達の孫よ」
 じいさんの選んだ人は、誰もが認める強い女性だったらしい。俺が物心つく前に、俺を庇って、車に轢かれた。
 両親の事故も、原因は俺だった。夜中、俺が高熱を出した。救急車が全て出払っていると知った両親は、直ぐに車で病院へと向ってくれたのだ。励ます二人の、あの声は、とても力強かったっけ。負けるかって思った、その矢先だった。大型のトラックが、信号を無視して突っ込んできたらしい。運転手はロクに睡眠もとっておらず、その上酒に酔っていた。両親の決断は速かった。二人掛かりで、俺を包んだ。二人は即死した。俺は、キズ一つ負わなかった。俺は、生かされた。
 ばあさんも、両親も、笑って死んだんだって、じいさんは言ってた。そのじいさんも、最後は笑ってた。
 自分が泣くのは嘘だと思った。歯を食いしばって、背筋伸ばして、胸張って、カッコつけなきゃって、震えてた。
 そんな時だ。アイツは、やってきた。
「ごめん」
 この時ばかりは周囲に溶け込んでいたその服装。帳簿に名を書き、線香を上げて、何事か呟いた。
 葬式が終わって、玄関の前に、アイツはまだ立っていた。
「ごめん」
 何故だろう。全部、解った。きっと、涙を流しながら、それでも真っ直ぐに俺の目を見つめる、俺と同じ緑の瞳が、あまりに澄んでいたからだと思う。
 その胸に縋って、ワンワン泣いた。止まらなかった、声も、涙も。
 これが、アイツとの出会い。
 俺が、自分の理由を見つけた日。
 玄関の前で、涙でずぶ濡れになっていた、子犬のような男の子を拾った日。

 まぁ、それが良い拾い物だったなと、思うまでにも、大して時間は要らなかった訳で。
     
   いつかの約束
 
 ある英雄の話をしよう。
 眩しいまでの輝きに導かれ、世界を救った男がいた。
 刹那の栄光。
 瞬間の転落。
 彼には覚悟があった。
 自らの信念に従い、その手を血で汚し、その背に罪を背負い続けていた。
 いつかくる終わりにも、自らの手で、幕を引くとも決めていた。
 友の手を煩わせるつもりもなかった。
 彼は、優しすぎるから。
 そう、その日、その時がくるまでは。

「・・・完全に、囲まれちまったな」
「・・・あぁ」
 気付けたのは偶然だった。
 タイミングは最悪だった。
 そして今、戦場の只中に、二人はいた。
 まだ配属されたばかりとはいえ、実力で上の連中を黙らせ、刃のパートナーとなった那波。お互いが、最高の相棒であるという確信が、二人にはあった。彼の存在が、彼女の輝きを増し、彼女の存在が、彼の炎を熱くした。
 けれど、この状況は拙かった。
 タッグを組んでからは初めてとなる、海外での特別任務。以前から懸念されていたとある組織の偵察、それだけの筈だった。
 “国”の連中の想定が甘過ぎた。
 開戦は、既に秒読みだったのだ。
 大きくなり過ぎていた組織を前に、この時、“イレギュラー”と呼ばれる者達の襲来により、“非人”も“守人”もその応戦の為、手が追いつかなかったのである。
 このまま開戦を許せば、天秤が傾きかねない事態だった。
 戦争を起こさんとする巨大組織、それを只の二人で倒さなければならない現実。
 けれど、二人に迷いはなかった。
 巧妙に分散された敵組織の中枢を的確に潰し続け、ついには盟主の位置にまで肉迫したのである。しかし、
「さすがに、今度ばかりはかなり拙いぜ?」
「・・・あぁ」
 二人の疲労は、とうに限界を越えていた。
 指揮系統こそなんとか破壊したものの、未だ敵の大軍勢は粒ほども減る気配がない。対して、敵中にて完全に孤立してしまっている二人。考えるまでもなく、絶望的である。
「・・・なぁ、刃」
「・・・ダメだ」
 それまで返事をするばかりだった彼が、彼女の言葉を遮った。
「ったくさ、無駄に聡いよな、お前。けどさ、分かってるんだろ?」
「・・・それでも、ダメだ」
 頑なに拒む彼に苦笑して、彼女は、ふと空を見上げた。こんな時でも、空は青い。血と煙の匂いしかしないここにあって、空だけが清浄だった。
「・・・使い時だよ。やっぱりさ」
「絶対にダメだ!!」
 とうとう彼は、感情を剥き出しにしてしまう。それは、彼の理想からはあまりにも程遠い。今の彼は戦士ではなく、駄々を捏ねる子供だった。彼を変えてしまった、誰かさんが、笑う。
「男の癖して可愛いヤツだよ、お前は。ホント、子犬みたいだ」
「那波! 俺の話を!」
 彼の唇が、塞がれた。他ならぬ、彼女のそれで。
「お前は理想を捨てられないさ、だって、お前こそが、奇跡みたいに理想そのものなんだから」
「・・・」
 声を殺し、彼は、涙を流していた。死者に変わって泣くだなんて、大言を吐いてはいたが、単に泣き虫なだけだろうとも思う。
・・・思えば、俺が涙を見せたのは、一度きりだったよな・・・
 彼と出会った、あの日、あの時だけだ。
・・・こんなに脆い癖して、だからこそ、コイツは強過ぎる・・・皮肉だよな
「このまま持久戦を続ければ、本当に二人とも助からない。チャンスは、今しかない」
「・・・」
「手足はもう潰してあるんだ。後は、頭を潰すだけでいい。油断している今が絶好の機会なんだ」
「・・・」
 二人、とうに解りきっていた事を淡々と続ける彼女。
「俺が、道を拓いてやる。後は、お前が決めるんだよ、刃」
「・・・那波、俺は・・・ボクは・・・」
 スッと立ち上がった彼女、彼は、動けない。
「約束しろ刃。俺は、お前の炎が好きなんだよ。俺に見せてくれよ、お前の想いの、その熱さを」
「・・・」
 ヨロヨロと立ち上がる彼。
 ようやく上げた、その顔に、もう迷いは無かった。頬に残る濡れ跡が、いかにも彼らしいと苦笑する。
「さよならは言わないぜ、また逢えるって信じてるからな。そうだな、今度は、花にでもなるか」
「そうか、なら俺は光になって、お前を照らすよ」 
「・・・バッカヤロ、似合わねぇ、ぐらい言いやがれ、照れるじゃねぇか」
「・・・きっと、キレイな花になるさ」
 もう、言葉は無かった。
 彼の隣、生まれたのは巨大な光。
 既に輪郭はなく、ただ輝くばかりの彼女が、ふと、頷いたような気がした。
 彼の全身が、紅蓮の炎に包まれる。
 後はただ、駆け抜けるのみ。
 巨大な閃光が戦場を貫き、それを追うように駆け抜けた紅蓮の炎が、途上の全てを焼き尽くした。
 余裕の笑みを浮かべていた盟主は、閃光によって全ての結界を失い、驚愕する間もなく、その魂すらも焼き尽くされた。

「・・・」
 未だ、敵の包囲は続いている。が、全ての指揮を失った直後の軍団から抜け出す事など、彼には容易い。けれど、彼は動かない。
・・・那波
 彼は、最後の刹那、彼女を想った。
 
 話は、これで終わる。
 その英雄は、誕生とともに死んだのだ。
 二人は、最後の最後で間違えた。
 彼女の喪失に、彼が絶えられる筈がなかったのだ。

「シャハハハッ!! シャーハァアア!!」  

 その日、その時、その場に在った全ての命は、狩りつくされた。黒の惨劇の、始まりである。
  
   決戦前夜

「オロチの奴め! ワシのミョルニルが喰らいたりんようじゃな!」
「・・・雷じい、当日は手出し厳禁だ。俺と一緒に警護だよ」
 夕飯時、猛る雷蔵を、光が嗜める。
 全員揃った所で、大会の事を切り出した、途端にこれだ。
 頭が痛い。
 旧交を温めたいのは判るが、時と場所を選んでもらわなければ困る。
「何を言うか! ワシ、をっ!!」
 大地の鉄拳が直撃、雷蔵を黙らせる。
「ダメったらダメ! もし言い付けを破ったりしたら・・・」
「むむむ」
 せっかくの楽しみを奪われ、さすがの雷蔵も言葉を詰らせる。
 光は、付き人二人に振り返る。
「リリス、イヴ、いけるか?」
「当然!」
「はい、ですが・・・」
 即答するリリス、
 が、イヴには、何か思う所があるらしい。
「私達も・・・参加してはならないのですか?」
 ガクリと突っ伏す光。平穏を祈らずにはいられない。
「え!? どういう事よ!? アダム!」
「・・・」
 リリスに至っては、夫の問いを誤解している始末だ。
「・・・当日は、敵性勢力からの襲撃の可能性が大、というか確実にある。遊んでる場合じゃないの!」
「襲撃?」
 訊ねたのは大地だ。リリスは膨れっ面でそっぽを向いている。
「お前と照日、連中からすれば絶好の標的がいる場所に、堂々と集まれるんだぜ? 今回の大会に参加資格なんてものは無いし、だからといって中止する事も出来ない。なにせ、天皇陛下のワガママだからな」
「そんなに危険な事なの?」
「戦争をしましょう! って招待状をバラまくようなもんなんだよ。相手の戦力集中をみすみす許すっていうんだ。戦術的にみればリスクがデカ過ぎる。それにな、ノコノコ集まってくる連中はまだいい。問題は、その混乱に乗じてって、機会を窺っている厄介な連中まで出てくるかもしれないって事さ」
「アンタ達がてこずる程の?」
 首を傾げる大地。
「俺達三人、特に俺とリリスには、色々と制限があるからな。刃の時みたいに、ホントにホントの世界の危機にでもならない限り、力は殆ど使えないんだ。だから、どうしても後手に廻っちゃうんだよなぁ・・・」 
「・・・ん〜、今回はそこまでの危機では無いって?」
「展開によってはそうなってしまうかもしれないけれど、そうならないかもしれない。こういう時は動けないんだ。俺達、“外側”の連中は、基本的に各“世界”に干渉しちゃあ、いけないんだよ」
「色々と面倒なんだね?」 
「まぁな、けど、大切な事だから」
「“イレギュラー”、来るでしょうか?」
 今度の問いはイヴからのものだ。
「微妙な所だけどな。まぁ来たとしても前回のような轍は踏まないさ。俺は、今度こそ、躊躇わずに剣を振るぜ?」
「当然」
 何時の間にやら、光の隣で胸を張るリリス。
 並び立つ、二人の“決定者”達。
 これ以上に頼もしい二人もいまい。
「こやつはリスクばかりを言うが、揉め事の種を一掃するチャンスでもあるからの。姉上もまるで考えなしという訳ではない。何にせよ、折角の機会なんじゃ、お前は大会で存分に暴れる事じゃな、大地」
孫の背中を、ポンと叩いたのは雷蔵である。
「当然!」
 もとより、恒に前進あるのみの大地は、力強く頷いたのだった。
   
「どぉおおおりゃああああ!!」
「・・・」
 渾身の突きを、ヒラリと避わされた。
「だぁああありゃああああ!!」
「・・・」
 会心の蹴りも、ヒラリと避わされた。
「げはっ! ぐ! ぐ! ぐへっ!」
「・・・」
 背中に裏拳をくらい、タタラを踏んでいるところに、容赦の無い炎弾の追い打ち。
「・・・なぁ、那波」
「ええぃダマレ!」
 捨て身の一撃! ヒラリ、
 手痛い反撃!
 大の字になって倒れる那波。
 呆れ顔で、介抱しようとする刃。
「隙あり!」
「っ!! んむ!」
 ひっ捕まえて口付けしてやると、案の定、完全に硬直してしまう刃。
「おぉおおおらぁあああ!!」
 回転とともに全身の力で繰り出した拳を顔面にモロに受け、吹き飛びしばらく転がって停止、完全にKOされてしまった刃。
 舞い散る紅蓮の火の粉が、無念そうに揺れていた。
「ふっ! 勝利!!」
 得意げにガッツポーズ!
 この二人にとっては有り触れた日常がこれである。余暇の殆どは敷地内の道場でじゃれあっている。たまには外に繰り出す事もある。二人で部屋に閉じこもって本を読む事もあれば、恋人同士特有のアレコレも勿論ある。どの場合も主導権を握っているのが誰なのかは、言うまでもない。家事は従順な子犬の仕事。主人はといえば、せっせと勤しむ子犬の邪魔をしたり、料理の味に文句をつけたり、たまには可愛がってあげたりと大忙しなのである。
このままでは、再び黒の惨劇が起こりかねない、と心配されるかもしれないが、そんなことはない。この二人は、とても幸せである。それは例えば、卑怯な不意打ちでKOされた子犬が、不満そうにしながらも、やっぱり笑顔で起き上がっているあたりにも、良く現れている。現在単身赴任中の、某大魔王様が見た日には、嫉妬で暴れだしかねない、無敵の空間である。
「・・・那波」
「愛してるぜ! 刃!」
 相手が何か不満を漏らす前の、お決まりの先制攻撃である。これで丸め込まれてしまうあたり、刃の人となりが知れよう。
「ぐっ! むぅ・・・」
「最強を決める闘いかぁ、ワクワクするぜ!」 猛る彼女を、微笑んで見守る彼。
 二人が望み、手にする時間。

「今日という今日は言わせて貰いますけどね!アネさんはもう少し気配りというものを覚えるべきです!」
「つーん」
「つーん、じゃありません! そういう細かい事が苦手なのはよーく分かってますけどね!それだって何回オレを殺しかければ気が済むんですか!」
「ぷーん」
「ぷーん、でもありません! アネさん、今夜は寝かしませんよ!」
「こんな幼子を相手に!? ソナタ、鬼畜じゃな! ワラワのお肌が荒れたらどうしてくれる!」
「なんなら今すぐツヤツヤにしてあげましょうか!? 大体そんなツルツルスベスベで何言ってんですか! ていうか真面目に聴きなさい!」
「ツルペタじゃと!? おのれ! 人が気にしている事を!」
「わっ! ちょっとアネさん! ここじゃマズイですってば!!」
                  
 光と闇は、今夜も、戯れる。    


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このストーリーに関するコメント

13/10/27 リードマン

この物語は、PCゲームで言う所のファンディスクのような扱いとなっておりますので、更にキャラクターが増えてしまっている訳です!w

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