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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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スィーツ星人

13/10/21 コンテスト(テーマ):第四十三回 時空モノガタリ文学賞【 スイーツ 】 コメント:6件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1492

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 他の惑星からの訪問者を迎えるとき、なにが困るかというとそれはやはり、食べるものだった。まあ我々でさえ、カエルや昆虫を好んで食べる国へでかけるときは、それなりの覚悟を必要とする。しかし親善目的で飛来する大使に、そんな覚悟を期待するわけにはいかない。今回のスィーツ星人たちにはその気遣いは無用だった。というのもかれらは、自分たちの食糧をわざわざ宇宙船に積んでやってきたのだから。
 歓迎パーティの席では、カンロをたち五人のスィーツ星人のテーブルに、かれら持参の料理が山ともられた。カンロたちのテーブルに同席した地球の代表者たちが隠しきれない好奇の目でかれらの皿にもられた料理をながめたのはいうまでもなかった。みたところそれは、ふつうのスープや肉、それに野菜のボイルのようだった。
「これらの食材なら、われわれの星にいくらでもありましたのに………」
 代表の一人の山田がいうと、カンロはまだ手をつけてない自分の皿をさしだし、「よかったらひと口、いかがです」 
 山田はさっそくパンと思しき固形物を手にとりひと噛みした。たちまち口全体にひろがった甘味たるや、歯の全部が一瞬にして虫歯になって腐ってしまうのではと思えるほどだった。
「これを、どうぞ」
 カンロが、コップの水をさしだした。ありがたいと山田はコップの水をあおった。とたんにそのあまりの甘さに失礼をも顧みず吐き出してしまった。
 スィーツ星人の食べるすべてのものが、水さえもが、甘いとわかるのにそれほど時間はかからなかった。
 宇宙船パイロットコシヤのところに、政府の者が訪ねてきたのはそれから三か月後のことだった。
「え、おれをスィーツ星への親善大使にだって! それはまたどうして?」
「それはきみが有名な甘党だからだ」
 宇宙を航行している間、たえず甘い物を食べ続けているというコシヤの甘い物好きはウェブでも紹介されるほど有名だった。甘い物を食べてないと、頭がぼうっとして、全身から力が抜けてしまう。そのことをしった彼の勤務先の航空会社では近く本人に解雇通知をつきつける予定だということをきかされたコシヤが、親善大使の話を渡りに船とばかりとびついたのはいうまでもなかった。
「スィーツ星人が全員甘党なのはきみも報道などでしっているだろう。スィーツ星への飛行のためには、余分な重量は極力へらす必要がある。あちらで食べるための食糧を積み込む余地は宇宙船にはない。きみが大使に選ばれた理由もそこにある。スィーツ星の食べ物も、きみならたえられるという有識者の見解なのだ」
 コシヤがスィーツ星の歓迎パーティの席に来賓としてついたのは、それからまた三か月後のことだった。なるほど、次々に出される料理は聞きしに勝る甘さだった。甘い物には目のない彼だからこそもちこたえられたが、さすがに、度を越した甘い物尽くめの食べ物にはときに閉口することもあった。彼はこっそりととりだした包みから、白い粉を口に流しこんだ。スィーツ星のカンロが、興味を示して、「それはなんですか?」
「塩といって、辛い物です。はは、とてもあなた方の口にはあいませんよ」
 しかしカンロは、好奇心が抑えられない様子で、
「よかったら、いただけませんか」
 コシヤは塩の包みを彼にさしだした。かれらが塩をなめたらどんな顔をするか、にわかに関心がわいてきた。
 カンロは塩を口にしたとたん、「おいしい!」と、生まれてはじめて味わう辛味に歓喜した。他の連中にも塩をなめさせたところ、全員が全員、そのうまさを絶賛した。
 塩をこの星に輸出しようという話がその夜、コシヤたち地球人の間でもちあがった。塩なら地球にいくらでもある。その塩をありがたがるスィーツ星になら高く売れるだろう。傾いた地球の経済を立て直すいい機会だ。
 スィーツ星人たちもその話にとびついた。話はきまった。大量の塩がスィーツ星に送られることになった。これまで甘い物しかしらなかった連中にとって塩はまさに奇跡の調味料としてもてはやされ、毎日膨大な量が消費されるようになり、地球から送っても送っても足りないという状態が続いた。
 だれの予測よりも早く地球から塩が不足しはじめた。塩をとりすぎて海水が、だんだんと真水にちかづいてくるという現象があらわれ、ついに食卓から塩は姿を消し、食べ物はみな甘い味付けに変わっていった。
 スィーツ星から毎日のように、やいのやいのと塩の催促がくるようになった。
 塩の輸出部門の主任なっていたコシヤは、つい部下に愚痴をもらした。
「スィーツ星人も、塩を食べるようになってからは、人間が辛口になってきたようだ。早く送れと、ずいぶん居丈高だ」
「そのかわり我々のほうは、みな甘党になって、人間がすっかり甘くなりましたね」
「同感、同感」
 主任と部下は、顔をみあわせると、腑抜けたような笑みをもらした。


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このストーリーに関するコメント

13/10/21 かめかめ

スイーツ星人の高血圧が心配です

13/10/22 W・アーム・スープレックス

そのかわり、血糖値のほうは緩和されるのでは(医学的根拠はありませんが)、かめかめさん。

13/10/23 rug-to.

ううむ面白い。

次はコショウとか唐辛子とかいかがでしょう。

13/10/23 W・アーム・スープレックス

rug-toさん、コメントありがとうございます。

なるほど、その手がありましたね。今後の参考にさせていただきます。

13/11/02 芝原駒

拝読しました。
着想がとても面白かったです! なるほど確かにこんな宇宙外交もあるでしょう。偏った文化が、これまでにない文化を手にして度を越してしまう、というのはショートショートの王道でもありますが、テーマを活かした話立てだと思いました。
惜しむらしくはコシヤ氏の紹介がやや説明くさく、話の展開がやや失速したように感じたところでしょうか。しかしながら、それに目をつぶってもよくできた話運びだと思います。
拙いコメントではありますが、御容赦ください。

13/11/02 W・アーム・スープレックス

芝原駒さん、コメントありがとうございます。
 
ここで辛口のコメントと書いたら、話ができすぎですよね。それは冗談です。ちゃんと甘いものもおりまぜて、今後に役立つ適切なご意見だと思いました。ショートショートの王道―――あまりそういうことは考えずに書いていますが、これからもやはりあまり考えずに書くことになると思いますが、
しらずに王道を彷徨うこともたまにはあるのかなと、ご指摘をうけて、考えたりしました。

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