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murakamiさん

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告白
13/10/11 コンテスト(テーマ):第四十二回 時空モノガタリ文学賞【 都市伝説 】 コメント:22件 murakami 閲覧数:3039
世界、それはあまりに不条理に満ちている。
段落のつけ方、改行の仕方、鍛えられている印象の村上さん。穏やかな筆致が心地よい。
都市伝説の代表的存在に取り組んで成功したのは、人間の宿業ともいえる心の働きを上手く描けているからだけでなく、この筆致が負うところが大きい。
時系列で淡々と無駄を排しモノガタリは進む。
恨みの感情がどす黒く蠢きはじめるきっかけとなった「気持ちわりぃ」に対して「口裂け女」を見た男の子のセリフが平仮名の「ばけもの」であることが、男の子がまさに子供であることを強調し、最後の「私」の理解と謝罪を読者に自然に受け入れさせる働きをしている。
自分のせいにばかりしていては誰ひとり生き続けられない、自分のせいにばかりするにはあまりに世は不条理に満ちている。
時空モノガタリS
彼女の心の流れが本当にさらりと自然な流れで、描かれていて、気持ち一つ一つに無理なく共感でき、「口さけ女」というおどろおどろしいイメージを淡々と語っているため、かえって感情移入しやすかったと思います。
具体的には「気持ちわりぃ」という子供の残酷な言葉の後、彼女の恨みが子供に向かうまでの流れが無理なく、また過不足なく描かれ、恨みという感情にさえも共感してしまいます。
「子供というのは時として本当に残酷なことを平気で言うものだ」という真実味のある言葉も、作品全体にリアリティをもたらしていたと思います。「都市伝説」というテーマに沿った内容であり、なおかつ読み応えのある作品に仕上がっていたのもポイントが高かった点でした。
時空モノガタリK



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このストーリーに関するコメント
13/10/11 草愛やし美
村上さん、拝読しました。
えっ!? 何という告白でしょう。都市伝説を全く逆手に取るような発想、凄いと唸りました。なるほど、こういう経緯であの伝説は生まれたのですか。
人を逆恨みすることでしか、生き延びるすべ……、でも、生きていてよかったですね。被害者の少年には、気の毒だったかもですが。子供は、ほんと時々ドギマギさせるような残酷なことを平気で口走ります。素直ゆえのことだとは到底思えない経験が、私にもありますので、凄く共感できるお話でした。
13/10/11 murakami
草藍さま
ありがとうございます。
都市伝説というテーマをみたときは、難しそうだからパスしようかと思ったのですが、ふとこの伝説にモデルになった人がいたのではないかと思って、書いてみました。
共感していただけてうれしかったです。
13/10/11 泡沫恋歌
村上様、拝読しました。
この都市伝説はかなり有名で広がりましたね。
どこそこで見たとか目撃者もいて、結構、本気で怖がっていた人も居ました。
なるほど、案外、都市伝説のソースはそんなところから来てるのかも知れないと
妙に納得させられました。
最後まで、面白く読ませて頂きました。
13/10/11 yoshiki
拝読いたしました。
いや、しょっぱなから読者を引き込む文章力に敬服いたしました。
展開の仕方もお上手で、まるで自身のことを語るような説得力がありますよ。
とてもよかったです(^v^)
13/10/11 murakami
泡沫恋歌さま
コメントありがとうございます。ちょっと邪道かなとも思ったのですが、楽しんでいただけたようでよかったです。
泡沫さんもたくさん作品を書かれていらっしゃるのですね。まだ、全部ではないのですが、拝見しました。「青いサーカス」がとても良かったです。
13/10/11 murakami
yoshikiさま
ありがとうございます。
男性の目から見てもおかしくない話のようで安心しました。
一人称で書くとついつい自分の情念みたいなものをこめてしまいがちなので、行き過ぎないように注意しています。
13/10/12 そらの珊瑚
村上さん、拝読しました。
私も昔、塾からの帰り道などひとり夜道を帰るとき、この都市伝説を思い出し心底びくついたことを思い出しました。
「ざまあみろ」という黒い感情は人の心のどこかにいつだって存在するものかもしれません。
とてもリアリティを感じさせる語り口が良かったです。
13/10/12 murakami
そらの珊瑚様
ありがごうございます。
都市伝説って、いろいろあるようですが、これは、長く残ってますよね。
少し幽霊的な女性の悲しさを感じるからでしょうか…。
赤鬼の伝説なんかと通じるところがあるのかもしれません。
13/10/12 光石七
拝読しました。
口裂け女のモデルですね。
本当にこのような人が話の発端だったのでは、と思いました。
悲しさがにじんでいて、味のあるお話だと思います。
13/10/12 murakami
光石七さま
ありがとうございます。
ふと思いついて、30分ほどで書いてしまったのですが、自分で書いたのではなく、誰かに書かされたような感じがして、ちょっと怖かったです…。
13/10/12 遥原永司
読ませて頂きました。
そうだなー・・・そういうことなのかもなーという読後感でした。しみじみしました何だか。
でも、これはもちろん創作ではありますが、しかしもし真相がこれと全く同じだったとしても、すでに発端となったご本人の女性とは別に、本当の口裂け女というものが誕生してしまっているのではないだろうか・・・?とも思いました。人の噂やら想像力やらといったなんかそんな言霊的なもんから、そうした存在を本当に作り生み出してしまっているのではないか・・・と。存在するから知った、ではなく、知ったから存在するようになった、という事も世の中にはあるんじゃないだろうか・・・とかそんな妄想までめぐらせてしまいました。
それだけこの話には、これを真相として考えたくなるようなリアリティがあるんだと思います。
文章的に引っかかった個所を一点だけ挙げさせてもらいますと、
>「ばけもの」と悲鳴をあげると腕をふりほどいて、転がるように逃げていったのです。
ここが個人的にですが、唯一コミカルに感じてしまいそぐわない印象でした。
現実で本当に恐ろしいものに遭遇したときには、言葉ならない悲鳴か、それか声すら出せない状態になると思うんです。
もちろん「ばけもの」って言いながら逃げる子供なんて絶対にいない、とも言い切れませんが、リアルさをより通すとするなら別の表現もあったんじゃないかなという感じがしました。
でも当然、今のままの方がわかりやすくていいと思う人もいるでしょうから、これは単なる個人の好みの問題でしょうね。
13/10/13 murakami
くくる様
感想ありがとうございます。
そして、ご指摘の件、おっしゃる通りです。読み返してみると、確かに違和感があります。本当に恐怖を感じたら、悲鳴は出ても言葉は出ないものですよね。
書き直したいところですが、できないのが残念です…。
ていねいにお読みいただきまして、感謝いたします。今後ともよろしくお願いいたします。
13/10/13 murakami
くくる様
感想ありがとうございます。
そして、ご指摘の件、おっしゃる通りです。読み返してみると、確かに違和感があります。本当に恐怖を感じたら、悲鳴は出ても言葉は出ないものですよね。
書き直したいところですが、できないのが残念です…。
ていねいにお読みいただきまして、感謝いたします。今後ともよろしくお願いいたします。
13/10/13 棚丘えりん
読ませて頂きました。
王道中の王道とも言えるこの都市伝説が、まさかこんな視点から描かれるとは思っていなかったです。思わず『ほぅ…』と呟いてしまいました。(笑)
女性が、口裂け女として行動に移すところの描写が、特に気に入りました。人間って怖い…。
13/10/13 murakami
棚丘様
コメントありがとうございます。
人の感情って複雑ですよね。その時々に変わりますし。
その辺を書いていけたら、と思っています。
13/10/14 murakami
メイ王星様
おほめいただきありがとうございます。
作品を楽しんでいただけると何よりです。
13/10/15 猫兵器
村上様
拝読致しました。
とても面白いアプローチだと思います。
最強クラスの知名度を持つ都市伝説の「主」が当たり前に年をとり、のんびりした老後の生活を楽しみにしている。しかも、当時怖がらせてしまったことを反省しているなんて。
温度差というか、ギャップというか、とても見事でした。
こんな発想もあるのですね。
憎悪の果てに「口裂け女」に至る彼女の心境も、描写が丁寧で共感できるものでした。
13/10/16 murakami
猫兵器様
コメントありがとうございます。
あまり発想力は豊かなほうでないので、おほめいただき嬉しいです。
13/10/27 murakami
凪沙薫さま
おほめいただき、ありがとうございます!
そんなに言っていただけるとちょっぴり照れてしまいます…。
13/11/04 小田イヲリ
怖かったです。
でも、人って感情に囚われると何をしでかすか分かりませんし、人間の本能なのか、恐怖の伝聞は伝わるのが早いというか……。
口さけ女の成り立ちがこうだったら、と思うと、そこに恐怖を感じます。
面白かったです。
13/11/04 murakami
小田さま
コメントありがとうございます。
誰でも感情にとらわれてしまうことってありますよね。
人間が人間であるゆえんでもあるのですが。
1976年のことです。私は高校を出て、就職したばかりでした。ある日、同じ職場の3歳年上の男性から結婚前提の交際を申し込まれたのです。まじめで優しそうな方だったので了承しました。交際するうちに彼の誠実さに惹かれ、週末のデートが何よりの楽しみになりました。
ところが3ヶ月程たったある日、二人でドライブ中に事故にあってしまったのです。助手席に座っていた私は、追突された拍子にダッシュボードに顔面を強打してしまいました。気がつくと唇の左横がぱっくりと切れているようでした。自分の手にべったりついた鮮血と彼の驚愕した表情は今でも忘れることができません。
当時の縫合技術はあまりよいものではなく、縫い目はきれいなものではありませんでした。
事故はもらい事故でしたから、彼にはなんの落ち度もありません。けれど、まじめな人だったので、責任をひどく感じてしまったようでした。二人の仲はぎくしゃくし、結局、別れることになってしまったのです。
私は会社にいづらくなり、退職しました。
そんなある日の夕方、道を歩いていると小学生の男の子とばったり出会くわしてしまったのです。その子は私の顔の傷を見るなり、「気持ちわりぃ」と叫びました。私がびっくりしていると男の子は顔を歪めて嗤い、それから、走り去っていきました。
あまりのショックで、しばらく呆然としました。けれど、すぐに心の底から煮えたぎるような怒りがわいてきたのでした。
――彼と、結婚したかった。あんなに毎日が薔薇色に輝いていたというのに……。それがあの事故のせいで、こんなことになってしまった。私が悪いのでしょうか? 彼が悪いのでしょうか? 私たちが何かいけないことをしたのでしょうか? これが何かの罰だというなら、神様、教えてください。
違う、……悪いのはあの子だ。あの子は、必死におさえようとしていた自分の気持ちの膜をぶち破ってしまったのだから。絶対に許すことはできない――。私の心の中に、憎悪と恨みの感情がどす黒く蠢きはじめました。
あの子をどんな風にこらしめてやろうか。私は鏡に映る自分の顔をじっと見つめながら考えました。一生忘れられないような心の傷を残してやりたい。私の痛みを思いしらせてやりたい……。そうしているうちにふと、真っ赤な口紅で自分の唇をなぞり、そのまま傷を隠すように大きな口を描いてみたのです。私はもともと黒い長い髪が自慢でした。彼も綺麗だとほめてくれた髪です。それが、大きな唇が真ん中にあると、黒い髪はなんだかとても恐ろしく、自分が自分でないように見えました。横へ横へと塗っていくうちに私の口はまるで耳まで裂けているかのように見えました。これなら、あの子もきっと驚くに違いない、私はそう思いました。
翌日、私はマスクで顔を隠して、あの子の通う小学校の通学路で待ち伏せをしました。幸いあの子は一人で帰ってきました。後ろからそっと近づき、肩に手をかけました。
「ねえ、あたしって、きれい?」
振り向いた男の子は私の様子がただならないことに何かを感じたようで、恐る恐るうなずきました。
私は男の子の腕をつかんでから、マスクをはずしました。
「これでも?」
男の子は目を見開き、一瞬、凍りついたように立ち尽くしました。
それから、「ばけもの」と悲鳴をあげると腕をふりほどいて、転がるように逃げていったのです。
私はお腹を抱えて笑いました。ざまあみろと思いました。人の気持ちを傷つけたら、子どもだって許されないのだ、思い知れ。笑っているうちに涙が出てきて、とまりませんでした。
それから3年ほど過ぎると、赤かった傷あとは薄くなり、すっかり目立たなくなりました。新しい職場にも馴染み、やっと心穏やかな日々がすごせるようになっていました。
そんなころ、「口裂け女」という話が子どもたちの間で流行っていることを知ったのです。私はすぐに思いました。あの男の子が私の話を誰かにしたのだと。
自分の些細な復讐心がこんな形で広がってしまうことになるなんて思ってもみませんでした。そのころは、一時的なブームだと思っていましたが、それから何十年たってもこの話は廃れることなく、まるで都市伝説の代表のようにして残ってしまったのです。
あれから40年。私もそろそろ高齢者の仲間入りです。子育ても終えてこれからは老後の生活をのんびりと楽しむつもりです。
自分が子どもを育ててみて、子どもというのは時として本当に残酷なことを平気で言うものだということがよくわかりました。
もし、あの時の子がこの文を目にしてくれたなら、私は謝りたいのです。おどかしてしまってごめんなさい、と。あの頃の自分の精神状態は本当にひどかった。人を逆恨みすることでしか、生き延びるすべがなかったのです。
どうか許してください。