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かめかめさん

http://ameblo.jp/kamekame1976/ ブログデシセイカツバクロチウ

性別 女性
将来の夢 印税生活
座右の銘 ハワイに行きたいと思ったら、一歩踏み出さないといけない。 ハワイは向こうから近づいてこない。

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希求の旅

13/10/07 コンテスト(テーマ):第四十二回 時空モノガタリ文学賞【 都市伝説 】 コメント:3件 かめかめ 閲覧数:1368

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鈍い頭痛とともに由希子は目覚めた。
口の中はネバつき、胃を取り出して洗いたいほどのムカつきがある。
不快だ。
昨夜の記憶を求めて部屋を見渡すと、夕食の膳が下げられぬまま放置され、一升瓶が二本転がっており、脱ぎ散らかされた浴衣がしわくちゃに丸まっていた。

昨夜の夕食も豪勢だった。
山海の珍味、とひとくくりでは言い表せない、うまい料理の数々。

烏賊の刺身は身が透き通っていて舌の上で甘くとろけ、
そこにキリッとした「安芸虎」のひやおろしを流し込むと、まさに甘露。
のどにすべり落ちていく雫を、こくり、こくりと大切に慈しむように飲み込むと、
乾いた土に水が染み込むように由希子の体に染み渡った。

それから「八海山」に切り替えて、
八寸の秋刀魚のなめろうと、茸の香り煮で熱燗を一合、胃の中からポカポカとした幸福感が体中に満ちていく。
椀ものの海老と里芋のしんじょで、また一合。
戻り鰹の香草酒蒸しで一合、追加で頼んだ鰹のたたきで一合。
途中にビールの小瓶で喉を冷まし、
そこからは「亀泉」に切り替え、飲んで食って、食って飲んで……。

そのおかげで、部屋は空き巣が入ったかのような惨状。
ウツロな目でそれを見つめていた由希子は、小さなくしゃみをして、ようやく腰を上げた。浴衣を羽織り、とにかく風呂に入ろう、とひとりごち、帯を適当に巻き付けて大浴場に向かった。

由希子はいわゆる酒豪である。
残念なことにザルではない。飲酒量に上限があるし、酔えば人の目も気にせず狂態を晒すし、二日酔いにもなる。
ただ、飲める量が普通の人より格段に多いのだ。
焼酎なら八合、日本酒なら一升五合、ウォッカなら900ml、ウイスキーなら……ジンなら……マッコリなら……。エトセトラ、エトセトラ。
とにかく酒であればなんでも節操なく飲むと言う酒助平である。
度を超して酷い目を見ることは身に沁みているというのに、夜になるとむくむくと助平心が起き出して、毎夜ごとに羽目を外し、翌朝はげしい慚愧と頭痛に悩まされる。
それでも酒がやめられない。
ようするに誰よりも酒を愛しているのだ。

ある日、由希子は夢のような話を聞いた。

「飲んでも飲んでも二日酔いにならない酒を秘密裡に作る酒蔵があるらしい」

由希子は必死になってその酒の情報を探した。
インターネットにたずね、友人知人にたずね、居酒屋やバーの店主にたずね、酒屋など何軒回ったかわからない。
少しでも酒の知識のあるものには片っ端から聞いて回った。
しかし、その夢のような酒の情報は微塵も得られなかった。
探偵を雇おうか、と思案し始めて、ふと妙案がひらめいた。
自分で酒どころの酒蔵を一軒ずつたずねて歩けばいいのだ。
そこでまずは、酒仙伝説のある高知県へ向かい、手当たりしだい酒蔵に突撃したがどこにも噂の影すら見えず。
しかしどの酒蔵でももれなく試飲させてもらい、由希子の酒豪っぷりに杜氏たちはやんやと喝采を送り、いい気になった由希子は一升瓶を三本も四本も買い漁り……。
今朝の醜状と相成ったわけだ。


このようにして、由希子のあてどない、けれど幸せな旅は始まったばかりなのだった。


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このストーリーに関するコメント

13/10/08 遥原永司

読ませて頂きました。

私はお酒飲めませんので、感想を書く人としてはあまりふさわしくないかも知れません。でも書いてみます。
最初の酒と肴の描写はすごいなと思いました。食事の描写をこんなに上手く自分には書けません。主人公は本当に食を、酒を愛しているのだなと感じられました。
本当にすごいです。

でも通して読み終えてみますと、その最初の描写と比べて、後半の主人公の活動の部分がおまけみたいなものに思えてしまったことが残念でした。むしろその、渡り歩いたそれぞれの酒蔵でのエピソードや感想等の連続で構成されていた方が全体のバランスとしてはまとまったように思います。そして最後に目的の酒の秘密というか真相が明かされたり、または明かされなかったけどまあいいか、みたいなそんな終わり方で。単に私個人の好みの問題かも知れませんが。

13/10/13 かめかめ

>くくるさん
コメントありがとうございます。
起承転結のバランスをとったらこの形になりました。

13/11/09 かめかめ

>凪沙薫さん
こめんとありがとうございます。
福岡の酒蔵だと、若竹屋酒造の「博多練酒」が最高です。白酒ですが。

Drink OR Dei。すばらしいですね。そのように生きたい。
ぜひ曲も聞かせていただきます。

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