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たっつみーさん

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覆面アイドル

13/10/06 コンテスト(テーマ):第四十回 時空モノガタリ文学賞【 アイドル 】 コメント:2件 たっつみー 閲覧数:1637

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 あたしは覆面アイドル・ミマリン。あたしの素顔を知る者は誰もいない。テレビでもステージでも、いつも覆面姿。だから、あたしは謎のアイドルな・の・だ。

「おいっ! 早く覆面をかぶれ」
 テレビ局の控室のドアがノックされると、すぐに太っちょのKマネージャーが押し殺した声を飛ばしてきた。
 私は椅子に腰をかけており、手には酢昆布界のエース・都こんぶ。
 この甘酸っぱさ、う〜ん、クセになる。それに女の子が罪悪感を覚えることなく食べられるおやつ、やっぱ最高!
 っていってる場合か!
 私は慌てて食べかけの昆布を口に押し込み、覆面をかぶった。そして、立ち上がって、メイク台のほうへと視線を向けた。
 相変わらずのダサい姿が鏡に映っている。
 なんちゃら・キホーテで売っているような安物覆面。なんの装飾もない茶色い覆面は、昔の覆面レスラーのようで、こっぱずかしいったらありゃしない。しかも、衣裳はアイドルの王道・黄色いフリフリなのだから、バランスの悪さときたら、ひどすぎる。
 Kマネは、このダサさがいい、というのだが……とりあえず売れたのだから、そういうことなの?
 ちなみに、コンセプトはプリン≠ナ、デビュー曲のタイトルは『プリンレボリューション』である。
 きっと物珍しさで売れたのだ。
 もひとつ、ちなみに、デビュー2曲目は『ショートケーキウォーズ』で、衣裳は白いフリフリで、覆面は赤らしい。断言しよう。今度は絶対売れん!
「ほら、早く早く」Kマネが急かしてくる。
 私は鏡を見ながら手早く身だしなみを整えた。
 鏡越しにドアを開けるKマネの姿が見える。彼は二人の男と挨拶を交わしている。
 何やら、すいません、と恐縮する男。
 そう、そうなのよ。来るのが早すぎるちゅうっの! 予定より、一時間も早いってどういうことよ。予定が変わった? 前もって連絡せんかい!
 そんなことを思いながらも、男たちが目の前にやってくると、明るく元気な声で、「ミマリンです。よろしくお願いします」と頭を下げた。

 最近、急に忙しくなってきた。今日もテレビ収録後に、雑誌のインタビューだし、けっこう大変。
「ミマリンの出身はどこですか?」
「え〜っと、マリン星です」
 ほんとは、いばらき、ですけどね。
 ありゃりゃ、記者さんも、カメラマンさんも、なんか鼻がピクピクしてるわ。もしかして……酢の匂い? すみません。さっきまで、都こんぶを食べていたもので、気になっちゃいます?

「年は、おいくつなんですか?」
「え〜っと、17です」
 ほんとは24だよ。これまでいろいろあっての、これなもんで、けっこう苦労してまーす。
 やっぱ、7つもサバを読んで、このキャラ設定って無理があるでしょ。まあ、ミニフリからのぞく足なんか、そこりゃのアイドルにゃ負けない自信があるんだけど、このプラス7年という年月の積み重ねから滲みでてくるものが、どうにもこうにもねぇ……。

「好きな食べ物とかありますか?」
「え〜っと、イチゴです」
 やっぱり、都こんぶでしょ。それと、なんといっても、水戸納豆!
 それにしても、声を高くしてのアイドルしゃべりは疲れるわ。

「ところで、ミマリンといえば、あのキレキレのダンスと抜群の歌声ですが、どこで身に付けたのですか?」
「え〜っと、マリン星にはマリリアンという踊りと歌があって、ミマも小さい頃から踊ったり、歌ったりしていたので、なんとか、がんばれてます」
 そりゃもう、3歳の頃からダンススクール通ってますから。歌だってちっちゃい頃からやってますよ。うちのお父さん、民謡の先生なもんで、下地がありますんでねえ。
 Kマネは、このへんてこな格好とハイパフォーマンスのギャップがいいっていうけど……そうなの?
 
「そういえば、先週、コンサートイベントがあったそうですね」
「はい。いばらき県のおおあらい海岸でありました」
 イエ〜イ、地元だぜぇい。
「すごく盛り上がったと聞いていますが、いばらぎのファンはいかがでしたか?」
 んっ? 
「もう、ノリもいいし最高でした」
「いばらぎ県でのコンサートは初めてですか?」
 んっ? んっ?
「はい、いばらきに行ったのは初めてです」
「ミマリンは海が大好きだと以前おっしゃっていましたが、いばらぎの海はどうでした?」
 んっ? んっ、んっうぉわっ!
「もうっ、いじゃける(腹立つ)! おめ、ぎ≠カゃあんめよ! いばらぎでなくて、い・ば・ら・き! き≠セっぺよ!」

「……」

「あっ!」
 
 気付いた時には遅かった。
 私は仁王立ちで腰に拳まで当てて、噛みつかんばかりに顔を突き出していた。

 ぽかーんと口を開ける二人の男。
 ぽてんっと転がったペン。ぶらんぶらん揺れるカメラ。
 そして――
 あわあわと二重あごを震わせる男がもうひとり。


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このストーリーに関するコメント

13/10/07 murakami


主人公の郷土愛キャラがいいですね。
そうきたか〜、という感じで面白かったです。

13/10/08 たっつみー

村上さま

コメントいただきありがとうございます。

はい! 郷土愛です。そして、地元民である彼女のこだわりです。

面白いといっていただき、うれしいです。

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