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aloneさん

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恋の色、君の色

13/10/04 コンテスト(テーマ):第四十一回 時空モノガタリ文学賞【 恋愛 】 コメント:7件 alone 閲覧数:2066

時空モノガタリからの選評

最終選考

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道行く人々、取り囲む建造物、雲を抱える空。
生まれてこのかた僕の目には、すべてのものがモノクロに映った。
けれど――君は違った。君だけは、色を持っていた。


大通りを進むなか、僕は異常な色をした女性を見た。
白でも黒でもない。僕がまったく知らない色。とても美しい、輝き放つ色。
僕は無意識に駆け出した。そうせずにはいられなかった。
人混みを掻き分け、足がもつれそうになっても走りつづけ、そして遂に彼女のもとに辿り着いた。
僕は彼女の手を取った。振り向いた彼女は、驚きで目を見開いて僕を見ていた。
それが彼女との出会いだった。



「実は生まれてからずっと、世界がモノクロに見えるんだ」
「それは、白黒に見えるってこと?」
「そう、何もかも白黒にね。でも、君だけは違う」
「私だけ? 私はどう見えてるの?」
「君だけがモノクロじゃないんだよ」
「モノクロじゃない――色がついてるってこと?」
「うん、多分ね」
「多分って、どういうことよ」
「僕は白と黒しか知らないんだ。君を彩るこれが、色なのかすらも分からないんだよ」
「そっか、生まれてからずっとモノクロの世界しか見てこなかったんだものね。……じゃあ、私が教えてあげるわよ」
「……何を?」
「色よ、色。世界がどんな色をしているか、私が教えてあげる」



海の見える丘に座って、彼女は地平線の方を指差した。
「あれが青色。空の色、海の色」
彼女が僕の手を取り、言った。
すると、まるで彼女の声に触発された神様が絵筆で塗ったかのように、僕の見る世界は青色を取り戻した。空は灰色から青色へと姿をかえ、海は黒色から青色へと色づいていく。
とても不思議な感覚だった。白と黒しかなかったはずの世界に、少しずつ色がついていく。
「これが……青色……」
僕は感動を隠せなかった。今まで知っていた世界が色を得ていく。今まで見ていたはずのものが、実際はこんな姿をしていたなんて、信じられなかった。
「――……すごい」
感動のあまり、僕にはそれしか言うことが出来なかった。



驚くべきことに、彼女が僕の手を取って教えてくれた色は、僕にも見えるようになった。
以前はモノクロだったはずの世界が、少しずつ色づいていく。
青色、赤色、緑色、黄色、桃色、橙色、……。
けれどその一方、おかしなことに僕の目に映る彼女は、徐々に色を失なっていった。
青色、赤色、緑色、黄色、桃色、橙色、……。
彼女からは色が抜けていき、遂に僕の見る彼女の姿は、モノクロになってしまっていた。



ほとんど色の抜けてしまった彼女が、僕の手を取った。
僕は彼女の無残なモノクロの姿を見られず、耳だけを傾ける。
「実は、あなたに話しておきたいことがあるの」
「……なんだい?」
「私ね……もうほとんど色が見えないの」
「え?」
僕は驚き、彼女の顔を見る。モノクロな彼女は表情に影を差し、悲しみの色を浮かべていた。
「正確に言うなら、以前のあなたみたいに世界がモノクロに見えるの」
「モノクロ……」
かつて見ていた光景が脳裏を過ぎった。あの味気ない世界。色のない、虚しい世界。
「でも、その代わり、私にはあなたが見えるようになった」
「僕が……?」
僕は彼女の言わんとすることが掴めない。
「実はね、初めてあなたに会ったとき、私にはあなたがモノクロに見えたの。驚いたわ。あんなに色が溢れてる世界の中で、あなただけが白黒なんだもの。私、目がどうかしちゃったんだと思った……でも、違った。だって今はちゃんと見えるもの、あなたの姿が」
彼女が僕の目を見る。僕も彼女を見た。するりと彼女の目元から白抜きの液体が流れ落ちていく。
「あなたにまだ、教えてなかった色があった……――」
「……何色?」
「私の色」
そう言って、彼女は僕の唇にキスをする。唇が重なり合い、そして同時に、世界は輝き始めた。
かつてモノクロだったはずの世界が、今では色づき彩られ、そして、輝きだす。キラキラと目の前の光景が光り輝き、世界は神々しく美しく色めく。
彼女の唇が離れていき、色めく世界を背景に、モノクロの彼女は笑みを湛える。
悲しくも美しい彼女を目にし、僕は口を開く。
「なら、今度は僕が色を教えるよ」
僕は彼女に顔を近付け、囁くように言う。
「これが僕の色だ」
そして僕は、彼女と唇を重ね合わせた。
世界はより一層美しく輝き始める。傍にあるどのような色も、輝きを得て、キラキラと光り輝く。まるで世界が僕らのことを祝福してくれているかのようだ。
僕は唇を離し、彼女を見た。そこには、色を失う前の彼女の姿があった。
彼女は、輝き色めく世界を背に、光を纏ったかのような美しく輝く姿で言った。
「きれいな色……」
涙声で彼女が言うと、彼女の頬を一筋の涙が伝っていく。その涙はもう白抜きではなく、美しく輝いていた。


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このストーリーに関するコメント

13/10/05 タック

とても素敵な世界ですね。文章のリズムも世界を後押ししていて、心地の良い感覚に浸ることが出来ました。

13/10/05 クナリ

独特で魅力的な、不思議な世界観を堪能しました。
主人公の色覚が拡大していくところが好きです。
無感動に思えた主人公が、色覚とともに感情をも獲得していくようで、読んでいて気分がよくなりました。

ただ、主人公と引き換えにヒロインが色を失うという展開はとても良かったのですが、彼女の色覚の再獲得は、少し唐突に感じました。
二人のキスの効果(?)の違いなど、この世界のルールがもう少しわかりやすいといいかなーと。
それとも効果は同じで、「自分の大切なものや、好きなものが色づく」ということなのでしょうか?(クナリが言葉にするとすんごい陳腐ですがッ…)
魅力的な世界のファンタジ性だけに、そうしたルールみたいなものが表現されていると、より求心力が高まるのではないかと思ったのです。
勝手なことを申し上げ、失礼いたしましたッ。

13/10/05 alone

>タックさんへ
お褒めの言葉、ありがとうございます。
テーマが『恋愛』ということで、ドロドロしたものよりふんわりとした柔らかなものを提供したいなと思って書いたので、心地よさを感じていただけて幸いです。
感想ありがとうございました。

>OHIMEさんへ
モチーフが被ってはしまいましたが、お謝りになる必要はありませんよ。
一応はコンテストですからね。そういうのは稀にあることだと思いますし、投稿時期に大差もありませんからね。仕方がないことですよ。
けれど、やっぱりモチーフが被ってると言うことで、自分以外の方はどんなふうに料理したのか気になりますから、後ほど読みに行かせていただきます(笑)

そして、身に余るお褒めの言葉、誠にありがとうございます。
やはり色をテーマに据えたということもあって、ストーリーの色彩が鮮やかだと言っていただけるのは嬉しい限りです。
恋愛の方は経験不足のために思うまま感じるままに書いた感じでしたが、好印象を抱いていただけたようで良かったです。
感想ありがとうございました。

>クナリさんへ
お褒めの言葉、ありがとうございます。
色々な話を考えた中から選んだものなので、世界観などに魅力を感じていただけて良かったです。
主人公の無感動さというか冷めた感じは字数の都合で削ってしまったのですが、そのような雰囲気の残り香から色々と感じ得ていただけたようで幸いです。
そしてラストの場面についてですが、仰るように唐突さは拭えませんね。
加えて、キスの違いなどについては、まるで考えていなかった始末……。
なんだか愛の力は偉大なり!みたいな感じで、無理やりハッピーエンドに引きづり込んだ感じでしたね、はい。
やはりこういうのは緻密に築き上げておかないと、最後の最後で崩壊を招く恐れがありますね。
感想に合わせて、批評の御言葉ありがとうございました。

13/10/14 そらの珊瑚

aloneさん 拝読しました。

彼のために彼女は色彩を差し出したのでしょうか?
キスで彼女の色彩が戻ってくるってなんだか白雪姫のお話みたいですね。
色の獲得と恋愛、とても近しいキーワードだと思いました。

不思議でいて美しいモノガタリでした。

13/10/14 alone

>そらの珊瑚さんへ
お読みいただきありがとうございます。
自分としては、色を知らない彼のために、彼女が自身の色彩が失われることも厭わずに色を差し出してあげた、という感じに書いたつもりです。
そのために彼女は一時的に前の彼と同じ状態に陥ってしまうわけですが、最後にはハッピーエンドを(少々強引ながら)迎えさせていただきました。
恋すると世界が華やぐと言いますからね。色と恋愛は密接に関わっているのかもしれません。
感想をありがとうございました。

13/10/24 alone

>凪沙薫さんへ
お返事が遅くなってしまい申し訳ございません。
とても嬉しいお言葉ありがとうございます。
モノクロな世界の中で彼女にだけ色がある。
現実ではさすがにそのようなことは起こりえないでしょうが、恋はある種そのようなものなんだと個人的には思っています。
ですので、色彩の獲得とは仰るように恋のようなものなのかもしれませんね。
色づいていく世界についても上手くイメージが伝わったようで良かったです。
感想ありがとうございました。

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