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yoshikiさん

面白い作品を知り、自分でも書いて見たくなって何年も経ちました。よろしくお願いします。 2010年 小説現代S&Sコーナーに初めて送った作品が掲載されました。作品名『幽霊の見える眼鏡』 とにかく面白いものが書いていけるといいなと思っています。 イラストはエアブラシと面相筆で昔描いたものです。

性別 男性
将来の夢 楽隠居
座右の銘 不可思議はつねに美しい、どのような不可思議も美しい、それどころか不可思議のほかに美しいものはない。アンドレブルトン

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アイドルを募集した話

13/09/19 コンテスト(テーマ):第四十回 時空モノガタリ文学賞【 アイドル 】 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:2465

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 昔々、中世の王制時代にある王国があって、その国には険しい岩山がそびえていました。
 そしてなんという恐ろしい事でしょうか、そこにはドラゴンが遥か昔から住み着いているのでした。そうです、あの口から炎を吐く、恐竜でさえ真っ青になるドラゴンが。そして尚驚くのはそのドラゴンが人間の言葉がわかる賢いドラゴンだったという事です。
 王はドラゴンを恐れはしていましたが、ドラゴンは無茶苦茶な悪さをするわけではなく、悪人を懲らしめたり(食べたり)反乱軍を制圧したりしてくれました。まあそれは食べ物と引き換えにではありましたが。
 ですが今回のドラゴンの要求に王はちょっと困りました。いきなり結婚がしたいと言い出したからです。それも相手は同じドラゴンではなく、この国に住む可愛い女子だというのだから呆れかえります。まあこの時に王は初めてドラゴンが雄だという事を知ったのですけれど。王は困りましたが、ドラゴンを怒らせたくはないので、しかたなく国じゅうに御触れを出しました。ドラゴンの花嫁募集という前代未聞の募集です。
 ――要件はこうです。
『容姿端麗にして、若さ、可愛らしさ。清純さ。あどけなさ。そして可愛い子ぶっているのに、同姓に嫌われない、天性の明るさを持ち合わせるもの』
 なんという要件なのでしょう。それはまるで現代のアイドルの条件にもピッタリ合致してしまうものでした。しかしそういう者は中々現れませんでした。それも当然です。そういう者がいたとしたってその親が、ドラゴンの嫁になんかやりたくないと思ったからです。褒美は大金でしたが、誰も王室にはやってきません。
 ところがです、あるときずいぶんと目つきのきつい、目じりの吊り上った中年の女が娘を連れて王のもとに現れたのです。その娘は実に可愛い顔をしていましたが、やつれて元気のない娘でした。そして女は王に面会するとこう言いました。
「尊敬する王様、この娘はいかがでございましょう。まだ十七ですし、むろん生娘です。着飾れば誰より可愛らしく、美しい娘だと思います」
「うむ。お前はこの娘がドラゴンの花嫁にふさわしいと言うのだな」
「はい、仰せのとおりでございます」
 でも娘のほうは怯えたように女の顔色をうかがうばかりでした。王は暫らく黙って娘を見つめていましたが、おもむろに頷くと中年女だけに別室で待つよう言いつけ、女の子の手を取ると城の塔に駆け上りました。
 そうするとその大窓にドラゴンが顔をのぞかせたのです。大きな鱗のある赤黒い顔です。女の子はあまりの恐怖に尻餅をついて両肩はぶるぶる震えていました。
「この娘に間違いはないか?」
 王がそう尋ねますとドラゴンは答えるのでした。
「ええ、王様、この子に間違いはありません。さっそく挙式の段取りをしましょう」
「ドラゴンよ、まさか、この子と本当に結婚する気でいるのか?」
 王がすこし心配そうにそう言いますとドラゴンはこう答えるのでした。
「そんな訳はありません。この子はよその国につれて行きます」
 そして女の子の傍に大きな顔を近づけて、じっと見つめたのです。
「アルマ。さぞ辛かったろう。だがもう何も苦しむことなどない」
 女の子はもう泣きだしそうだったのですが、その瞳に見つめられるうちに、ドラゴンの瞳の奥になんとも不思議な暖かいものを感じるのでした。そして、か細い声でこう言いました。
「ど、どうしてわたしの名を知っているの」
 するとドラゴンは振り返るようにして王に言いました。
「王様、この子の親は今日から私です。行く末は凛々しい青年でも見つけて添わせましょう」
「今、なんと申した」
 王様がとても驚いて訊き返しました。
「この子は今まで悲惨な状況にいました。彼女を連れてきたあの女は生みの親ではなく、しかも姉たちにいつも虐められ、毎日のように過酷な労働にさらされていました。実の親は戦争で死に今の女が金目当てに、このアルマを孤児院から引き取ったのです。あの女は近々アルマを娼婦宿に売るつもりだったのです」
「そうであったか。おまえは何でも知っているのだな。それにしてもおまえは顔に似ず、ずいぶんやさしい心を持っているのだな」
「あの女を牢に入れるのは簡単でしょうが、それではアルマが路頭に迷う可能性があります。それで仕組んだのです。王様、私はいつも国の上空を飛んでいます。そしていつも国の人々の暮らしぶりに注意をはらっているのです。これまでも、そしてこれから先もずっと」
「そうか、これからもよろしく頼むぞ」
 王がうっすらと笑顔を湛えました。ドラゴンもそれに応えて深く頷きました。アルマはただ泣いていました。
 そして可哀そうで可愛いアルマは、やがて隣国の王子に見初められて、末永く幸せに暮らしたという事です。その事を知るのは、もちろん王とドラゴンのみです。


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このストーリーに関するコメント

13/09/19 泡沫恋歌

yoshikiさん、拝読しました。

なんと清々しいオチでしょう。
やっぱり可哀想な少女の物語はハッピーなオチをつけて欲しい。

それにしても・・・どんどん、アイデア出ますねぇ〜( VェV)σアンタ

13/09/20 草愛やし美

yoshikiさん、拝読しました。

うるうるときました。ドラゴンさんなんて優しいのでしょう。そうなんですよね、人は外見で物事を判断してしまいます。ですが、中身は、どうなのでしょう。アルマちゃん、よかったですね。ドラゴンさんも王様も素敵です、この国はきっと長く栄えることでしょうね。楽しく読ませていただき、ありがとうございました。

13/09/21 yoshiki

泡沫恋歌さん。コメントありがとうございました。

ちょっとできすぎな話なのですが、まあおとぎ話です(~_~;)

アイデア… なかなか頭が固くなって大変です

13/09/21 yoshiki

草藍さん。コメントありがとうございます。

なんと、うるうるしていただけたのですか嬉しいなあ。
この話はハッピーエンドにすると書く前から決めていました(^v^)

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