1. トップページ
  2. 悪徳商法

ポテトチップスさん

20代の頃、小説家を目指していました。 ですが実力がないと自覚し、小説家の夢を諦めました。ですが久方ぶりに、時空モノガタリ文学賞に参加させて頂きます。 ブログで小説プロットを公開してます。ブログ掲載中のプロットを、小説練習用の題材にご自由にご利用下さい。http://www.potetoykk.com

性別 男性
将来の夢 小説プロット提供家
座右の銘

投稿済みの作品

0

悪徳商法

13/09/10 コンテスト(テーマ):第四十回 時空モノガタリ文学賞【 アイドル 】 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1494

この作品を評価する

原宿竹下通り沿いに建つカフェテラスで、野見山健吾は運ばれてきたアイスコーヒーにミルクと砂糖をいれスプーンでかき混ぜた。
平日とはいえ竹下通りは人の流れが途切れることなく行き来し、そんな人々を野見山は欠伸をしながら退屈そうに眺めていた。
「野見山さん、お待たせしました」
後ろから声をかけられた野見山は、瞬時に顔に笑みを湛えて席から立ち上がり、後ろを振り向いた。
「京子さんこんにちは。今日も暑いですね」
「そうですね。汗が止まらなくて困ってます」
橋本京子は手に握っているハンカチで額の汗を拭った。
「どうぞ、お座りください」
野見山は京子に向かいのイスに座るようにすすめたあと、店員を呼んで彼女の分の飲み物を注文した。
「勝手に注文しちゃいましたけど、アイスコーヒーでよかったですよね?」
「はい。ありがとうございます」
「さっそくですが京子さん、お金は用意できましたか?」
「はい。友人に頼み込んで約束の30万円を用意してきました」
京子はバッグから茶封筒を取り出し、野見山に手渡した。
野見山は受け取った茶封筒の中の札を数えた。
「確かに30万円受け取りました」
「それで、いつアイドルとしてデビューできるのでしょうか?」
「今のところ、来年の1月にデビューさせる計画でいます。前にも話したと思いますが、8人組みアイドルユニットとしてデビューさせるつもりです」
「本当に嬉しいです。私、小さい頃からアイドルになりたかったんです。夢って叶うものなんですね」
「夢は追い求めれば必ず叶うものですよ。あっ、そうだ……」と野見山は言葉を区切って顔を上に向け、困った表情を顔に浮かべた。
「どうされたんですか?」
「まいったな……。いや、実はね、あと20万円ほど京子さんから頂かないといけないの忘れてました」
「えっ、どうしてですか? 野見山さん以前、30万円でアイドルとしてデビューさせてくれるっておっしゃったじゃないですか」
「確かにそのように京子さんに話しましたが、京子さんが所属する予定の芸能プロダクションの社長から、所属費用として20万円を払うようにと言われていたのを忘れていました」
「では、野見山さんにいま支払った30万円はなんの費用なんでしょうか?」
「この30万円は仲介手数料です。でもご安心ください。あと20万円を支払って頂けたら、間違いなく来年の1月にはアイドルとしてデビューできますから。アイドルとしてデビューしたら、費用として支払った50万円なんて、すぐに稼げますよ」
京子は明日中にお金を工面して必ず支払うと約束し、店を出て行った。
野見山は店員を呼んで、アイスコーヒーをもう一杯注文したあと、カバンから手帳を取り出し、今日の日付の欄に『橋本京子から30万円徴収 原宿』と黒のボールペンで記入した。その他の日付欄にも、毎日のように女性の名前と金額、場所が記載されていた。
注文したアイスコーヒーを飲み干すと、野見山は席を立ち会計を済ませて店を出た。
竹下通りを駅に向かって歩いていると、誰かに肩を叩かれた。振り返ると、制服を着た2人の警察官が警察手帳を野見山にみせて立っていた。
「捜査にご協力ください」
「なんですか?」
「手荷物の中身を確認させて頂けますか?」
「なぜ?」
「最近、覚醒剤や凶器を隠しもっている人が多いので、こうして手当たりしだいに捜査協力をお願いしているんです」
「覚醒剤や凶器なんて持ってないので、お断りします」
「とりあえず、カバンの中身を見せて頂けますか?」
「だから怪しいものなんて持ってないって言ってるだろ!」
「ええ。そうであることが一番好ましいのですが、とりあえずカバンの中を見せて頂きたいんです」
野見山は仕方なしにカバンを開いて警察官に見せた。
1人の年配の警察官が、カバンの中に手を入れて怪しいものがないかまさぐったあと、手帳を手に掴んだ。
「何すんだよ! 手帳に触るな!」
野見山は苛立たしげに手帳を手にする年配の警察官に怒鳴った」
「手帳の中に何か隠し持っているのですか?」年配の警察官が言った。
「何も隠しもってなんかないよ」
「それじゃあ、ちょっと手帳の中を確認させて頂きます」
「やめろよ!」野見山は警察官から手帳を取り戻そうとすると、若い警察官が野見山を押さえた。
「これはなんですか? 手帳の日付欄に毎日のように別々の女性の名前と金額などが書かれていますが?」
「何でもないよ」
警察官は手帳のページを捲りながら、そこに書かれている女性達の名前と金額を目を細めて見ていたが、あるページで手を止めた。
「あれ? この女性、前にアイドル悪徳商法で被害届を提出していたような……」
警察官は無線で、本部に確認の連絡をいれた。
野見山は全身に鳥肌を覚えながらも、平静さを装うことに神経を集中させた。


終わり


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン