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祖父と父と孫と

13/09/01 コンテスト(テーマ):第三十九回 時空モノガタリ文学賞【 待つ人 】 コメント:1件 エルテネ 閲覧数:1468

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今日はお盆。
50歳の息子がこっちに来ると聞いて、朝早くから玄関のすぐ外で待っている。
別にうれしくとも何ともない。息子が来ることには、怒りしか感じなかった。

「孫2人、置いてくるとは・・・」

あいつは昔から出来の悪い子供だったが、ここまでひどいとは。
とりあえず、今日来たら一発殴らなければ気が収まらん。
儂の苛立はかなりたまっていた。

「あれっ、親父?何してんの、こんなところで?」

息子がやってきた。スーツ姿で、鞄を片手に。
息子と会うのは20年振りだ。
久しぶりに会う顔には、昔は生やしてなかった髭があり、
おじさんと言われても仕方がないような雰囲気があった。

「・・・親父、・・・泣いてる?」

息子に言われて気づいた。確かに儂は涙を流していた。
いろいろとたまっていたものが、息子の顔を見た途端に崩れたようだった。
髭や目の下の熊のせいで、昔の容貌とほとんど違って見えるが、
目の前にいるのは、間違いなく儂の子供だ。

そして、泣いているのは息子も同じだった。
泣きながら、そして少し笑いながら息子は言った。

「・・・昔のまんまじゃん」
「当たり前じゃ」

儂も笑いながら、そう答えた。
いい大人が二人して玄関の前で泣いているのは、滑稽に映ったことだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


長い時間、2人で座って話をしていた。
息子からは、色々な話を聞いた。

孫は自立して、2人とも東京で仕事をしていること。
そして、孫が2人とも結婚したこと。
さらに、儂のひ孫がいることも・・・

「会いたいもんじゃのぅ」
「それは無理じゃね?」
「そんなことはない。ここで待っていればその内・・・」
「何年待つつもりだよ」

むぅ、と儂が黙ってしまい、会話が止まった。
何の話を聞こうかと考えていると、息子が口を開いた。

「俺が来るのをずっと待ってたのかよ?」
「まぁの。20年は長かったわ」
「・・・」

息子が黙ってしまった。
こりゃいかんと思い、ふと息子の嫁の話を持ち出した。

「5年前に花子さんが来たぞ」
「花子が?」
「うむ。そのときにも色々話をしたが、孫の結婚やひ孫のことは聞けんかった」
「・・・そうか」

そして息子はまた小さい声で、「・・・そうだな」と呟いた。

さらに小一時間話をしたところで、
「もう行くわ」
と、息子が立ち上がって言った。

「なんじゃい、もう行くんかい」
「ああ、花子をこれ以上待たせる訳にはいかないから」
「・・・そうか」
「親父も行かないか?」
「儂は・・・」

そして、儂は息子を玄関とは反対の出口まで見送ることにした。
「それじゃ」と、息子が出口の階段に足を踏み入れた。

「ま、待て!!」

息子が振り向く。
儂はどうしても聞いておきたかったことを聞いた。

「楽しかったか?」
「うん!親父の子どもに生まれて、本当に良かった!!」

そう言って、息子は行ってしまった。
「・・・そうか。・・・そうか」
儂はまた涙を流し、息子の旅立ちを見送った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「兄ちゃん!父さんと母さんのこれで良いの!?」
「ああ。爺ちゃんのところも頼む」

今日はお盆。
とある兄弟夫婦とその子どもが墓参りにやってきた。
父と母、そして大好きだったおじいちゃんのお墓参りに。


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このストーリーに関するコメント

13/09/04 

先だった人のから書かれていて新鮮でした。
とても優しい話しで、どことなく癒されました。

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