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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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7

やさしいアーティスト

13/08/27 コンテスト(テーマ):第十五回 【 自由投稿スペース 】 コメント:1件 石蕗亮 閲覧数:2014

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 私は若い頃は画家を目指していたんですよ。
感動的な自然の風景をキャンパスに留めて多くの人に伝えようと思ったんです。
夢中で沢山のものを描きました。
風景だけではなく、自然に生きる生き物たちも描きました。
時折々に顔を変える自然のなんと魅力的なことか。
そしてそこに生きる動物たちのなんとちからづよいことか。
私は目に映るものを片っ端から取り憑かれたように描き込んでいきました。
沢山の絵を描くにつれ画力は上がり、それに伴い私の絵を見て感動してくれる人も増えていきました。
次第に絵が評価され、支持者も増えました。
しかし、それとは逆に私は悩んでいきました。
私は富や名声が欲しかったわけではないのです。
ただひたすらに素晴らしい自然に遭遇したときのあの心の躍動感や感動をキャンパスに封じ込めて、あの感動の一瞬を永遠にしたかっただけなのです。
私の悩みは納得のいく絵が描けなくなったことでした。
確かに画力は上がり以前よりは私のイメージに近いものが描けるようになりました。
しかし、本物には追いつかないのです。
どんなに他の人が認めても賞賛してもらっても、私自身が納得いく絵が描けないのです。
私はこの苦悩からの脱却を願い教会へいきました。
そこで神父に悩みを打ち明けました。
価値観の問題であることはわかっていました。
神父に解決を求めたわけではなかったのです。
そう、本当にただこの悩みを独白したかっただけだったのです。
しかし意外にも神父は私に答えを与えてくださいました。
神父曰く
自然は神の創り賜った奇跡の結晶である。
そこには植物や地形だけではなく動物に至るまで自然は神が創った最高の芸術品である。
何故最高なのか。
それは神の優しさや慈悲が余すことなく満ち溢れているからである。
神は全ての土地に平等に恵みが満たされるように世界を創られた。
新しい風が留まらずに通り抜けるように。
雨が降れば流れ大地を潤すように。
植物にはどんなに小さな土の際の葉にも光が届くように。
そのように世界を愛して創られた。
そう言うと神父は私に大きな蕗の葉を持たせて外へ連れ出した。
ご覧なさい。
言われて見上げると葉を透過して柔らかな光が私を包んでいた。
そして足元の芝生にも光が届いていた。
神はどこにいても光や風や水が行き渡るように世界の色や形をお決めになられた。
神父の言葉に私は心を打たれた。
私にはそこまでの愛はなかった。
世界の容や色にまで愛を注いだ神の作品がこの世界なのだ。
私は感動を絵で伝えようとするあまり、神の愛まで考えや想いが至っていなかった。
それを痛感した私はいそれまで以上に自然への憧憬が深まると同時に、神は愛に満ちたアーティストであると思い至った。
以降、私は絵を描くことをやめた。
私はあの時の神父の言葉が真理であると悟り、私も神父の道を選んだ。
私は神というアーティストにはなれない。
しかし、神の愛を教え説く神父にはなれる。
それが今の私です。
いつしか神の愛を描けるようになったら、もう一度絵筆をとってみようと思うが。
今は神の愛を学び、まだ知らぬ人たちへ教えることが私の喜びです。


見る人が膝をつき手を合わせ涙する絵がとある教会に飾られていた。
それを描いた神父の生前の言葉が先ほどのものだった。
絵のタイトルは「神=やさしいアーティスト」であった。


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このストーリーに関するコメント

13/08/27 石蕗亮

テーマ「神」にタイムアップで間に合わなかったのでこちらに掲載しました。
全ての色と容には意味があり、そこには神の愛があふれている。
そんな言葉を遠い昔に深夜のNHK番組で聞いた覚えがあり、何の番組だったか覚えていませんが、「光を森の地面まで届けるために葉の色を神は緑に決めた」というナレーションが印象的でした。
そんな記憶を元に書いてみました。
書き終えた達成感を胸に寝ます。おやすみなさい。

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