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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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花火の音の怪

13/08/19 コンテスト(テーマ):第十五回 【 自由投稿スペース 】 コメント:1件 石蕗亮 閲覧数:1859

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 蒸し暑い外を汗を滲ませながらアパートへと帰宅する。
部屋に入ると明かりをつけるより先にエアコンのスイッチをいれた。
そのまま薄暗い部屋の中を歩き冷蔵庫を開け、冷えた缶ビールを取り出すと一息で半分飲み干す。
それからようやく明かりをつけた。
ニュースでも見ようかとテレビの電源を入れようとした時、
 ドォン、ドドォン
遠くで打ち上げ花火の音がした。
転勤転勤でその土地の祭りも知らず毎日働いており、音を聞くまで今日が花火大会であることも知らずにいた。
 だいぶ花火も見ていないな。何年ぶりだろう。
そう思いながら窓の外に視線を移し、花火の明かりを探した。
しかしそれらしき明かりは見つけることができず、早々に諦めて残りのビールを飲み干してまた冷蔵庫から2本目を取り出すとテレビをつけた。
ニュースは今日の出来事、世界ニュース、スポーツ情報といつも順番で流れていき天気予報が終わると23時にかかるところだった。
3本目の缶ビールを飲み干したところでニュースの熱中症の話を思い返した。
 今年は特に暑いよなぁ。暑ければビールは旨いが、止まらなくなるのが難点だよなぁ。
そう思いながらザッピングしたがその後は面白そうな番組もなかったのでシャワーでもあびようかとテレビを消すと
 ドォン、ドドォン
再び花火の音が聞こえた。
 おいおい、けっこう遅くまでやっているもんだ。
そう思いもう一度窓から外を眺めたが、いくら見渡しても一向に花火の明かりはみつけられなかった。
その間にも打ち上げられる音だけは響いて聞こえていた。
もしかしたら窓とは反対の方角なのだろうかと玄関から出てみたがやはり見えない。
できたばかりの新築のアパートだったので隣室は空き部屋で、周囲は深夜の静けさをたたえていた。
少しの間アパート前の道路を眺めていたが、花火の見物客らしき通行人も見当たらないので不思議に思いながら部屋に戻った。
 ドォン、ドンドォン
それでも音はまた聞こえた。
よぉく耳を澄ませ、音の方を探ってみた。
音はどうやら壁の方から聞こえるようだった。
恐る恐る音のする壁に近づくと、確かに音が徐々に大きく聞こえた。
 隣室は確か空き部屋のはず。そうだ、さっき玄関出たときも明かりはついていなかった。じゃぁ、この音はいったい…。
自分の記憶と現状を脳内で照合しながら気持ちを落ち着けようと試みた。
少し深く息を吸い、ゆっくりと吐き出して呼吸を整えた。
 ドンッ!
直後、一際大きく音がした。
確かに『壁を叩いている』音であった。
打上げ花火の音だと思っていたものは隣室から叩きつけられている壁の音であった。
 泥棒でもはいいたのか!?いや、空き室だからそれはないだろう。では誰か悪戯で侵入し勝手に部屋を使っているのでは?
喉から溢れそうな恐怖心をなんとか現実的な理由で落ち着けようとそれらしい憶測をたてて自分を納得させようとした。
そして納得させるために確かな証拠を求めて壁に耳をあててみた。
 誰かが居るなら他の音や話し声が聞こえるかもしれない。
非科学的なことなんてそうそう起こるものではないと自身に言い聞かせながら壁に耳をあてて隣室を伺ってみた。
 ………
ぼそぼそと何かしらの音が聞こえる。
やはり誰かいるのだと確信し更に耳を済ませて壁越しの音に意識を集中させた。
 「お前、聞こえているね。」
耳元でいきなり普通の大きさの声が聞こえた。
突然のことに声も出ずに驚いて壁から跳ねるように離れると、腰が抜けたらしく動けなくなった。
いや、全身が動かなかった。
そのまま壁から視線を離せないままでいると、壁から年配の女性が滲み出る様に現れた。
 「私は隣に居るからね。」
そう一言呟くとそのまま壁に溶け込むように消えていった。

 眠れない夜を過ごし、不眠のまま朝イチで不動産屋に駆け込んだ。
事情を説明すると「またですか。」と担当者は溜息をついた。
数年前に誘拐監禁された女性が死体で見つかって以来「でる」のだという。
あまりにも頻発するので建物ごと建て直したというのだが、新築してからはこれが初めてだという。
 
 もしまた何らかの事件が発生していても不安なので、不動産屋の担当者を伴って問題の隣室を確認することにした。
「若い女性の死体は勘弁してほしいですね。」
移動しながら担当者が呟いた。
「死体は若くても老いてても嫌ですよ。」
私の応えに「確かに。」と担当者は汗を拭いながら返した。
「若い死体?」
「えぇ、あの事件では26歳の綺麗な女性が犠牲者でしたが、綺麗なだけに幽霊になった時の怖さも半端じゃなかったそうですよ。」
私の疑問に担当者が当時の説明をしてくれながらドアの前に着いた。
 ちょっと待て。昨晩出たのは年配者であって決して若くはなかった。それではあれは一体誰…。
そう思っているうちに担当者は鍵を差し込むと「あれ?」と疑問の声を上げながら鍵を回さずにドアを開けた。
「…開いてる…。」と二人同時に呟くと、そのまま同時に視線を部屋の中へを移動させた。

そこには大家のおばさんが熱中症で倒れこんでいた。


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このストーリーに関するコメント

13/08/20 石蕗亮

半年ぶりくらいに書きました。
稚拙な文章ですが鳥肌立ててもらえれば幸いです。

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