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yoshikiさん

面白い作品を知り、自分でも書いて見たくなって何年も経ちました。よろしくお願いします。 2010年 小説現代S&Sコーナーに初めて送った作品が掲載されました。作品名『幽霊の見える眼鏡』 とにかく面白いものが書いていけるといいなと思っています。 イラストはエアブラシと面相筆で昔描いたものです。

性別 男性
将来の夢 楽隠居
座右の銘 不可思議はつねに美しい、どのような不可思議も美しい、それどころか不可思議のほかに美しいものはない。アンドレブルトン

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裸婦像

13/08/19 コンテスト(テーマ):第十五回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:3564

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 ――やわらかな木漏れ日がそのアトリエに差し込んでいた。
 画家のアトリエは洋館の二階にあり、壁には蔦が絡まっていた。
 窓際には大きなカンパスがイーゼルに乗って置かれてあり、カンパスには見目麗しい裸婦像が油絵の具で見事に描かれていた。絵はほとんど完成していて最後の仕上げに入るところであった。
 画家は豊かな顎鬚をたくわえた、まるでダビンチを連想させるような風貌をしていた。
 彼は暫らく一心不乱に筆を走らせていたが、目でも疲れたのか筆を置いて立ち上がった。最近視力がだいぶ衰えてきたのだ。
 画家はしばらく外を眺めてドアから出て行ってしまった。きっとうららかな外の景色の中を少し散歩でもしたくなったのだろう。
 カンパスの裸婦がアトリエにぽつんと残された。豊かな金髪に、ふくよかな赤い頬を持つ裸婦であった。
 そのとき思いがけないことが起こった。奇跡と言っても過言ではない。裸婦の目が動いたのである。裸婦の視線はテーブルの上に注がれていた。テーブルの上には大きな皿があり、色とりどりのフルーツが盛られてあった。
 バナナ、葡萄、オレンジ、イチゴ、梨、リンゴ。それらは静物画のモチーフとしてそこに置かれてあったのだ。
 裸婦はどうやらそのフルーツに惹かれているようであった。こんな場合、色気より食い気とでもいうのであろうか……。裸婦はその絵画からうまく抜け出すとおいしそうにそのフルーツを口にほお張った。
 ――そして至福の表情を浮かべて、美味しそうにそれを食べだしたのだ。

 やがて時が流れると画家がアトリエに帰ってきた。カンパスの前にゆっくりと座り創作は再開された。
 筆を運ぶうち画家の顔に実に不思議そうな表情が浮かんだ。そしてカンパスに顔を近づけたり遠ざけたりして「おかしいな」と一言呟いた。
 画家は腑に落ちない様子でふっくらと盛り上がった裸婦の腹の修正に入った……。


                  おしまい


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