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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

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将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
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トイレの女神様

13/08/13 コンテスト(テーマ):第三十七回 時空モノガタリ文学賞【 神 】  コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:2089

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 トイレに行った、すると、そこに人影が!
「ヒイ〜、誰?」
 女の子が便器に座っている。私は、一人暮らしのはず……。
「キャアーおばけぇー」
 再び叫ぶ私。それには驚かないでその子はにこりと笑って花子と名乗った。
「げっ! トイレの花子、ギャー、何で女神じゃなくておばけの花子が出るのよぉ」

私は掃除が大嫌い。俗に言う片付けられない女。汚部屋になってもゴミ溜の横で平気で暮らしてきた。でも、歌を信じたの──トイレには、女神様が住むから掃除すればよいことがあると思った。ずっと良いことなんか一つもなかった。田舎から出てきて六年、幾度も仕事を変わった。何とか暮らせてはいるけれど、楽にはならない。男だってろくな奴しか出会わない。都会には悪い男は五万といるのに、良い男はほんの一握り、しかも。私には縁がない。バイト先はハンバーガー屋、スマイル売りすぎて顔が引きつりそうだ。
 トイレの女神様の歌で、私は田舎のばあちゃんを思い出し、この部屋に入居して初めて掃除をした。
「気安く呼ばないでね。あたし、花子って名前だけれどれっきとした女神なのよ。大体、あんたが、掃除しないから、こうなっちゃったんじゃない、どうしてくれるのよ」
「私のせい?」
「そうよ、あんたのせいよ、トイレに住む女神界の我々は、掃除次第で容貌が決まるのよ。 あたしの運命はあんたに委ねられているのよ。だから、お願い掃除して、でないと取り憑くわよ」
「キャー、来ないで」
 叫んだ私は、それから頑張って毎日掃除した。花子に会いたくないと思ったから。だけど、花子は、毎晩出てきてトイレの便座に座っていた。
「ちょっとどいてよ、トイレ使えないでしょう、漏れちゃう」
 毎晩出てくるものだから、私は、すっかり花子に慣れていた。横柄な態度の花子に腹が立つ。最近の花子は少し背が伸びたようで、顔つきも大人びてきているように見える。
「どけって言われても、あたしはトイレの女神だもん。ここからは出られないのよ」
 そう言って花子は私が座った便座のすぐ脇に佇んだ。
「じっと見つめないで、出る物も出なくなるでしょ」
「あぁ、わかったわよ。いちいち言わなくてもわかっているってば。女神になれば、姿も消せるようになるから。これもみんなあんたが悪いのよ。ちゃんと掃除してなかったから、こうなったの、自覚してよ」
「しているわ、だから、どんなに疲れて帰ってきてもトイレ掃除だけは欠かしてないでしょう」
「だよねぇ、あんたは偉い」
 花子に褒めてもらっても、ちっとも嬉しくないわよ――そう言いながら私はまんざらでもない、綺麗にすると確かに気持ちが良かった。

 ある夜、トイレに行ったが花子がいない。おかしい、昨日まであんなにため口叩いていたのに、そう思って探している自分がいて、ふっと笑ってしまった。
「そうだった、花子なんて出ない方が良いんだった。あぁ、清々した。ようやくゆっくりトイレできるわ」
 大声で言ってみたが、シーンとしているトイレの方がかえって怖い気がしてくる。
「花子、ほんとにどっか行っちゃったの? おーい、出ておいでよ」
 毎晩会う度に、散々文句を言ってきた私だったが、一人暮らしの淋しさをいつしか花子に癒されていたのだ。きっと悪態ばかりつく私に愛想が尽きたのだ。居候とか、いなくなれとか散々言ってきたから私を嫌いになったのだろう。溜息をついて便座に座ろうとしたら、誰かが私のお尻をスルリと撫ぜた。
「ギョエー、変態」
「あたしよ、花子。さっきからあんた呼んでいるでしょ。あたしに会いたいって、だから触ってやったのに、変態はないでしょう」
「花子、あんたの姿見えないよ」
「そうよ、女神になれたから姿が消せるのよ、本物の女神特別公開」
 そう言うと女神の花子が便座の横に姿を現した。
「わお! 美しい女神、あなたほんとに花子?」
「ありがとう褒めて貰っちゃった、へへ照れちゃうね」
 ため口だけは直ってないようだが、その姿は美しい女神様だったが、花子の面影が残っている。
「今夜で会うのは最後ね、掃除してくれてありがとう」
「お礼言われても、何て返事したら良いの」
 私は泣き出した──最後だなんて淋しすぎる。花子ずっと友達でいたいよ――そんなことを口走っていた。
「大丈夫、あんたはもう女神の住むトイレの住人なんだから安心。今に良いことあるからさ」
 
 トイレの中で花子が呟いている。
「やれば出来るじゃない、これからも頑張れ。きっと良いことあるよ。ほんとは女神は姿を見せちゃ駄目なんだ、たとえ花子の姿だって。でもあたしとしたことが、この部屋の住人のあんたが、あんまり哀しそうな顔していたからきになっちゃって、ふふふ。でも良かったわ、幸せになってよね」


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このストーリーに関するコメント

13/08/13 草愛やし美

画像は、無料素材のイラストACさんより、左は、對馬有香さんのものを、右は、ririさんのものをお借りしました。
イラストACさんのURLは、http://www.ac-illust.com/ です。

13/08/13 yoshiki

読ませていただきました。

なんとやさしい花子さんなんでしょう。女神になれて良かったね(*^_^*)
でもトイレにいたら、ちと困るかな。楽しいお話をありがとうございました。

13/08/14 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

こんなトイレの花子さんなら私も会ってみたい。
かわいいお話に心癒されました(^◇^)

13/08/15 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

トイレの花子さんが女神になったんだね。
きっとトイレに女神様が住んでるのなら、この女性は幸せになれるでしょう。

夢のある話で良かったです。

13/08/21 鮎風 遊

ほんわかとした話しでしたね。
癒やされました。

だけど、ホントに現れたら、えらいこっちゃ。

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