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久一さん

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雄弁な弁当

13/08/12 コンテスト(テーマ):第三十六回 時空モノガタリ文学賞【 無口な人 】 コメント:0件 久一 閲覧数:1339

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 別に俺は不良じゃない。
ただちょっと退屈でつまらないだけ。
(綺麗だな)
 青々とした空に真っ白い雲が浮かんでいる。屋上の塔屋の上は遼一のお気に入りの場所だ。遼一は授業をサボっては決まってここにきて、仰向けに寝転びただ何となく空を眺めていた。
 風に吹かれ流れてきた雲が太陽を隠す。屋上に陰りがさす。その時遼一のお腹の虫が鳴いた。
(腹減ったなー)
 ごろんと横に寝返りをうつと塔屋の屋根に上がるための梯子から女の子の顔が覗いていた。
「うわっ」
 思わず声が出た。
「いた」
 河原暦、遼一と同じクラスでクラス委員をしている。
「な、なんだ河原か」
 暦はよいしょと小さく言いながら屋根の上に登る。スラリとした長身に長い黒髪が風に揺れる。暦は遼一の傍まで来ると、寝転んでいる遼一を覗き込んだ。
「な、なんだよ」
 茶色い二つの瞳に見つめられてたじろぐ遼一。
「授業」
 遼一は何だかがっかりしつつも、小さくため息をつくと起き上がり暦と少し距離を置いた。
「河原もしつこいね、だからこないだも言ったけど」
 そこまで言って、遼一は気づいた。
「てか、今授業中じゃね?」
「サボった」
 事もなげに言う暦。
「サボったって、クラス委員がそんなことしていいのかよ」
「だめ」
 ガクッと力が抜ける遼一。
 暦は無口で引っ込み思案だ。クラス委員も誰もやりたい人がいなく、半ば押し付けられるようにして就任した。しかし元来の真面目な性格と責任感の強さが、クラス委員の仕事には向いていたのか、今ではクラスの皆も信頼を寄せるクラス委員となっていた。
「あのな、クラス委員だからって、授業サボってまで俺を説得しに来なくてもいいんだぞ」
「別にそういうわけじゃない」
 何を考えてるのかわからないと、呆れる遼一に、暦は手に持っていた弁当の包みを差し出した。
「何これ? え? 弁当? 何? 本当に作って来たのか」
 『弁当でも作ってきたら授業出るよ』遼一はそう暦に言ったことがあった。
 暦は遼一に押し付けるように弁当を渡すと、じゃあと言って梯子を下り帰って行った。一人取り残された感じになってしまった遼一。雲が流れ日差しが差すと、遼一の腹の虫が思い出したように再び鳴いた。
「腹減ったし、とりあえず、食べるか……」
 包みを解き、弁当のふたを開ける。俵型のおにぎりとおかずが綺麗に詰められている。おかずは卵焼きに、ウインナー、煮ものにほうれんそうの和え物、から揚げだった。
 遼一は卵焼きから手を付けた。一口噛むと甘い味が口の中に広がった。
「うまい」
 それは、遼一の好きな甘い味付けの卵焼きだった。
(そういえば、甘い卵焼きがいいとかあいつに言ったっけな)
 ウインナーはタコさんウインナーにするつもりだったのか切込みが入れてあるが、リアリティを求めすぎたのか、切込みが多すぎて火星人のようになっている。おにぎりも少し大きかったがおいしかった。中身は高菜と梅干だった。
 どのおかずも、どこか不格好で、料理に慣れていないのがわかる。けれど一生懸命さが、弁当のあちこちから伝わってきた。
 遼一は思わず、暦が弁当を作っている姿を想像して赤面した。なんとなく恥ずかしくなり、弁当の残りを一気にかきこみ、ごろんと仰向けになった。
「あーあ! わかったよ! 出ればいいんだろ授業!」
 遼一の上を青い風が強く吹き抜けた。



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