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咲さん

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修学旅行にて

12/05/04 コンテスト(テーマ):第五回 時空モノガタリ文学賞【 京都 】 コメント:1件  閲覧数:1935

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 もっと、幻想的な所だと思っていた。
「はぁ」
 想像と現実のあまりの差に無意識の内にため息が漏れる。

 道には石畳が敷かれ、昔ながらの長屋が軒を連ねる。道行く人々はゆったりと歩を進め、まるでタイムスリップしたかのよう…………というのを想像していたのに。
 修学旅行で初めて訪れたそこは、自分が住んでいる所と変わらない、現在の日本の風景が広がっていた。
 確かに、お寺などの古い、教科書で見る建物は沢山ある。しかし、要所は観光客であふれ、写真撮影がそこかしこで繰り広げられ、古い建物の周りには近代的なビルが建ち、道はアスファルトで舗装され、車がびゅんびゅん通り過ぎる。
 一番に感じたのは感動よりも、一人取り残されたような寂しさだった。

 修学旅行2日目。
 昨日、奈良から京都に入り、今日は朝からクラスでまとまって観光している。
 御所や金閣寺、銀閣寺などをまわり、今は清水寺。一通り回って集合写真を撮り終え、バスが待機している場所まで土産物屋が並ぶ道を歩く。
「……ん?」
 ふと、その道から分かれた一本の小路が気になった。
「ユキ、遅れるよー?」
 いつの間にか立ち止まっていたのか、クラスメイトから声がかかる。
 私は走ってバスに向かった。



 夜、宿泊しているホテルにて。
「楽しかったね! 明日はどこ行く?」
 学校での一大イベント、そこでの話題は尽きることなく、明日の自由行動の話題から始まり恋話まで、見回りに来る先生をかわしながら、夜中まで続いた。



 修学旅行3日目。
 自由行動の今日、昨日訪れた清水寺に再び来ていた。
 班単位での自由行動だが、中をどう回るかは個人でも大丈夫、という事で集合場所と時間を決め、班員と別れて私は歩いていた。
 本堂から離れ、昨日気になった小路に入る。
 入り組んだその路を進むと、突き当りに20段ほどの石段があった。
 思ったよりもその石段が急で、少し息を切らして上りきると、そこには私が修学旅行前に想像していたような古い街並みが広がっていた。

 石畳の上を人々がゆっくりと通り過ぎ、道の両脇には長屋が軒を連ね、夕日に照らしだされている。
「お姉さん、珍しい恰好してるね。どこからきたんだい?」
 その光景に感動しながら歩いていると、横から声がかけられた。
 はっとして周りを見ると、皆なぜか着物を着ていた。不思議に思いつつも、私はかけられた言葉に答えると、その人は不思議そうな顔をした。
「聞いたことのない地名だねぇ。よほど遠いところから来たんだ。疲れているようだし、休憩していかないかい?」
 私はいまさらながらに声をかけてくれた人を良く見る。
 恰幅のいいその女性は、和菓子屋の店員が着ていそうな、鶯色の着物に、紺の腰から下に着ける前掛け。頭には三角巾を付けていた。後ろにはお茶屋らしき建物があり、中で数人おしゃべりをしながら何か食べているようだった。
「そう、ですね。……何がありますか?」
 私がそう答えると、その女性はニッと笑顔になり、案内してくれた。
 しばらく、店先で出されたお団子とお茶を楽しみながら街並みに見入っていると、急に鞄が震えだした。
 中の携帯を取り出し確認すると、集合時間の10分前にかけていたアラームだった。
「ご馳走様でしたっ!」
 慌てて食器を返し、外へ出る。
「っと、……どっちだっけ?」
「あちらですよ」
「ありがとうございます!」
 礼を言い、指された方向へと走り出す。
 見覚えのある石段にたどり着いて安心し、ふと後ろを見ると、遠くにお茶屋の女性が見えた。
「……え? わっ!」
 女性に気を取られて、がくん、と段を踏み外しそうになる。
 何とかコケずに済み、ふぅ、と一息ついて後ろを見ると、そこにあったのは小さなお社。
「は……。え……?」
「みゃあ」
 足元にはいつの間にか三毛猫。すり、と私の足に頭を摺り寄せてくる。
「……っと、時間!」
 集合5分前のアラームが鳴り、不思議に思いつつも走り出す。
「あつ……」
 時刻は13時。太陽はほとんど真上に来ていて、汗ばむ陽気の中、集合場所へと向かった。


 最後に見た女性は、三角巾を外し、頭には確かに猫のような耳が付いていた。


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このストーリーに関するコメント

12/05/05 かめかめ

おきゃくさん、お代は?食い逃げ?

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