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黄色い恋人さん

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性別 男性
将来の夢 教師になって、予備校みたいに教えたい
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ヒトギライ

13/08/06 コンテスト(テーマ): 第十四回 【 自由投稿スペース 】  コメント:0件 黄色い恋人 閲覧数:1202

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常日頃から人間は増えすぎた、と思っている僕には、今日ほど望んだ日はないと思う。日本には一億三千万人もの人間が生息しているらしいけど、僕の体感的にはその三倍。しかも一様におんなじ格好して、他人の目を気にしておきながら、我関せず。
 ある夏の暑い日だった。隣の部屋の風鈴がこれでもかと風流を奏でている騒音で目が覚めた。ルーチン的に居間に降りていくと、妹が一人足りなかった。
 椅子も昨日とは一つ足りない、密度の小さくなったテーブルで朝食をとった。違和感を覚えながらも、なぜかこれが正しいような気もした。
 大学へ行くと、人間が三割ほど足りない気がした。ここまで来ると、これが正しいような気もした。しかもよく見ると、数少ない友人の性格にもほんの少しだけ違和感を覚えた。
 次の日、妹が増えていた。けれど、裸眼だった目元には、分厚いレンズがあって、茶色だった髪は、黒色のままだった。何事かと聞くと、何がとしか答えてくれなかった。
 こんな変遷を繰り返す毎日を一週間も続ければだんだんわかってきた。
 まず言えることはいた人間がいなくなったり、いなかった人間がいたりするけど、相対的に人間が減っている。
 次に、人間が変わるって言い方は変だけど、別人になる。これは僕にも言えるかもしれない。自分を客観的に見るなんてことは弱冠十九歳にはわかる由もない。
 このことから言えるのは、人間が減る方向へ、平行世界を渡り歩いているのだと思う。それなら全部納得がいく。納得がいったところで、解決にはなんの役にも立たないけど。
 むしろこの世界自体嫌いではない。自分が人を殺し歩いているわけではないし、世界が人間を減らしているならそれは仕方がないことだ。
 幾月か経った頃に、僕の周りには片手で数え切れてしますくらい、人間は減っていた。もうあと数日もすれば、人はいなくなるだろう。明日にでも僕はやっと一人になれる。
 次の日、まだ手と足が動かせた。今日こそ、僕の番だと思ったのに。
 街に出たら、誰もいなかった。違う意味で一人になった。この時人類で初めて独裁スイッチを使ったのび太くんの気持ちを理解しただろう。
 人並みに悲しんだけど、人一倍に喜んだ。このまま何をして生きようか。とりあえず、遠足前夜の小学生みたいな気持ちで、歩き回った。
 あたりが暗くなってきた。明日も、明後日も、こんな生活が続くんだ。今日はおとなしく寝よう。

 朝起きたら、また人間が増えていた。
 昨日作った擦り傷は残っているのに、周りだけは、元に戻っていた。
 でもよく考えたら、人間が嫌いな僕は、移った世界の先にもいたわけで、もしかしたら、人間が増えていく方向に移った僕もいるかもしれない。そんな僕は本当に死んでしまうかもしれない。さすがにそれは心が痛むので、なんだか今のままでいいかなって思った。この世界を諦めようって。


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