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梅子さん

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にげられないかみさま

13/08/02 コンテスト(テーマ):第三十七回 時空モノガタリ文学賞【 神 】  コメント:5件 梅子 閲覧数:1582

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私はまだ高校3年生。陽介さんは大学4年生。
私たちのはじまりはそんな昔だった

陽介さんは私の家庭教師
優しくて大人で何でも知ってる陽介さんは
私のヒーローだった

私は陽介先生が大好きで
先生を想って必死になって勉強した

先生のおかげでどんどん成績は伸びて
もう先生は私の中でかみさまのような存在になった


なのに
受験当日
私は大失敗した

涙が止まらなかった

夜、陽介先生にメールしたら
「今から会える?」
なんて言われて

会いたくなかった

先生の目の前で泣いてしまうなんて
どうしてもいやだった

でも会いたかった

待ち合わせの公園
先生は自転車で来てくれた
こんなに寒いのに

忘れていたのだ
先生の家がうちから駅3つも離れていること

そんなことにも気付かない私の愚かさと
そんな私のために来てくれた先生の優しさと

受験の報告をしたかったのに
涙があふれて

涙と一緒に溢れてしまったのは
好き
という

言ってはいけないと
このまま閉まっておこうと思っていたことばだった

陽介先生は私のかみさまで
かみさまに好きなんて言ってはいけないと

でも受験のこと、先生への気持ち
いろんなものが綯い交ぜになって
私は何も言えなくなって

そんな私を引き寄せて
腕の中に閉じ込めて

「おれもすきだよ」

とひとことくれた陽介さんは
やっぱり私のかみさまだった



それから春になって

私は大学生
彼は社会人になった

あの夜の公園の後
ちゃんと付き合いだしたのは
私の受験が終わってからだったから

私たちははじめから遠距離恋愛だった


まめな人ではなかったし
社会人なので連絡はぽつりぽつりしかできなかったが
それでも私は陽介さんのことが大好きだったし幸せだった


ゴールデンウィークになって
初めて彼のところに遊びに行った
初めてのデートだった

一生懸命にバイトをした
交通費と
彼は寮暮らしだったからホテル代も必要だった

久しぶりに会う彼はやっぱり素敵で大人で楽しくて

幸せだった

次の日起きたら
今日は会えないと連絡が入っていた

悲しかったけど
社会人は忙しいのだと
言い聞かせた

かみさまと付き合えている

その幸せを思うとそのくらいなんでもなかった


夏休みになって
また彼のところへ遊びに行った

その間も連絡は多くはなかったが
私の彼への気持ちがしぼんでしまうことなんてなかった

夏休みは少し長く彼のところにいたかったから
その分がんばってバイトに励んだ

彼が会いたいと言ってくれる

それだけでいくらでもがんばれる気がした


夏は1週間彼の寮の近くのホテルで過ごした
そのうち会えない日も何日かあったが
仕方ないのだと
一人でそれなりに過ごした


そんな1週間の最後の日

見てしまったのだ

彼と
女の人と
二人が仲良さそうに陽介さんの寮に入っていく姿


男子寮だときいていた
今日は仕事が長引いたと


ホテルに帰って
ひたすら泣いた

裏切られたと
もう別れてやると


次の日

勇気を出して
「別れましょう」
と送った


女の人といたのを見たことは
どうしても伝えられなかった

別れの決定打を打てない自分に本当に情けなくなった


いつも通り
夜になってきたメール


「どうして?会えなかったの怒ってる?」

「すきだよ」


かみさまの言葉に
私は抗うことなんてできなかった

ああ何か事情があったに違いない

そんなはずはないと頭ではわかっているのに


「変なこと言ってごめんなさい。私も大好きです。」


気持ちは言うことをきかなかった


そのあとも私たちの関係は同じテンポで続いた

連絡は少しだけ
彼に会いたいからバイトした
会いに行っても会えない日もあった

そうして三年

彼があの女の人を家にあげていること
あの女の人とたくさんメールしていること
私に送られなかったあのジュエリーショップの包み

たくさんのことを知ってしまった

それでも今まだ私は彼の隣で眠っているのだ


私が涙するたび

かみさまは優しく囁く

私は信じるしかないのだ

だって彼は

私のかみさまだから


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このストーリーに関するコメント

13/08/04 涙腺

非常にまとまっていて面白いです。
言葉の選び方がとても上手い。私にはとても出来そうにないです。
描写の一つ一つが綺麗で、尊敬に値します。
これからの作品が楽しみで仕方がありません。
本当に楽しく読ませて頂きました。

13/08/04 梅子

>涙腺様
コメントありがとうございます。
私にはもったいないお言葉ばかりです。
作品として作ったのは初めてですのでこれからもっと美しい作品を書き上げていければと思います。
感想いただき本当に嬉しかったです。ありがとうございました。

13/08/06 青海野 灰

とてもよかったです。もどかしく、苦しく、個人的に好きな作品です。
ぽつりぽつりと零すような句読点のない言葉が、詩のようにも思えました。
騙されていると薄々感じながらも、縋ってしまう弱さ、そこからの盲信、とても離れられない引力、それらをラストの二行が集約して物語っているように感じました。
ただの聖人君子ではなかった「彼」の存在が、いいスパイスになって物語を引き立てていますね。

13/08/07 梅子

>青海野灰様
コメントありがとうございます。
主人公が昔を思いベットの上でゆっくりを思考を巡らせていることを思いながら書きましたらこのような文面になってしまいました。そのような雰囲気がうまく伝わっていればなと思います。
初めて書いた作品を好きだと言っていただけてとても嬉しいです。
ありがとうございました。

13/08/10 梅子

>凪沙薫様
コメントありがとうございます。
全体の雰囲気を重視してしまって描写が少なく淡々としすぎてしまったかなと感じていましたのでそのように言っていただけて嬉しいです。
ありがとうございます。

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