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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
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颯太の夏休み

13/07/30 コンテスト(テーマ):第三十六回 時空モノガタリ文学賞【 無口な人 】 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2643

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 夏という字に、悪魔の魔、ちょっと恐ろしい名前を持った夏魔(なつま)。彼女は颯太のオフィスで働く優秀な派遣スタッフだ。服装も髪色もいつもツートンカラー。いかにも派手で活発そうだが、その外見に反し、立ち居振る舞いはおしとやか。もちろん口数は少ない。
 コミュニケーションは社内メールのやりとりと、流し目だけでこなす。そんなミステリアスな夏魔に恋心を抱いてしまった颯太、断られて元々、夏休みにどこかへ旅行しようと誘った。
 結果は意外にも、「山に別荘があるの、そこへご招待するわ」とあっさりメールで返ってきた。

 彼女いない歴五年の颯太、これは千載一遇のチャンス、やっと運命の女と出会えたかもしれない。もう浮き浮き気分で、夏魔が待つ別荘へと訪ねた。
 しかれども……オーマイゴッド!
 これが最初に発した言葉だった。
 夏魔がいう別荘、それは別荘ではなかった。手短に言えば、廃墟だ。だが、約束は約束、颯太はドアをノックし、玄関へと入った。するとそこに、多分何かの化身か、美姫な夏魔が妖しく微笑み立っていた。
 颯太にぞくぞくと戦慄が走る。そんな颯太の手を、夏魔がぎゅっとつかむ。そして颯太を中へと誘導する。だが夏魔はなにも喋らない。それでも暖かくもてなしてくれた。二人は透明な時間の流れの中で食事をし、ワイングラスを傾けた。
 颯太は元来騒々しいのは苦手。そのせいか、夏魔とのこの幽寂な一時、蜘蛛の巣だらけの廃屋ではあるが、まるで繭の中にいるような心地よさを感じた。
 そして深夜、それは狼の遠吠えが聞こえてきそうな夜だった。夏魔の甘美な誘いで、颯太は火照(ほて)る女体に身体を重ね合わせた。
「あっ」
 夏魔の喘ぎは一声だけだった。しかし、それは颯太との運命を受け入れた夏魔の決意、颯太はそう解釈した。

 そんな夢幻の夜が白々と明け、目覚めにと颯太は庭へ出た。そしてキラキラとした朝の輝きの中に光彩放つ蜘蛛を見つけた。黒と黄の縞模様、まさに威厳があり美しい。その奇抜さに見入っていると、背後から夏魔が声をかけてくる。

 その蜘蛛ね、コガネクモっていうのよ。
 メスは大きくって、性格は貪欲で……、獰猛なの。
 巣の中心で、頭を下向け、X字状に二本ずつ足をそろえてるでしょ。
 昆虫が網にかかると、その長い足をバネにして、獲物に瞬時に飛びかかり、大きな牙で噛みつくわ。
 あとは糸で巻き付けて、毒でドロドロに溶けるのを待つの。それからよ、チューチューと吸い尽くすのよ。

「へぇー、そうなんだ」
 颯太は夏魔の説明に感心するしかなかった。
 それにしても夏魔は息もつかず一気に喋った。こちらの方が予想外で、驚きだった。
 夏魔は寡黙な女性のはず。それがなぜ突然に……、こんなにも饒舌に、そして熱く、しかも普段の生活にはあまり関係のない蜘蛛のことを?
 颯太は不思議で、あごに手を当てる。その颯太の背中に、今度はトーンの落ちた夏魔の囁きが覆い被さってくる。
「そのご婦人、私と一緒で……、無口なのよ」

 えっ、蜘蛛が無口? そりゃそうだよなあ。
 だけど、一緒って? 夏魔はやっぱり……怪異な世界に生きる女なのか?
 ひょっとすれば、このメス蜘蛛と……親戚?
 こんなことを思い巡らす颯太、身体がカチンと固まってしまった。それでも確認しなければならないことが一つある。
「このご婦人のダンナは、どこにいるの?」
 颯太は振り返ることはできず、肩越しに訊いた。すると夏魔は無言で、細い腕を颯太の首に絡ませてきて、鋭利な指先で差した。颯太がそこへ目をやると、五ミリほどの小さく冴えない蜘蛛がいた。

 えっえー、夏魔がもしメス蜘蛛なら……、夫婦になったとしたら、俺はこの冴えないオス蜘蛛になるってこと?
 これは充分あり得ることだ。
 うーん、恐いし……、このまま逃げてしまおうか?
 颯太の背筋が凍る。
 そんな時に、「夏魔は私の娘よ。獰猛で無口だけど、愛は深いから……、結婚してやって」と。

 えっ、ご婦人が……夏魔のお母さん?
 颯太は、目の前のコガネクモが囁いたような気がして思わず呟いた。そして、それとは別に── だけど、蜘蛛って喋るんだ! と叫んでしまう。
「颯太さん、なにを一人悶えてるの。きっと毒がまわってきたのね。さっ、朝食にしましょ、大好きなドロドロスープよ」
 颯太はこんな夏魔の囁きに、戦々恐々。だが思い切って振り返った。するとそこには、一見優しそうに笑う夏魔がたたずんでいた。

 これで颯太は、ホッ!
 いや、ゾォー!
 はたまた、フシギー!
 もう、わけわかりませ〜ん!

 とどのつまりが、今年の颯太の夏休み、見事に夏魔に絡め取られてしまったのだった。


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このストーリーに関するコメント

13/07/30 鮎風 遊

みな様へ

二、三日前に、この「颯太の夏休み」を一度投稿させてもらいました。
多くの方に閲覧して頂いたのですが、作品として満足できない箇所があり、一旦削除させてもらいました。

手直しをし、再度投稿させてもらいました。

自分ではさらに奇々怪々さを追求したつもりです。
よろしくご理解ください。

13/07/30 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

ミステリーな物語、モンスターナイトですね。
夏魔は「夏の魔物」だったのでしょうか?

この後の颯太の運命が気になりますね。

13/08/12 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメント、ありがとうございます。
モンスターナイトをコミカルにしてみました。
よろしく。

13/08/18 鮎風 遊

みな様へ

この超短編小説に画像と音楽を付けてみました。
フォト音(on)小説と私なりに呼んでますが、こんなジャンルを開いてみました。
よろしかったらお楽しみください。

http://www.youtube.com/watch?v=cCPuIThRoB8

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