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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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月の反乱

13/07/22 コンテスト(テーマ): 第十三回 【 自由投稿スペース 】  コメント:4件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:1766

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 ふと月は考えた。
 わたしはなぜ、地球のまわりばかり、まわっているのかしら。
 みんなは地球を、美しい星だという。わたしからみれば、ずいぶんキザな惑星だ。青い海にかこまれた大陸がどこか、リーゼントカットにみえて、あれでタバコでもくわえればいっぱし、ヤンキーといったところだ。
 いつもそばにいるので、地球のアラはよくわかる。
 この宇宙に、生物のいるのはうちだけだと、おさまりかえっている。太陽系の他の星はみな、なにもない、不毛の惑星ばかりじゃないかと蔑んんでいるのだ。
 ああ、もうこんなひとりよがりの地球からは離れたい。
 月はため息まじりにつぶやいた。
 いったいどれだけのあいだ、この地球の引力にひっぱられて、おなじところをぐるぐる意味もなく回転しつづけてきたのか。
 考えたただけで、腹がたってきた。
 地球から離れるには、どうしたらいいのだろう………。
 月は思案をめぐらした。
 が、ひとりで考えるには、限度があった。だれか、知恵を貸してくれるものはいないだろうか。
 地球のすぐむこうには、火星がいた。
 それで月は、火星にもっともちかづくときをまって、よびかけてみた。
「火星さん、ちよっと 頼みがあるんだけど」
「おや、あんたは、地球となかよしの月じゃないか」
「いやだ。なかよしなんかじゃないわ。その反対よ。わたし、なんとかして地球から離れたいの。どう、力を貸してくれない」
「それはかまわないけど、おれ一人の力じゃなあ。なにせ太陽系でも、小柄な部類に属するのでね。あの巨体の木星だったら、頼りがいがあるんじゃないか」
「わたしあのひと、地球のつぎにきらいなの。だっていつも、えらそばっているでしょ。わしがいないと太陽系じゃないとばかりに。たかがガスのかたまりのくせに」
「ああ、恐い。じゃ、金星に応援を頼んだらどうだ。あいつなら、気性もさっぱりしてるし、他人おもいのいいやつだよ」
「それはいいかもね」
 うなずくと月は、こんどは金星に最接近するときをまって、相談をもちかけた。
「金星さん。お願いがあるの。あなたと火星さんの引力をあわせて、わたしを地球の軌道からはずしてくれないかしら」
「そりゃかまわんが、あんた、地球から離れていったい、どこへいくつもりなんだね?」
「自分探しっていうのかしら、しばらくひとりで、すきなように宇宙をさまよっていたいの」
「太陽系からどんどん離れていって、そのうちブラックホールにでもつかまって、まっ暗闇のなかに落ちこんでもいいのかい。いったん落ちたら二度と出てこれないんだよ」
 あくまで金星は、月のためをおもってそういった。
「おどかさないでよ。いいわ、もう頼まない。わたしにだってすこしは、自力というものがあるんだから」
 そこで月はうんとふんばって、じぶんの力で地球の軌道からの脱出をはかった。
 それをみていた火星が、なにやらこわばった顔で声をかけた。
「いま地球の上は、海は大荒れ、地上はすさまじい嵐にみまわれて、大変なことになっている。その原因は、きみと地球の距離に変化がおきたからだ」
「まあ、それは、それは」
 月は地球をふりかえった。
 そして火星のいったとおりのことがおこっていているのを知って、表情を曇らせた。
 非力なじぶんでも、地球に影響をあたえている。
 月はそのことを悟ると同時にもとの位置にもどった。
 時とともに地球がもとどおりの姿になるのをみて、ほっとした。
 なんといっても地球とは、ふるくからの相棒なのだ。
 それをみた火星と金星がおかしそうに笑うと、周囲をまわっていた惑星たちもみないっせいに笑いはじめた。
 いつもおなじところをまわりつづけているかれらにとっては、そんな月の反乱も、ちょっとした気晴らしぐらいにはなったらしかった。
 ひさしぶりに、太陽系に明るさがもどった。


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このストーリーに関するコメント

13/07/24 草愛やし美

W・アーム・スープレックスさん、拝読しました。
そうですね、月だってこんな風に考えているのかもしれませんね。惑星はいつも同じ位置にいてという、既成概念でしか人は思ってないものですが、もし、これが、現実だったら、恐ろしいことになりますね。
着眼点がとてもユニークで面白いです。月の地球に対する見方は、まるで女性のそれみたいで、そんなことにちっとも気づいていない地球は、男──そう思えて、なるほどなあなんて、頷きながら読み進んでいました。面白かったです。

13/07/25 W・アーム・スープレックス

草藍さん、こんにちは。コメントありがとうございます。

同じところをいつもぐるぐるまわってばかりいる星たちも、たまには嫌にならないかなと思ってこの作品ができました。もしも宇宙のすべての星がそんなことを考えたら………たしか黄金期の米SFにそんなテーマのものがありましたね。

13/07/25 平塚ライジングバード

W・アーム・スープレックスさま、拝読しました。

素晴らしい発想ですね。興奮して読ませていただきました。
人以外を主人公にすることさえ難しいのにまさか星とは…。

突飛な設定をキャッチ―なエンターテインメントに仕上げている
その技量に感服いたしました。
ありがとうございます☆

13/07/26 W・アーム・スープレックス

平塚ライジングバードさん、コメントありがとうございます。

かぎられたスペース内で、やれるかぎりをやってやれと思ううち、月がものをしゃべり、星たちが息づきはじめました。同じところばかりまわっていることが嫌になった月が、地球から離れようとしたのと、どこか似ているかも知れません。

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