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satukiさん

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性別 男性
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僕の思考と彼女の行動

13/07/16 コンテスト(テーマ):第三十六回 時空モノガタリ文学賞【 無口な人 】 コメント:0件 satuki 閲覧数:1342

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彼女は可愛い。
歳が五つ離れていること以外は、僕にとってネックになっていることはない。

ある日、彼女に思い切って僕の気持ちを伝えた後、不意にキスをしたくなった。
顔を近づけていくと、それを悟ったのか彼女は突然口臭の確認をし始めた。
僕はフリスクを二、三粒口に含んで、向こうを向いて口臭チェックをひたすらしている彼女の顎を親指と人差し指でつまんでこちらを向かせてキスをした。
最初は必死に唸りながら僕の腹を押していたけど、ミント味のフリスクを彼女の口の中にすべり込ませて、舌をからませながら溶かしていくと、彼女の抵抗は弱くなった。

優しく口に広がるミントの味に恍惚とした感情を覚え、僕らは人目も気にせずキスをした。

しかし、ある日僕は大きな失態を犯してしまった。
彼女はよく僕の住んでいるアパートに泊っていた。
その日の朝、ぼんやりした視界の中に彼女が現れて、ぼさぼさになっていたショートヘアに安堵感を覚えてリラックスしてしまっていたのだろう。
小さな背であくびと背伸びをしている彼女は、実年齢よりも若く見えてしまうだろう。
そして僕は彼女に昨夜のことを口にしてしまった。

『いびきかくんだね。』

その一言が彼女の態度と表情を一変させてしまった。

『そりゃぁ、いびきだっておならだってかきますよ。』

ブスッとした表情で、朝一番の不機嫌な顔を僕に見せて、僕らは無言のまま大学に行った。
その日からだろう。
彼女が僕の理想の女性として振舞うのを止めてしまった。
実に名残惜しい気持ちに支配されながら、机をはさんで、机の上のつまみの柿の種をつまむ彼女の顔を見ていた。

ポリポリ。ポリポリ。

しかしなんだろう。この虚しさは。
一変しすぎだろう。おならやいびきを聞かれることは、女性にとって致命傷になってしまうのだろう。
今まで見せたことのない無表情で、ピーナッツを口に放り込む彼女を見ていると、あの日の失態を悔いてしまう。

「何?」
「別に。」

こんな会話が八割を占めている。
女性が何故好意を持つ男性に対して、積極的に印象を良くするのか、なんとなく分かった。
その方が都合がいいのだ。
誰だってそうだろう。都合のいいように解釈して、都合のいいように行動していれば、誰も迷惑をかけずに、誰も不平を言わない。
そもそも不平とは何だろう。
男尊女卑。男性優位社会。色々あるが、その経過を経て、女性はある意味革命を起こした。一番分かりやすいのが女性雇用促進だ。
しかし、その言葉を訴えていられる立場になれた女性は何人いるだろう。多く見積もっても、世界中の女性の五割くらいだろう。
それを目指して女性は努力するし、結婚して子供を産むというだけの人生に潤いを生み出したのかもしれない。
それもこれも、隷属にも似た女性に対する立ち位置を与えた社会の問題なのかもしれない。
しかし、女性が働くということを平等に近付くという考え方には疑問に思う。
働かなくても基本的には女性も男性も平等だ。
それを働いているからと大きく出ていたステレオタイプな男性が多かったせいで、女性にも同じ思考をさせてしまったのだろう。

不意に額に冷たい感覚が広がった。

「戻ってきた?」

冷えたビールを僕の額に当てて、覗き込むように僕を見上げていた。
可愛いと思った。
それだけでいいと思った。
そっと彼女の額にキスをする。

「なにすんのよぉ!?」
「嫌だった?」
「別にそんなことは、ないけど…。」

今日は彼女のご機嫌をとろう。
以前、僕のご機嫌をとり続けていた彼女に対するお礼ということにしよう。きっと彼女は不審に思うだろう。
そういう時はこう言ってあげよう。

君が好きだから。僕の側にいてくれるから。

それだけで通じ合っているように思う僕は、きっととてもバカなのかもしれない。でも、それでいいと思う。

男性は女性よりも秀でているのではない。
男性の方が、その役割を担いやすかっただけなのだ。
女性にしてもそう。
女性の方が、その役割を担いやすかっただけなのだ。

後ろに倒れこむようにして彼女にのしかかると、久方ぶりに見せた恥じらいの顔が、ひどく懐かしく、嬉しさがこみ上げてくる感情を自覚した。

「大好きだ…。」

そうして彼女は瞳をうっすらと閉じて、僕の唇にキスをした。


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