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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

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彼女が無口な理由

13/07/15 コンテスト(テーマ):第三十六回 時空モノガタリ文学賞【 無口な人 】 コメント:14件 光石七 閲覧数:3178

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 高校生活がスタートして二ヶ月が過ぎた。初めのうちは同じ中学出身者同士で固まっていたけれど、今はもう新しい仲良しグループができている。休み時間にダベったり、お弁当を一緒に食べたり、買い物に付き合ったり、私もそれなりに楽しんでいる。
 クラスの中にどのグループにも属さない女子がいた。琴田さんだ。かわいい顔をしているのに、大人しくてあまりしゃべらない。話しかけても簡単な返事を返すだけ。授業で同じ班になっても自分から話すことはないし、会話は必要最低限。休み時間も一人で過ごしている。同じ中学から来た生徒がいないようだけど、誰とも親しくなろうとしないのはひどく浮いている。ミステリアスな雰囲気にときめいてる男子もいるみたいだけど。
「なんかお高く留まってる感じだよねー。『私はみんなとは違うのよ』って言いたいわけ?」
「目立ちたいだけじゃない? 男子の気を引くために孤独な美少女を演じてるとか」
「それって自分のルックスに自信アリってこと? 性格悪ッ」
みんな琴田さんのことを好き勝手に噂している。女子がそんな風に見るのは仕方ないけど、私はちょっとかわいそうだという気持ちもある。一人ってすごく辛いのだ。昔いじめられて仲間外れにされたことがあるから、私はその苦しさがわかる。好き好んで一人ぼっちでいる人はいない。琴田さんが一人でいるのは何か理由があるんじゃないだろうか。
 さらにひと月が過ぎ、バスケ部の2年生が琴田さんに告ったという噂が広まった。でも、琴田さんは交際を断ったらしい。結構イケメンで人気のある先輩だったので、多くの女子が琴田さんを非難した。「何様のつもり?」というわけだ。OKしたらしたで、絶対悪く言うと思うけど。それを機に、琴田さんへのいじめが始まった。
 教科書を隠したり、体操着を破ったり、「キモい」とか「死ね」などの言葉の暴力、ネットの掲示板やSNSを使って琴田さんが援交や万引きをしてると吹聴したり、かなり陰湿だ。同じクラスの5人の女子が特に中心になっていじめている。私は関わらないしやり過ぎだと思うけれど、琴田さんに味方する勇気もない。いじめの矛先が自分に向かうのが怖い。でも、琴田さんは何をされても言い返すことも先生にチクることもしない。悲鳴を上げたり相手を睨んだりすることはあっても、何故か言葉を飲み込んでいる。
 いじめはエスカレートしていく。プールに突き落として上がってこられないようにしたり、無理矢理裸にして写真を撮ったり、ほとんど犯罪だ。今日は体育倉庫の裏でリンチされているのを見かけた。相手はいつもの5人。琴田さんは顔が腫れて口も切れ、制服もボロボロになってあちこち血が出ている。私はハラハラしながらも動けず、物陰からこっそり見ていた。
「ここまでされても何も言わないなんて、アンタ口無いの?」
リーダー格の立原さんが笑う。
「だんまりが余計ムカつくのよね。泣き言くらい言えば?」
日堂さんが琴田さんの髪の毛を引っ張った。
「……じゃあ、言おうかな。心を……入れ替えるつもり……ないみたいだし」
琴田さんが途切れ途切れに言った。
「あはは、珍しー。琴田が二言以上しゃべるのって初めてじゃね?」
「しゃべってもムカつくのは変わんないけどね」
いじめっ子たちがはやし立てる中で、琴田さんははっきり言った。
「あなたたち全員、今日体がバラバラになって死ぬ」
「……はあ?」
一瞬全員がキョトンとしたけど、すぐにリンチが再開した。
「ふざけたこと言ってんじゃねーよ!」
「死ぬのはアンタのほうだって」
私は見ているのが辛くなって、その場を離れた。
 翌日、ホームルームで先生が信じられないことを言った。
「昨日の夕方、立原と日堂、伊地川、鶴海、押田の5人が事故に遭った。トレーラーに轢かれて、5人とも亡くなったそうだ」
琴田さんをいじめてた5人だ。遺体は腕や足がちぎれてひどい状態だったらしい。私は昨日の琴田さんの言葉を思い出した。彼女の言った通りになったのだ。偶然とは思えず、背筋が寒くなった。
 中心の生徒がいなくなったことで、琴田さんへのいじめは下火になった。彼女の態度は以前と変わらず、自分から話すことはない。
「知ってる? 琴田さんの家って神社なんだって」
昼休みにこんな話を友達から聞いた。
「なんか言葉の神様を祀ってるんだってさ。その割に琴田さんってしゃべんないよね。ご利益あるのか、ビミョー」
みんな笑ってたけれど、私は笑えなかった。琴田さんのフルネームは琴田茉菜。……言霊? 言葉には魂が宿る、力があるって意味だ。琴田さんの言葉に本当に力があるとしたら……? だから不用意なことを言わないよう、普段から人を避けて無口なんじゃないだろうか。あの5人は琴田さんが許せる範囲を超えてしまったから……。
 私は琴田さんを敵に回すのだけはやめようと心に決めた。


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このストーリーに関するコメント

13/07/16 かめかめ

ご利益じゃなくて、呪いですね(´・ω・`)……

13/07/16 泡沫恋歌

光石七さん、拝読しました。

これは怖い話ですね。
陰陽道の言霊の力でしょうか?

喋ったことが本当になっちゃうなんて・・・
やっぱり無口がいいです(`・ω・´)ハイ!

13/07/17 光石七

>かめかめさん
コメントありがとうございます。
投稿してから言霊の神社が実在すると知り、ちょっとびっくりしました。呪いではないようですが。
主人公の推測はともかく、言葉に力があるのは確かでしょう。
良い言葉を使ったほうが運気は上がるとか。

>泡沫恋歌さん
無口よりも良い言葉を使うほうがよさそうな気もしますが……(苦笑)
陰陽道のことは詳しくありませんが、言葉で天候を操った人の言い伝えはあるようですね。
味方になってくれればありがたい存在ですが、怖くもありますよね……
コメントありがとうございます。

13/07/18 草愛やし美

光石七さん、拝読しました。
報復に当たりますが、ここまでの苛めを受けて自殺する人もいるのが、現実に起こっている社会です。苛めへの警告のために、この作品はとてもよいと思います。
残酷な言霊の呪いであろうとも、それに匹敵する苛めだと思います。苛めはエスカレートします。確かに無口だとそれが助長される傾向は否めませんが、だからこそ、人に悪いことをしたら、大なり小なり罰が下るという教訓をすべきだと私は思います。
昔も苛めはありましたが、今もそれが無くならないどころか、陰に回って酷くなっているとも聞きます。ある意味、世界中の人種差別なども苛めだと思います。
地獄極楽が存在していて、悪いことをしたり嘘をついたり、他人を陥れたりしてはいけないと私は信じてますが、そういう教育も大事ではないかと思う今日この頃です。

13/07/18 光石七

>草藍さん
いじめは絶対にダメだし、人の命はもちろん自分の命も勝手に奪ってはいけない。
でも、何故かと問われれば、確たる根拠で答えられる人は少ないと思います。
最近の子供は「罰が当たる」で納得してくれるでしょうか……?
道徳教育にはいい意味での宗教心が必要だと私も思います。
この話の登場人物はみんな正しくはないですね。いじめた人も、呪いの言葉を吐いた琴田さんも、傍観した主人公もクラスメイトも……
深いコメント、ありがとうございます。

13/07/18 平塚ライジングバード

光石七様、拝読しました。

彼女が無口な理由がよく分かりました。
言霊のエピソードは面白かったです♪

それと同時にいじめについて考えさせられました。
コメントにもありましたが、道徳教育には宗教心が必用なのかもと
少し思いました。
東北のある地方では、新しい町作りの際に敢えて手付かずの森を残し、
子供の立ち入りを禁じているそうです。
大人は子供に、その森には妖怪がいて、悪いことをすると森の妖怪に
食べられると教えるらしいです。
畏れの教育ですね。要するになまはげみたいなものです。

すみません脱線しすぎました( ̄▽ ̄;)
次作も期待しています☆

13/07/19 光石七

>平塚ライジングバードさん
脱線、大歓迎です♪
目に見えないものを畏れる心がないと、教育は難しそうですね。
人が見てないからいいや、では困るし。
ブラックな言霊の話にするためにいじめを話の中に入れたのですが、シャレにならない世の中なのが悲しい……
コメントありがとうございます。

13/07/21 芝原駒

拝読いたしました。
2000字との闘いであったのではないかと思える濃縮された作品でした。説明口調に終始することなく読みやすかったです。
彼女の発言が現実になったのか、あるいは別の何かがあるのか。長編の冒頭としても有効な作品だと思いました。

13/07/21 光石七

>芝原駒さん
丁寧に読んでくださり、ありがとうございます。
当初は主人公と琴田さんが友達になり、主人公だけ秘密を明かされるという展開を考えていました。字数的に無理だったので、この形に変えました。
読みやすかったと言っていただき、うれしく思います。

13/07/30 そらの珊瑚

光石七さん、拝読しました。

現実には因果応報という言葉なんて本当にあるのだろうか、と、いじめ報道があるたび思ってしまいます。なのでこのお話を読ませていただき、人間の心理としてそのあたりがすっきりしたというか。
人知を超えた力を持つ琴田さんは一歩間違えば悪魔にもまた神にもなってしまえる。無口でいるその理由の裏で、苦悩しているのでしょうね。

13/07/30 そらの珊瑚

すみません、たびたび。
このお話には三種類の無口な人が描かれてるのでは、と思いました。
琴田さん、見てみぬふりをしている私。
そして無口というかもう話すことができなくなった加害者。
三者三様にそれぞれ罪深いという点が共通項のような気がします。

13/07/30 光石七

>そらの珊瑚さん
書いた本人よりも深く読み込んでくださり、感激です。
いじめは深刻な問題ですよね……
琴田さんの気持ちは敢えて書きませんでした(字数の問題もありますが)。
三種類の無口、珊瑚さんのコメントで気付いた次第です(苦笑)

>OHIMEさん
過分なお褒めの言葉、恐縮です。
琴田さんの無口しか意識してなかったので……
今の高校生がどんな感じなのかよくわからないのですが、リアルに感じていただけたのなら幸いです。

13/08/09 光石七

>凪沙薫さん
ビビリのくせにこんな話ができてしまいました(苦笑)
人間って一歩間違えば怖い存在ですね。
下手な怪談より背筋が寒くなりそうです。
コメントありがとうございます。

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