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実さん

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名探偵コナソ

13/07/07 コンテスト(テーマ):第三十四回 時空モノガタリ文学賞【 探偵 】 コメント:2件  閲覧数:1648

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 おいらは名探偵コナソ。名探偵というからには何でも推測するのが得意で、例えばA子ちゃんが深夜ひっそりと自宅から離れて彼氏の家へ飛んでいくときも、家を出る数日前からそのことを推測できたりするんだ。そんなのわかるわけないって思うかもしれないけど、人の思いっていうのは突然起こるものじゃなくて、徐々に、無意識の領域では理論だって進んでいくものなのさ。
 衝動だっておんなじさ。あれは感じることのできない領域で衝動の引き金がゆっくりと歯車を動かすように最終的な行動へと導くもんなんだ。仮に君が突然りんごを食べたいって思ったって、それは実は心理的なトリックにすぎなくて実際には視覚の隅にりんご果汁の入った飲料のCMや、りんごを連想させる匂い、あるいはりんごを連想させる思い出なんかも引き金になって今まで知覚できてなかった欲求が呼び起こされるものなんだ。
 つまりこういう原理を使えばすべては、今地球の反対側ブラジルで起こっている出来事や未来さえも実は論理的に導くことができるもので、おいらはそういうものさえ推測することができるからこそ名探偵って呼ばれてるのさ。

 何か納得のいかない表情をしているみたいだけど、おいらが本当にたまたま偶然推理が必要な難解な事件に毎週のように出くわしていると思っているのかい? そう。今君に話したとおり世界のすべてはほぼ予定調和で動いているものなのさ。人を殺したいと思う動機だって、被害者に対する恨みというものがなければ生まれないものなんだし、無差別殺人っていわれるような被害者に恨みのないような殺人でさえ、実は社会に対する恨みっていう動機から生まれているもので結局は突発的に起きた事件なんかじゃなく論理的に推理可能な事件なんだよ。
 そう、おいらはその嗅覚が鋭いってわけなんだ。つまり人が恨みを抱いて当事者を眺める視線や、イライラとしたような仕草、何かを企んでいるときの呼吸の間、自然には起こり得ないそういった人為的な不自然さにおいらはとても敏感なんだ。人っていうのはいくら隠そうとしたところでその思考そのものが表情や仕草、呼吸のリズムに出てしまうものなのさ。

 君はまだ納得していないみたいだね。だからって人を殺したいほど憎んでいる人に毎週出くわせる筈がないって。そりゃあ、そうかもしれない。だってこの世界に生きている大抵の人は殺人事件なんかに一生出くわすことはないんだからね。でももうその考え自体が違うんだ。

  人を殺したいって思わない人間なんていないんだよ。

 今君はとても気味悪がっている。でもこれは事実さ。殺したいっていう動機っていうのは死にたいっていう動機と裏表なんだ。じゃあどうして殺したいっていう心理に行き着くかっていえば、それはそこまで追い込まれるからなんだよね。期待されているのにその期待に添えなかったり、懸命に努力しているのにそれが報われなかったり、善意のつもりが相手に悪影響を与えたり。世界の大抵の出来事は人の思いとは違う形で現れるものなんだ。そういう時行き場のない不満や苛立ちっていうのは相手か自分かどちらかに向かう。必ずどちらかに向かう。相手に向かえば殺したいと思うし、自分に向かえば死にたいと思う。
 世界っていうのはそういうものなんだ。だから人を殺したいっていう動機のない人間に出くわさない可能性はゼロなんだ。人がいるところに殺人は起こる。

 君はまだ腑に落ちていないみたいだ。そう。だからっておいらがいる目の前で都合良く殺人が起こるわけないじゃないかって君は思ってる。それは当然の疑問さ。だってそこからがおいらの使っているトリックであって、おいらの本業なんだから。
 つまりおいらは人を殺させるテクニックを持ってるんだ。人が無意識のうちに隠し持っている恨み辛みを一気に噴出させて殺人への衝動へと駆り立たせるテクニックを持っているんだ。おいらは一ヶ月前からテレビ局と打ち合わせをしてターゲットを決めそいつの人間関係を洗いざらい調べていくんだ。するとすぐに人間関係の不和は見つかるものさ。それから先述の心理的トリックを使いながら段階的に殺人への衝動を作り上げていく。この過程っていうのは本当にスリリングなものさ。だって最後には「俺が人を殺すのは避けられない運命だ」ぐらい思い込むようになるんだもの。
 あとは人を殺す条件が整った現場においらたちも偶然を装って行けばいい。そうすると、人を殺すって決心した人間は、条件がすべてそろった現場でそれを自然に決行するものなのさ。

 おっと、長話がすぎちゃったね。おいらはもう次の収録の準備をしなくちゃいけないんだ。もちろん次の心理トリックも決めてあるよ。ネクストコナソズヒントって毎週やってるでしょ?


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このストーリーに関するコメント

13/07/07 光石七

拝読しました。
まさか、こんな裏があったとは……
子供は見ちゃいけないのでは?(笑)
全く殺意のない人はいない、ある意味正しいですね。
誰だって罪を犯す可能性はあるんですから。

13/07/08 

>光石七さん
読んでくださってありがとうございます。
確かに子供は見ちゃダメですね。
「探偵」と聞いて名探偵コナンしか思い浮かばなかったのでパロディネタやってみたんですけど、なんか中途半端な作品になっちゃいました。
殺意については自分で書きながら「そうかぁ」なんて思ってました。
書きながら気づくことってけっこうありますよね。

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