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かめかめさん

http://ameblo.jp/kamekame1976/ ブログデシセイカツバクロチウ

性別 女性
将来の夢 印税生活
座右の銘 ハワイに行きたいと思ったら、一歩踏み出さないといけない。 ハワイは向こうから近づいてこない。

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ON  THE  DISPLAY

12/04/30 コンテスト(テーマ):第五回 時空モノガタリ文学賞【 京都 】 コメント:4件 かめかめ 閲覧数:2336

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 「京都」と言うパソコンゲームがあった。
 もう、15年は昔の話だ。

当時、まだウィンドウズは今ほど巷間に流布しておらず、パソコンは非常に高価だった。貧乏学生な私がおいそれと買えるものではなく、姉の仕事用のパソコンを借りて遊んだ。

「京都」には、説明書というものが付いていなかった。ゲームの起動方法が、かろうじて、パッケージの裏面に印刷されていただけ。

 ゲームを始めると、主人公の性別選択画面が出る。女性で始めてみる。
スタートボタンをクリックすると、原っぱの真ん中に、主人公がぽつり、と立っている。素っ裸で、持ち物も何もない。
突っ立っていても仕方ないので目の前の道を、てくてく歩いて行く。操作はマウスでクリックするだけ。簡単である。

 しばらく歩くと道端に、行き倒れた死体がある。男だ。
クリックして調べると、着物、刀、銅銭をいくらか持っている。失敬して、死体の身ぐるみを剥ぐ。
主人公に着物を着せ、刀を差すと、遠くに建物が見えていることに気付いた。そちらへ向かう。

 朱塗りの大門に、行きかう大勢の人たち。みな着物だ。
どうやら、ここは平安時代の京都らしい。すると、この門は朱雀門か。
門をくぐると、そこには平安の町並みが広がっていた。

 朱雀大路を北に向かって、まっすぐ歩く。
大路には人がたくさん歩いており、行商の売り声が聞こえたりする。寺があり、神社があり、牛車とすれ違う。
大路の突き当たりに、また、大きな門があり、兵士が槍を構えて通せんぼしている。どうやら、御所まできたようだ。兵士が言う。

「お前のような下賎の者が何用か。去れ」

 はい、ごもっとも。くるりときびすを返し、平安京見物に行くことにする。

 適当な路地を曲がると、死体が転がっていた。
ぎょっとして立ち止まる。辺りを見回すが、誰もいない。
(また、路銀をくすねることができるかもしれない)と思い、死体に近づき、調べてみる。
すると、どうやら疫病で死んだ者だったらしい。主人公は病を得て、あっけなく死んでしまった。

 あーあ。ゲームオーバーか。

 と、思ったが、ディスプレイは真っ暗なまま、うんともすんとも言わない。しばらくすると、真っ暗な画面から、人のうめき声が聞こえてきた。
徐々に大きく、たくさんの人声がする。

 ぱっと、画面が赤くなり、主人公は炎熱地獄で炎に焼かれているところだった。
なるほど。死体から盗むような人間は地獄行きということか。
私はしばらく、ぼおっと、地獄絵図を見物した。針山を登るもの、煮立った湯に突き落とされるもの。ゲームと言えど、見ていてここちよいものではない。

 地獄の責め苦も永遠には続かないらしく、時間が経つと、主人公はまた、原っぱに、突っ立っていた。

 生まれ変わったのだ。

 しかし、やはり素っ裸で持ち物もない。
とにかく、平安京に向かう。道中の死体には近づかない。
町についたはいいが、裸ん坊ではしようがない。服をどうにかしなくては。
人のいないほうへ、いないほうへと進み、荒れ果てた屋敷を見つけた。ここなら人は住んでいないだろうし、もしかしたら着物が見つかるかも。

屋敷に入ってきょろきょろしていると、幽霊が出た。あ、まずいな、と思ったときには幽霊に取り付かれ、死んでいた。

 今度はすぐに、画面が明るくなった。

 花が咲き乱れ、天人が舞い遊んでいる。
 主人公は、天界に生まれ出たようだ。盗みをしなかったのが、幸いした。
しかし、天人であっても、死は訪れる。美しかった容姿が嘘のように枯れ果て、散る。

また、原っぱにいる。
京へ向かう。うろつく。腹が減り、市で魚を売っている女から盗んで食べる。路地を曲がる。追い剥ぎに出会い、切り殺される。

原っぱにいる。
今度は犬に生まれたようだ。京へ向かう。うろついていたら、百鬼夜行に出くわし、とりころされる。

原っぱにいる…。

何度も生まれ変わり、いろんなことをした。しかし、何をしても、結局、死ぬ。
そしてまた、原っぱにいる。

 私は飽きてしまい、それ以降「京都」は、やっていない。
もしかしたら、どこかに「解脱」というゴールがあったのかもしれないが、今のところ、煩悩にまみれて生きることに、現実では、まだ飽いていない。


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このストーリーに関するコメント

12/05/02 ゆうか♪

初めまして、拝読させて頂きました。
なんだか読んでいて怖くなるような作品ですね。
もしゲームでこんなのがあったら、それこそ取り憑かれそう。笑
着眼点がとても面白い作品だなと感じました。
ある意味、この人間界の真相のような・・

私の作品へもコメントを下さってありがとうございました。O┓ペコリ

12/05/05 かめかめ

>ゆうか♪さん
コメントありがとうございます。

じつは実話で実在します、「京都」。
今はもう、入手不可能かもしれませんが…
というわけで、これは、エッセイに分類すべきかもしれません。

12/05/06 ゆうか♪

あら、本当にあったんですね、このゲーム。
でも入手不可能ってことはあまり人気がなかったということでしょうか?
きっと解脱への道が遠すぎたってことなのでしょうね。笑

こちらのサイトはジャンル分けが出来ないので仕方ないですね。
エッセイでもいいけど、ある意味、ノンフィクションでもOKってことですよね? (*^-^*)

12/05/06 かめかめ

そうですね^^
あるいは、ゲームレビュー?

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