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松定 鴨汀さん

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葵祭と教授たち

12/04/30 コンテスト(テーマ):第五回 時空モノガタリ文学賞【 京都 】 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:3085

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 ある年の葵祭の日、京都工芸繊維大学の教授は講義がはじまるなりこう言った。

「皆さんの多くは、京都にきてようやく2ヶ月目ですね。今日は本当に京都らしい伝統行事がありますから、京都の大学に来た醍醐味を味わいに行ってください。講義は以上!」
 そして学生が歓声をあげながら去っていくのを見届けると、自身の研究をしにラボへ戻っていった。



 同じ頃、立命館大学の教授はこう言った。

「今日は休講にします。ただし、来週『葵祭の実態と京の文化の継承について』というタイトルでレポートを提出しなさい」
 そして学生がいなくなるのを見届けてから、自身の研究をしに自室へ戻っていった。



 同じ頃、京都市立芸術大学の教授はこう言った。

「今日は平安朝の衣装をデッサンできる貴重な機会です。皆さんぜひ、お行きなさい」
 そして教授は、学生がおずおずと一人抜け二人抜けと次第にいなくなる様をニコニコと見守った。



 同じ頃、同志社大学の教授はこう言った。

「今日は休講にします。喜ばしいことに、今日の葵祭ではわが大学の生徒が斎王代を務めます。場所も近いですから、皆さんぜひ見に行きましょう」
 そして学生と共に祭事の行列がスタートする御所へと向かい始めた。



 同じ頃、京都府立医科大学の教授はこう言った。

「去年の葵祭の斎王代は皆さんのクラスメイトでしたね。月日がたつのは早いものです」
 そして普通に講義を始めた。



 同じ頃、平安女学院大学の教授はこう言った。

「葵祭には、大学生がたくさんバイトとして参加してますよ」
 たちどころに学生はいなくなり、教授はお茶を飲みに自室へ戻っていった。



 同じ頃、京都女子大学の教授はこう言った。

「葵祭の馬を曳いてる若者は、たいてい京大馬術部の男子学生ですよ」
 我先にと学生はいなくなり、教授はお茶を点てに自室へ戻っていった。



 同じ頃、京都大学の教授は御所の一角で、行列が出てくるのをのんびりと待っていた。
 どうせ初回の講義以外、出席する生徒など誰もいないのだ。


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