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AIR田さん

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新宿駅9時6分発三鷹行き

13/06/20 コンテスト(テーマ): 第十回 【 自由投稿スペース 】  コメント:0件 AIR田 閲覧数:1569

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 9時頃新宿駅13番線のホームに降りる。少しでも立ち止まろうなら、直ぐに人の波にもまれ、最悪四つんばい。
 勿論、人の流れの邪魔になるので、スーツ姿の私はそのまま流れに沿って、14番線に流れ込んできた山手線に、流れるように乗る。
 血液って、こんな感じなの?
 社会人になってもう8年目になるというのに、この手の妄想は未だに止まることなく、むしろ歳を重ねるごとに酷くなっている気がした。
「山手線〜間もなく扉が閉まります」
 車掌のアナウンスが聞こえ、私は我に返り電車に、乗るつもりだったが、今日は早起きした分電車を一本遅らせることにした。でも、朝の時間帯に遅らせたところで、次々とやってくる電車には沢山の人が乗っている。

 昔、プラレールという電池で動く電車のおもちゃの中に、人型に切った紙をぎゅうぎゅう詰め込んで、
「はい!まんいんでんしゃ!これがおとさんだよ」
 父に渡したことがある。父はプラレールをじっと見つめた後、ゆっくりと紙型の人を取り出した。窓から差し込む光を浴びながら、そっとそれを取り出す父の姿は、何か神聖な儀式を執り行っているようで、「せっかくいれたのに!」と私は怒ることなく、ただ黙っていた。
 窓から差し込む光の角度が大分変わった頃、父はプラレールをそっとプラスチックの線路の上に置き、スイッチをONにした。プラレールは清流が風邪をひいてしまったかのような音を出しながら走る。よくみると、社内には私が「おとうさん」として作った紙型の人だけが、残っていた。
「ありがとう。旅に出れた」
「……どこにいくの?」
「遠い遠い、本当に遠い場所だよ」
 父はそう言って私の頭を撫でた。その時の表情を、私は忘れることが出来ない。

 気がつくと、目の前から山手線はいなくなっていた。その奥のホーム16番線に、総武線三鷹行きが止まっていた。私がこれから職場に向かうとは逆に進む電車。その時間の三鷹行きはあまり人が乗っておらず、広々と座っても咎められない程。
「お父さん」
 扉が閉まり、ホームから走り去る社内に、私は父の姿を見た。こちらを見て、笑っている気がした。今はもう、世界中のどこを探したっていないのに。
「……よし」
 私は手帳を見て、今日1日休んでも問題ことを確認し、スマートフォンを取り出した。
「もしもし」
 もうすぐ16番線に、総武線がやって来る。


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