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そらの珊瑚さん

🌼初めての詩集【うず】を上梓しました。  (土曜美術出版販売・現代詩の新鋭シリーズ30) 🌼小説や詩、短歌などを創作しております。 🌼作品を置いています。よろしかったらお立ち寄りくださいませ。 「珊瑚の櫂」http://sanngo.exblog.jp/14233561/ 🌼ツイッター@sangosorano 時々つぶやきます。 🌼詩の季刊誌(年4回発行)「きらる」(太陽書房)に参加しています。私を含めて10人の詩人によるアンソロジー集です。アマゾンでお買い上げいただけます。      ✿御礼✿「馬」のオーナーコンテストにご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

性別 女性
将来の夢 星座になること
座右の銘 珊瑚の夢は夜ひらく

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パパ☆ラーメン

13/06/13 コンテスト(テーマ):第三十二回 時空モノガタリ文学賞【 ラーメン 】 コメント:13件 そらの珊瑚 閲覧数:1958

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栞は意気揚々と出ていった。新婚旅行で訪れたイタリアで買ったフェラガモの白い靴を履いて。それはさながら新品の輝きだ。それもそのはず今回でそれを履くのは三度目だという。専業主婦の日常着はジーパンに運動靴であったから。出がけにファッションショーさながらに幾度か着替え、それでも決まらず「ねえ、どっちがいい?」と僕に質問する。『どっちもそんなに変わらない』なんてうっかり本音を言ってはいけない事は結婚して五年も経てば重々承知だ。「どっちかっていうと、水色のワンピースに黒いスパッツかな」と苦し紛れに答える。「やっぱり? 私もそう思ってた!」セーフ。どうやら当たったようだ。やれやれ。「でも、スパッツだって! 古いねぇパパは。今はレギンスっていうんだよう」それを聞いた我が子たちは、たちまち「ふるい! ふるい!」のシュプレヒコールもどきのにぎやかな二重奏。完全にシンクロしている。やはり双子ならではの芸当である。──三歳の双子、それもやんちゃ盛りの男の子の世話がどれほど大変か、パパわかってないでしょう。事あるごとに妻の栞からそう言われ日曜日の午後公園に子供たちを連れ出すことはあった。ほんの数時間でへとへとになり、あとは昼寝、それがいつものパターンだった。しかし今日は丸一日である。誕生日プレゼントに一日自由になる時間がほしいと言われて、まかせとけっと、どーんと胸をたたいたのである。「大丈夫かなぁ」夫の薄い胸がいかにも頼りないというように妻はつぶやいた。どこへ行くのかと問えば、東京スカイツリーに出来たショッピングモールだと言う。「大宮の駅ビルの屋上からスカイツリーがちょっとだけ見えるのよ。でもねえ、この子たちと行くのは大変そう。混んでそうだし。もう少し経ってからかな」そういえば妻がいつかそんなことを言っていたような。
 妻を送り出したあとパンとゆで卵と牛乳で子供たちに朝食をとらせる。その間に洗濯物を干し掃除機をかけた。「あーあ」子供の声に振り向けば、テーブル一面に牛乳が広がっている。どうやら服まで牛乳まみれだ。今洗濯が終わったところなのに。あーあと言いたいのはコッチダヨ、と心の中で毒づきながら、着替えさせる。それから天気がいいので近くの公園に繰り出した。「空が青いなあ」双子の乗るブランコを代わりばんこに押しながら、妻はこの空を見ながらいつもどんなことを考えているんだろうかと思った。夫婦といえども心の中は見えない。推測するしかないのだ。
 大きな声では言えないが昼はあらかじめ買っておいたインスタントラーメンと決めていた。僕が唯一出来る料理だ。(大学時代一人暮らしをしていた時これを一ヶ月間食べ続けた記録を持つ。えへん)いや、それが料理だといえるかどうかは知らない。栞はインスタントものや冷凍食品の類を一切使わない。健康は食から、というのが彼女のポリシーらしい。そこでだ、僕なりにちゃんと健康に気を使おうではないか。BGMはロッキーのテーマだ! レッツクッキング! 大鍋に三人分の水1500cc入れ火にかける。キャベツ、人参を適当に切る。ネギはみじん切り。鍋が沸騰したら緬、野菜、卵を投入。三分待つのだぞ。双子は興味深々でそばでじっと見ている。「もうすぐパパラーメンを食べさせてやるぞ」「パパラーメン! パパラーメン!」腹を空かせた子、さらにシンクロ度が増す。出来上がったらスープの元、ネギを入れ、湯気もうもうの鍋ごとテーブルに置く。額から滴り落ちた汗が見事鍋の中に落ちた。いいさ、もともと塩ラーメンだし。男の料理は豪快にいかなきゃ。双子は顔を近づけて鼻をヒクつかせている。「熱いから気をつけろ」ここでひっくりかえしたらおおごとだ。慎重にお椀によそる。三人でもくもくと食べた。野菜はほどよく煮えやや半熟の卵もいい感じだ。しばし無言。美味しいものを食べている時はなんて平和なんだ。そういえばこの光景は初めてじゃない。僕が小学生の時同じように親父がインスタントラーメンを作ってくれたっけ。確か母さんが盲腸か何かで入院した時だった。──今日と同じ味がしたっけ。
夕方、栞が帰ってきた。買い物袋をいくつも抱えて。何が入っているかと見れば、ほとんどが双子の服だの絵本だのおもちゃだの、だった。自分の誕生日なのに自分のものは買わなかったの? と聞くと、もうたくさんもらったから、と言う。「一人が楽しかったのはお昼にラーメンを食べるまでかなぁ。一人で食べるラーメンはあんまり美味しくなかった。午後は双子のことばかり考えてた。ついでに、あなたのこともね。私、ちゃんともらったよ。大切な贈り物」「おまえも昼にラーメン食ったのか? もっといいもん、食べればいいのに」こういうのを似た者夫婦というのだろうか? 理子はいいの、ラーメンが良かったの、それにしても痛い、足に豆できちゃった、と柔らかく笑った。


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このストーリーに関するコメント

13/06/13 そらの珊瑚

ああ、間違いを発見してしまいました。
訂正します。最終行ひとつ上、理子→栞

凪沙薫さん ありがとうございます。
日常って案外大切なものを忘れがちですよね。でも何かの拍子にそれを確認できたらいいなあと思います。ほのぼの、を感じてくださって嬉しいです。このお話のだんな、自分でいうのもなんですが、結構いいやつだと思います((笑))ちゃんと教育すれば料理の素質もあるかと。料理は愛情ですから!このラーメンには是非海苔を入れたかったのですが、字数オーバーでできませんでした。 

13/06/13 光石七

拝読しました。
温かい家庭の雰囲気が伝わってきて、ほっこりしました。
何気ない出来事なのに、幸せが凝縮されている感じです。
こういう夫婦、いいですね。

13/06/13 名無

子供にとっては、このパパラーメンがとても美味しく、特別なものに感じるのだろうなぁと思いながら読ませて頂きました。
毎日ご飯作ってるお母さんにとっては、ずるい!と思えるかも知れませんが。笑
家族愛溢れる素敵なお話、面白かったです。

13/06/13 泡沫恋歌

珊瑚さん、拝読しました。

お誕生日のプレゼントにもらった自由時間、残ったパパの奮闘ぶりが楽しいです。
いつも手作り料理だったら、意外とインスタントラーメンも目新しくツインキッズにも
好評かも知れませんね。

家庭の日常が生き生きと描けていて良かったです。

13/06/13 草愛やし美

そらの珊瑚さん、拝読しました。

パパ☆ラーメン、なんて美味しそうなのでしょう。家族というどんぶり茶碗に、幸せ味がたっぷり入っていますね。隠し味は、夫婦愛かな。楽しくて、ほのぼのしましたよ、ありがとうございました。

13/06/14 ハズキ

拝読しました。
美味しいものを食べている時はなんて平和なんだ>。。同感です。
たかがラーメン、されどラーメンですね。
さいごの夫婦のやりとり、ほのぼのしますよ。こういう夫婦のさりげない会話、いい感じです。
そういえば、父の日ですね。ここの家族、パパラーメンでお祝いするのかな、、とか、微笑ましい想像をしてしまいました。

13/06/15 そらの珊瑚

光石七さん、ありがとうございます。

何気ない日常ってほんとはかえがたく大切なのものかも、と思います。
気づきにくですけど。

13/06/15 そらの珊瑚

名無さん、ありがとうございます。

面白いといっていただけて嬉しいです。
子供にとっては、パパが料理しているっていう非日常な要素だけで、それはもう美味しいでしょうね。

13/06/15 そらの珊瑚

恋歌さん、ありがとうございます。

初めて食べたインスタントラーメンに、子供たちはパパ天才!って思ったかも((笑))美味しいものでも、いつも食べていると、マンネリになってしまうものですから。毎日の食事作り、適当に手を抜いたほうが良さそうです。

13/06/15 そらの珊瑚

草藍さん、ありがとうございます。

どんぶりものって、いいですよね。それ一杯だけでとりあえずお腹いっぱいになるし。ほのぼのしていただけて良かったです。

13/06/15 そらの珊瑚

ハズキさん、ありがとうございます。

家族って、同じものを食べていくことで、絆みたいなのが強くなるものなのかなと思います。子供が小さいうちは尚更でしょうね。誰が作ってもとりあえず美味しくできるインスタントラーメンはパパの救世主かもしれません。

13/06/15 鮎風 遊

日常のふとした風景の描写がいいですね。

家族のほのぼのさが伝わってきました。

13/07/02 そらの珊瑚

鮎風 遊さん、ありがとうございます。

一緒のものを食べているうち、ほんとの家族になっていくのかもしれませんね。
パパでも美味しく作れるインスタントラーメンはいざというときの救世主です。

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