アパさんさん

性別 男性
将来の夢 旅人
座右の銘 楽しいことがいい。笑えることは素晴らしい。 byアパさん

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13/05/30 コンテスト(テーマ):第八回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 アパさん 閲覧数:1364

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その日は朝から降り続く雨で街全体が暗いふいんきに包まれているような気がした。いや、最近の自分の堕落した精神がそういうふうに感じさせているのかもしれない。
学校の売店で缶のカフェオレを買って喫煙所に向かう。雨の日は人も少ないので周りを気にせずにゆっくりと吸うことだできる。そういう時にそいつは現れる。

「タバコ吸うときはいつもそれだね」

耳に届くというより体にまとわりつくようなその声はあまり好きな声ではなかった。

「缶コーヒーのブラックは美味しくない」

そう言って右手に持ったカフェオレを一口飲む。そいつは嬉しそうにくすくすと笑う。

「変に大人ぶってるくせに大人にはなりきれないんだよね。バカみたい」

そう言うとまたクスクスと笑った。馬鹿にされているのは理解しているが本当のことだ。何も言い返すことはできない。

「最近の君は本当にだらしないね。見た目だけは見繕って年相応に見せているけど、中身は空っぽだ。特に頭の中はスッカラカン。わかってる?」

「こう見えてもいろいろ悩んでるんだけどな」

これが今の自分にできる精一杯の見栄っ張りだった。

「君の悩みなんて知らないよ。頭の中が空っぽだって言ってるんだ。」

なんでこうも上からの発言ができるのだろうか。

「色々考えてるから悩むんだ。俺なりの必死さだよ」

またクスクスと笑う。

「上手い言い訳だね。ただ惰性で悩んでるだけなのに―」

まだ残っているタバコの火をもみ消し、すぐにその場を立ち去る。そいつは風と共に流されて消えてしまった。
なんにが言いたいかはわかっていた。そいつも自分で作り出した言い訳の一つだったから。

「わかってるよ」

自分に言い聞かせるように言った言葉は小さすぎて消えてしまった。煙と一緒に風に運ばれたようだ。
振り返ってもそこには空のアルミ缶が残ってるだけだった。
煙も消えてしまった。

「わかってる」

うつむいたまま前を向き、また歩き始める。
思考を止めたまま僕は惰性を背負って日常に溶け込んでいく。
雨のせいか、精神的なものなのか、視界は煙でよく見えなくなっていた。

―俺は一体どこに向かっているのだろか。


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