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Miaさん

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君が恐怖

13/05/25 コンテスト(テーマ):第七回 【自由投稿スペース】 コメント:0件 Mia 閲覧数:1481

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 なんの罰ゲームなんでしょうか……

 状況。
 昼休みです。図書室です。私、前川英(まえかわ はな)の前に水島悠斗(みずしま ゆうと)というクラスメイトがいます。後ろには本棚です。図書室は図書委員もさぼるほど人の利用が少ないので、わたしたち以外誰もいません。

 事態。
 水島君に呼び出しをされました。

 普通なら胸をときめかせることなのでしょう。誰だって「もしかして……」と思うはずです。私もついさっきまではそうでした。朝、下駄箱に入っていた「昼休み図書室に来て下さい」という手紙にちょっとだけうきうきして、ここにやってきました。名前が書いていませんでしたが、それもまた一興と思っていました。不相応にうかれたのがいけなかったのでしょうか?
 目の前の彼、水島君は呼びだしてきたのにもかかわらずさっきから無言で私をにらみつけてきます。彼はとても綺麗な顔をしているので、迫力がヤバいです。美人さんの迫力はまた桁が違います。私はそんな彼を前に、小さく震えていました。

 水島君と私は、つい最近まで出席番号の都合で席が前後でした。私が前です。そして彼は授業中に、何故か頻繁に舌打ちやら私のイスを蹴ったりしてきました。一番ひどかったのは、はさみを首元に突き付けられた時です。怖くてしょうがなかったです。そして周りに助けを求めようとすると、その行為はエスカレートしていきました。なので黙ってされるがままにしていました。授業中は私にとって悪夢でした。休み時間は逃げるようにそこから離れていました。さすがに休み時間までは干渉して来ませんでした。
 彼がとくによくやるのは、髪を引っ張ることでした。私の髪は腰まで届くほど長かったので、そのせいかと思いました。ぎゅっ、と遠慮なく引っ張られるのは痛くて辛かったです。なので髪をショートにしましたが、それでも彼はやめませんでした。
 なんでこんなことされなきゃいけないの? いつも静かに下唇を噛んで耐えてました。
 一昨日席替えして席が離れるまで、それはずっとやられていました。彼と離れた。それだけで涙が出るほど嬉しかったです。なのに。ようやく解放されたと思った矢先、これです。
 やっと、やっとトラウマから解放されたと思ったのに。

 震えを押さえるように、私は下唇を噛みしめました。いつの間にか耐えようとするときに出るようになった癖です。激痛でしたが、気にしませんでした。
 その様子に気付いたのか、水島君が私から視線を外しました。睨みつけられていた恐怖が薄れ、思わず息が零れました。その瞬間水島君がまた視線を戻したので、小さく「ひっ」と悲鳴が漏れました。すると、
「……俺のこと、怖い?」
  水島君が痛そうな、辛そうな顔で私を見てきました。
「?」
 意味が分からず、ただただ水島君を見返しました。
「怯えられても仕方ないんだけどさぁ……」
 はあ、とため息をつく水島君。困惑していると、彼が私に向かって手を伸ばして来ました。反射的にびくっと体を震わせると、水島君は見ていた私の方が痛くなるような、傷ついたような顔をしました。
「殴んないから」
 慎重に伸びてくる手。そう言われても、蘇るのは頭皮の痛み。怖くて、だけど拒絶したらさっきの顔―――または逆切れという可能性もあるのです。
 緊張、困惑、恐怖。いろんなものが私を支配して、身体は動きを止めました。
 すっと水島君の手が私の髪に触れました。ぞっとして、次に来る痛みに目をぎゅっと閉じました。しかし。
 いっこうに予期していた痛みは来ませんでした。恐る恐る目を開けると、恐怖だった彼の手は私の頭を、髪を撫でていました。
「??? え」
 小さく零れた疑問の声に、水島君は優しく笑いました。
「髪、ごめんな」
 長かったのに。毛先の方を申し訳なさそうな顔をする水島君に、もう何が何だか分からなくなりました。でも水島君の手が離れた時、少しだけ残念なような気もしました。
「……俺さあ」
 最初とは打って変わった優しい目で、水島君は私を見てきました。
「本当は、前川さんのことずっと好きだったんだ」
 衝撃に目を見開いて固まりました。正直、突然豹変した水島君にびっくりしてました。しかしこうなると、『罰ゲームで告白』というのが脳裏に浮かびました。油断してそうなんだ、と言えば潜んでいた人が出てきてさんざん指さして笑われる、あれです。
 ほぐれかけた心が、またきゅっとしまりました。

「俺の家、変でさ。DVとか普通にあって。父親が母親に暴力振るうの。他の男を見た、とかそれだけの理由で。今思うとおかしいってハッキリわかったんだけど、ちょっと前までの俺はそういうのが愛情表現だと思って生きてきた。でも違うんだって最近知ったんだ。離婚して俺母親に引き取られてさ。すぐに新しく出来た母親の恋人との様子見てたら、俺が間違ってたんだってよく分かった。前川さんには本当に申し訳ないと思う」

 ……すさまじいディープな話に、理解が追いつきませんでした。
 何が本当だとか、そういうのが全く分からなくなってしまいました。どうしましょう。
「俺と一緒にいるのとか、もう嫌かもしれないけど。でも、それでも、これから今までのことを償っていくから、俺と付き合ってくれませんか?」
 いろんなことがありすぎて、もうよく分からないです。
 それでも罰ゲームとか過去のトラウマとかそんなことより、さっきの傷ついた水島君の顔とか、優しい手つきとかそういうのを思い出しました。
 話なんて嘘かもしれないけど、でも嘘でそんな凝ったこと言う意味なんてないはずです。
 ただ、知らなかっただけなら、それは彼はとっても可哀そうな人です。

「お友達からでもいいのなら」

 水島君はぱっと顔を輝かせました。それで私に手を伸ばして来ますが、条件反射です。つい体が震えてしまいました。
 傷ついたような、でも仕方ない。そんな顔を浮かべる水島君。
「す、すみません……」
「しょうがないよ。俺が悪いんだし」

 色々前途多難です。


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