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泥舟さん

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からかさ小僧

12/04/25 コンテスト(テーマ):第四回 時空モノガタリ文学賞【 傘 】 コメント:2件 泥舟 閲覧数:2470

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「傘っていうのは、なんなんだろうね」
傘デザイナーの橋下氏は、ご機嫌伺いに訪れた私に問いかけた。
挨拶もそこそこに、唐突な問いかけに固まった私に構うことなく、橋下氏は言葉を続けた。
「例えば、『はし』って言葉があるだろう。何かの本で読んだのだが、同音異義語の漢字がいろいろあるよね。試しにパソコンで入力すると、俺の名前の『橋』だろ、端っこの『端』、食事の時の『箸』、梯子の『梯』、くちばしの『嘴』と出てくる。全部意味は違うが、根本というか、背景的なもの、イメージが共通するんだよな」
橋下氏はそこで間を置いて、私を一瞥した。
私が口を開こうとすると、全部、と橋下氏は言葉を続けた。私の反応を待っていたわけではなさそうだ。
「離れているもの、離れているものをつなぐもの、そんなイメージがある。要は、あっちとこっちなんだよな」
確かにそうかもしれない、と漠然とだが、私も思う。
『橋』は離れたものをつなぐものだし、『端』は文字通り端っこなんだから離れているのだろうし、『箸』は離れているものを口まで運ぶものだ。『梯』は上下に離れたものをつなぐ印象だし、『嘴』は離れたものをついばむのに便利だ。


「俺は、思うんだが、『かさ』も同じなんじゃないだろうか」
そうなのか、というか、私は、橋下氏の意図が分からないせいもあり、『はし』についての話自体消化できていない。
「『傘』と『笠』は同じ語源らしいので、同じものなのだろう。頭上に差しかざすか、頭にかぶるかの違いがるが、目的は同じだ。」私もそこは違和感はない。ただ、橋下氏は『傘』のデザイナーだと思うだけだ。
「瘡蓋の『瘡』だが、これも同じだ。傷が治りかけの時に内側を守る役割をしているわけだ。そういった意味で、傘・笠と同じ背景を持っている」
瘡蓋なんて、ここ最近こさえたこともない、と思いながら私は聞いている。
「『かさ』でもパソコンを叩いてみると、まだ出てくるんだ。思いつくかい?」
私は答えを探す努力をしようとしたが、橋下氏はなにもの答えを期待しているわけではないようだ。
「大きさを意味する『嵩』と、ほら、太陽を丸く囲むような環っかの『暈』だよ」
ほう、と私は一瞬感心した。なにもパソコンで勝手に出てきただけなので感心する必要はないのだが。
「最初は、俺も『傘』とは関係がないと考えていたさ。『傘』は、内側のものを守らなければならいというように解釈してたからな。だけど、発想を逆にしてみたんだ。『嵩』っていうのは、要は、大きさだ。何の大きさだ?物の大きさだ。物ってのはなんだ?なんだっていいさ、見えるものだ。そして俺たちは、物の表面を見ている。表面があるということは、内側もあるということだ。内側の大きさのことを『嵩』と言っている。
『嵩』を内側ととらえると、『暈』も分かってくる。周りを囲っているものだ。
『かさ』の背景的なイメージを内側と外側と考えると、『傘』『笠』『瘡』も確かに内側と外側がある。内側と外側を分けて、内側を守るもの、それが『傘』なんだ。」
そうなのか、と私は思う。『傘』デザイナーの橋下氏が言うのだから、そうなのだろう。
ただ、橋下氏の意図が見えない。見えないだけに、私の意見も出てこない。そんな感じだ。もどかしい。
「面白い話ですね。傘のデザイナーであればこそ‥‥」と私の言葉は、最後まで言わせてもらえなかった。
そう、橋下氏は強く言った。
「俺は、『傘』のデザイナーだが、本当にそれでいいのか、と思うのだよ。『暈』が最もシンプルな『かさ』なんじゃないだろうか?俺は、『暈』をデザインしなければいけないのではないか。
最近、そう考えるのだよ。」
『暈』のデザイン?私には見当もつかない。意味のあるものなのかも分からない。
仕事が滞っている言い訳か、と私は初めて思い至った。正直、最近スランプなのでは、とは感じていたし、正直、後進に押され気味になっていることは本人も気付いているだろう。
私は一抹の不安を抱えながら、橋下氏の仕事場をあとにした。


橋下氏が駅のホームから身を投げて、自殺したと聞いたのはその2日後のことだった。
顔半分が削がれ、片足がちぎれるという壮絶な死にざまであったと、人づてに私は聞いた。


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このストーリーに関するコメント

12/04/25 かめかめ

ええ?
えええ?
ええええ?わかんない…なぜ…?

12/04/29 泥舟

かめかめさん、コメントありがとうございます。
わかんないですよね。
京極夏彦の百鬼夜行のイメージで書いてみたらこうなりました。

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