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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

性別 女性
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恋はラーメンの味

13/05/20 コンテスト(テーマ):第三十二回 時空モノガタリ文学賞【 ラーメン 】 コメント:17件 光石七 閲覧数:2471

時空モノガタリからの選評

最終選考

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 夫が夕食は外で食べようと言うので、娘を呼びに2階へ上がった。声をかけようとしたが、中から何やら音がする。ガタッ、ドン、チャッ――。
「あーん、どれにしよ? 全然決まんないよお……」
娘の困ったような声が聞こえてきた。私は思わず微笑んでしまった。明日、娘はボーイフレンドと初デートに行くらしい。行先は水族館。きっとどの服を着ていくか、迷っているのだろう。時代は変わっても、好きな人のためにかわいく装いたいという女心は変わらないようだ。背伸びし過ぎなければいいけれど。
 「自分は遅れてる」と高校1年生の娘は言う。今は小学生でも彼氏がいるらしい。私にはとても理解できない。娘の年齢でも早いと思うくらいだ。私の場合、初恋は高校生の時だったが、実際に男性とお付き合いをしたのは高校を卒業して社会に出てからだった。

 私はある商社で事務をしていた。そして、営業部にいる2年先輩の白井さんに密かに憧れを抱いていた。今で言うイケメンではないけれども笑顔が爽やかで、誠実で優しい男性という印象を持っていた。ちょっとした気遣いも素敵で、資料を配る時でも、白井さんだけは「ありがとう」とか「ご苦労様」とか私に声をかけてくれた。奥手だった私は、彼をみつめるだけの日々だった。自分から声をかける勇気などなかった。
 だから、白井さんが映画に誘ってくれた時は夢ではないかと思った。初めてのデートだ。前日の夜は眠れなかった。当日も一緒に歩くだけで緊張して、映画どころではなかった。白井さんが私の隣に座っている、この事実がうれしい反面、どうしたらいいのか戸惑っていた。映画の内容も覚えていない。洋画だったのは確かだが。
 映画を観終わって一緒に食事をすることになったが、白井さんが連れて行ってくれたのはラーメン屋だった。できたばかりの店で気になっていたという。白井さんはオリジナルラーメンを二つ注文した。いろいろな店を食べ比べるのが好きだと話してくれたが、私は正直困ってしまった。初めて二人きりで食事をするのに、ラーメンなんて……。ラーメンが嫌いというわけではないけれど、憧れの異性の前で麺をズルズルすするのはみっともない。スープが服に飛ばないかも気になる。私はなるべく行儀よく食べようとした。しかし、ラーメンが相手ではなかなか難しい。
「宮原さん、ラーメンのびちゃいますよ。美味しいうちに食べましょう」
白井さんが優しく気遣ってくれる。その笑顔に促され、私は思い切って麺をすすった。
「……美味しい」
「遠慮しないで普通に食べてください。そのほうが美味しいから。ここは細麺でスープは醤油ベースですね。何か隠し味を入れてるのかな? あっさりした中にも深い味わいがある」
にこにこしながら解説をしてくれる白井さん。本当にラーメンが好きなんだなと思った。ようやく緊張が解け、私は心からラーメンを堪能することができた。
 二人とも食べ終わった後、白井さんが言った。
「なかなかいい店ですね。お気に入りの店がまた一つ増えました。宮原さんもなかなかいい食べっぷりだったし」
「そんなこと言わないでください。恥ずかしい……」
私は赤くなってしまった。やはりラーメンはデートには向かない、そう思った。しかし、白井さんは笑って続ける。
「美味しそうに食べる女性、僕は好きだな。宮原さんがそばにいると余計に美味しく感じる。また一緒にラーメン食べましょう。今度はどの店に行きましょうか?」
「え……?」
次のデートの誘いだと理解するまで、しばらく時間がかかった。

「百合香はまだか?」
夫の声が1階から聞こえた。私は慌ててドア越しに娘に声をかけた。
「百合香、お父さんが晩ごはん食べに行こうって。すぐ出られる?」
「またラーメンでしょ? お父さんもお母さんもよく飽きないねえ……」
「今夜は亀宝軒だって。嫌なら留守番でもいいけど。残り物で何か作って」
「行かないとは言ってないじゃん」
百合香がドアを開けて出てきた。
「早く行こ? お母さんの愛しの誠さんが待ちくたびれちゃうんじゃない?」
「親をからかわないの」
苦笑しながら百合香と階段を下りた。夫はいつもの穏やかな笑顔で迎えてくれる。
 3人で車に乗り込み、「白井」と表札が掲げられた家を後にした。


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このストーリーに関するコメント

13/05/20 W・アーム・スープレックス

コメントを先に読む方もおられるでしょうから、ラストの最高のオチにはふれずにおきますね。すばらしい。やりますね。こんな女性と、いっしょにラーメンが食べたかったな。

13/05/20 そらの珊瑚

光石七さん、拝読しました。

気取らない人柄が、初デートでラーメンという選択に現れていたように思います。
最後の一行は、やっぱり予想通り!と思いました。(ごめんなさい、(笑))

13/05/20 光石七

>W・アーム・スープレックスさん
「初デートでラーメンはアリか?」という議論に対する私なりの答えです(笑)
お互い飾らずに美味しく心地よく過ごせればそれでいい、と私は思っています。

>そらの珊瑚さん
オチは読まれる覚悟で「初デートでラーメン」という話を書いてみたかったのです(苦笑)
白井さんみたいな人、いたらいいなあ…
実は「モテ男が女性の素を暴くためにラーメン屋に誘う」という話も考えたのですが、まとまりませんでした orz

13/05/20 草愛やし美

光石七さん、拝読しました。
ラーメンが初デートのお店って、普通は考えられないかもですね。それほど、ラーメン好きな白井さん、きっと、宮原さんが好きだけど、ラーメン好きなら、なおよいなあって思われたのでしょうね。素直にラーメンを美味しくいただいたこの宮原さんの、可愛らしさが良く伝わってくる微笑ましいお話でした。

とても、美味しそうな文にひき込まれました。私もラーメン好きですので、白井さんお勧めのラーメン店をぜひ教えていただきたいものですね。笑顔

13/05/20 光石七

>草藍さん
コメントありがとうございます。
初デートでラーメンは、女性としてはちょっと引いてしまうかもしれませんが、意外に素が出ていいかもしれないと個人的には考えています。自然体が一番かな、と。
宮原さん、かわいかったですか。意識してなかったのですが、うれしいです。
私自身はラーメン通ではないので、私も白井さんにお勧めの店を紹介してほしいです(笑)

13/05/20 青海野 灰

これはとてもいい話ですね。こちらでの光石さんの作品の中で一番好きです。
ラストはそらの珊瑚さんも仰る様にやはり、という面もありましたが、そんなもの気にならないくらいに素敵で優しい物語に心が暖かく和みました。
1vote!

13/05/20 光石七

>青海野さん
ありがとうございます。
ラストは予想できるので面白みに欠けるかな、と思っていましたが、楽しんでいただけてうれしいです。

13/05/21 クナリ

ラストについては、最後の段落に入る手前辺りで
「あ、もしや、これは、もしかして、おお、やっぱり、おお!」
などと思い始めました。普通もっと早く見当がつくのでしょうか…。
意外なラストで驚かせるというより、来てほしいものが来てくれた、という満足感を与えてくれて、効果的だったと思います。

正直食事は、「どこで何を食べるか」より「誰と食べるか」の方が比重が高いですね…などといっているうちは青いのでしょうか(^^;)。

13/05/21 光石七

>クナリさん
コメントありがとうございます。
ベタかなあ、と思いましたが、気に入っていただけてうれしいです。
私も食事は「誰と」が重要だと思います。どんなに高級な美味しいものでも、苦手な人と一緒では楽しくないでしょうし。

13/05/21 名無

ラーメン屋さんで、音をたてないように一所懸命に食べているカップルがいたのを思い出しました。可愛いくて、自然と微笑んでしまうようなお話でした。ありがとうございます。

13/05/21 光石七

>名無さん
コメントありがとうございます。
楽しんでいただけてよかったです。

>凪沙薫さん
ありがとうございます。
ラーメン婚、とまではいきませんが(笑)、これを機にお互い飾らずに交際するようになったのではないかと思います。だんだん食べ比べも二人で楽しむようになり…
書いた本人が二人の結婚までの道のりを想像してニヤニヤしています(苦笑)

13/05/22 泡沫恋歌

光石七さん、拝読しました。

こういう正攻法の物語は読んでいて、ラーメンの麺のように
スルスルとイメージが広がっていきます。

最後のオチは初めから予測していましたが、納得できました。

13/05/22 光石七

>泡沫恋歌さん
コメントありがとうございます。
ラーメンを使った比喩に「おおっ!」と感動してしまいました。
やっぱりオチは想像しやすいですよね(苦笑)
ベタですが気に入ってくださる方もいてうれしく思っています。

13/05/23 鹿児川 晴太朗

拝読いたしました。
とても微笑ましく物語でした。
オチは確かに読む過程で想像できましたが、逆に言えば期待したラストがきちんと描かれているということで読後感が良かったです。巧みに誘導されたような気がします。
白井さんも宮原さんも人柄の良さに溢れていて、そんな彼らが幸せな結末を迎えていることに暖かい気持ちになりました。

13/05/23 光石七

>鹿児川 晴太朗さん
ありがとうございます。
読んでくださる方が少しでもなごめばいいなと思っていたので、うれしいです。

13/05/24 光石七

>メガネさん
コメントありがとうございます。
最後をどう表現するか迷ったのですが… 他の書き方を思いつかなかったのは力量不足ですね。
ご指摘、感謝します。

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