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satukiさん

新参者ですが、ひとつよろしくお願いします。

性別 男性
将来の夢 小説家
座右の銘 無理はしない。

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愛し合う二人だけの初恋。

13/05/14 コンテスト(テーマ):第三十回 時空モノガタリ文学賞【新人】 コメント:0件 satuki 閲覧数:1723

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明日を願う男が一人、荒野に立っていた。
彼は白血病だ。
絶え間なく穴という穴から血を流し、空を見上げていた。

明日があれば…。

そうして男は砂の大地に倒れた。
死を見届けた者はどこにもいなかった。
彼にも愛していた女性はいたはずなのに。

空からトンビが降りてきた。
きっと彼を食べるためだろう。
目玉をくり抜き、腸を引きずり出し、胃の中におさまっていく。
それが自然の摂理なら、なんとむごい仕打ちか。
誰かに食べられ、その者の糧になるなんて、なんてていのいい戯言か。
食べられた人間は死ぬじゃないか。
亡骸は大地に沈んで、思い出になってしまうじゃないか。
いずれは消えて、なくなってしまうじゃないか。
それが自然の摂理と言うなら、なんと残酷なことか。

誰かは言った。
霊界も魔界もここにある。
全ての負の要素は大地の上にあると――。

男は倒れた拍子に誰かに支えられる感触を感じた。
見上げると、女神のような女が立っていた。
誰かはさておき、とても気分がよかった。
女神が降りてきた。
この広大な大地の上で、僕のために降りてきた天使だ。
そう思って見上げた女性は、かつて彼女が恋した女だった。

愛している。ずっと愛していた。

そう言って男は力尽きた。

女は塩っ辛い涙を男の唇に落として、ずっと頷いていた。

愛していた。ずっと愛していた。誰よりも何よりも愛していた。

男は幸せそうな顔をして、息絶えていた。
女は男にキスをした。
死体にもかかわらず、まるで生きている彼に対してしているかのように、その接吻を彼に送った。

これが愛か。
果てもなく、存在さえも曖昧な、そんな存在が、私を支えていた唯一なものだったのだ。
天から見下ろす男は、天使にも似た女の姿を目に焼き付け、静かに息を引き取った。


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