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satukiさん

新参者ですが、ひとつよろしくお願いします。

性別 男性
将来の夢 小説家
座右の銘 無理はしない。

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少年兵

13/05/11 コンテスト(テーマ):第三十回 時空モノガタリ文学賞【新人】 コメント:3件 satuki 閲覧数:1700

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何人死んだか分からない。

死体の転がる荒野にただ一人、たった一人で立つ少年がいた。
僕が志願したのはこんな死体の山を見るためじゃない。祖国の繁栄と勝利を祈って引き金を引いた。
しかし、最後に弾丸を撃ち込んだのは、年端もいかない少女だった。
理由は単純明快。スパイだったのだ。敵軍の兵士と情報交換をしていた。

ただそれだけ。
たったそれだけ。
そのために、その女の子は命を失った。
震える声で「助けて。」と命乞いをしてきた。

大人にもなっていないのに、人を合法的に殺している。何人殺しても罪人にはならず、むしろ殺せば殺すほど英雄としてたてまつられる。

そして僕の目の前には死体の山が出来上がった。
反逆罪として殺された同僚、先輩、上官、市民。誰彼かまわず殺された。

勤め始めて初めて感じたことは、「恐ろしい」だった。
見境なく殺されていく身近な人を見ていて、いつか自分が反ぴをひるがえした時、きっとこの死体の山に加わるのだろう。そう思うと、恐ろしくてたまらなかった。

だから、強い方につき従った。
命令とあれば少女さえも打ってきた。
上官だった人間でさえも殺してきた。
でも、その先にあったのはこんなものなのか。

少年兵は拳銃を口に咥えて、しばらく躊躇った後、引き金を引いた。

鋭い轟音が空を染めて、鮮血が花のように広がった。
小さい頭の後頭部は炸裂して、脳漿が飛び散った。
そして少年は解放された。
この醜く、ずる賢く、強大でおぼろげな世界から。

少年の死体は、その辺りに転がっている死体の山の一部になって、そして、少年はそのことすらも分からないまま、息絶えた。


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このストーリーに関するコメント

13/05/11 光石七

拝読しました。
こんな悲劇が今も世界のどこかでは起こっているんですよね…
平和を祈らざるを得ません。

13/05/11 草愛やし美

satukiさん、拝読しました。
悲しいですね、むごいという一言では片づけられない現実がこの世界にはあります。どこかの国でこんなことがある限り、この星に平穏な未来はないと思います。

13/05/14 クナリ

鮮烈な感情が漂っていますね。
ストーリーを構築したり、あるいはもっと深く具体的な心理描写がされていれば、さらに題材が生かされていたと思います。

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