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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
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海に流された小瓶のお話

13/05/04 コンテスト(テーマ):第二十九回 時空モノガタリ文学賞【 手紙 】 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:2613

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 私を拾ってください。何度もお願いしました。でも、この浜の人たちにも、気づいて貰えず、また、私は旅立ちました。今度は、どの浜辺に辿り着けるのでしょう。思えば、何年前のことでしょう私が旅立ったのは……。私のご主人様は、あの故郷の浜から、私を海へ放り投げたのです。私は、波に揺られ続けました。お魚に食べられそうになったこともあります。嵐の日に大波にのまれ海底へ沈んでしまい何年も海底に留まっていた時は、さすがにもう二度と浜に浮き上がれないだろうと覚悟しました。
 でも、今日、私は、日の光溢れる浜で、ある人に拾われたのです。ようやく、役目を果たせるのです。私を拾ってくださった人は、私を大事そうに抱きかかえ、歩き出しました。私はどこの浜に着いたのでしょう? きっと、素敵な方に拾われたに違いありません。
 小瓶の私の中にはどんなお手紙が入っているのかしら──恋人になってください? それとも、お友達募集? 秘密の合い言葉が書かれていて、小瓶の手紙を通じて知り合った異国の二人が、いつかどこかの港で、落ち合う、何て、ロマンティックなんでしょう。昔、私は私の持ち主であったおばあさまから、小瓶のお手紙のお話を聞きました。その頃、私はあのお家の居間にちょこんと置かれていました。
 おばあさまは、小瓶の手紙の恋人たちという、ご本をお孫さんに読み聞かせていたのです。私は、こっそり聞いていました。耳を澄ませて、一字一句も聞き逃さないようにと……。そのお話は、ひとりぽっちの女の子が、お友達を求めて小瓶にお手紙を入れて海に流すというものでした。やがて、その小瓶は大海原を泳ぎ切ってある国の若者に拾われるのです。若者は、小瓶のお手紙を読み、異国にいる彼女に日夜、想いを馳せるようになり、やがて、船乗りになってその国を訪れ、彼女に出逢うというお話でした。もちろん、二人は恋人になったのです。お互いの国も時間も距離も超え、結ばれる恋、何て素敵なのでしょう。そういう役割を私も担ってみたい、いつの頃からかずっとそう願うようになりました。その家の孫さんが、小瓶の手紙の話を憶えていたのです。お陰で私は、手紙を運ぶ小瓶になれたのです。彼女はどんなお手紙を入れてくれたのでしょう。私は海の中でお手紙を守るため、必死で波を乗り越えたり、お魚から身をかばったりして苦労したものです。ようやく、その大任が果たせます。彼女のお手紙は、何と書かれているのでしょう? 
 私は、ある一軒の宿のテーブルの上に乗せられていました。いよいよです、私は開けられました。どうしたことでしょう、笑い声が、響いてきます。
「〇点だって、小学校四年のこの子、悪い点のテストを隠そうとしたんだ。何々、サラ・コベルン、えっ! あの投稿してきた素人小説家の、まさかなあ」
 私の夢は終わりました。私は、小瓶、悪い点のテストを海に流された小瓶だったのです。でもね、この若者、サラに会う予定のある人だったのです。なんという奇跡、この若者は編集のお仕事をしている方だったのです。私は、もう二度と逢えないと思っていたご主人様のサラに逢うことができました。そして、私を見たサラの驚いた顔と言ったら、それは、それは楽しいものでした。サラは、苦笑してそれから大笑いしました。私を持ち上げ懐かしそうに言ってくれました。
「あなたは凄い、たいした小瓶よ、十年もかかって、しかも、編集者さんを私の元に連れてきてくれたのよ」
「いや、小瓶を見つけたからでなく、あなたの小説がよかったからですよ。出版のご案内を私が知らせに来る前に寄った海辺の町で見つけた偶然は凄いかもですね」
「でも、悪いお点のテストが見つかってしまいましたわ」
「お茶目でいいじゃないですか、この逸話も小説の宣伝に使えますよ。奇跡の小瓶が呼んだ小説家ってことにしてね」
「えー、困りますわあ、テスト〇点……」
「いや、そこは美談に変えましょう、私の小説を読んでくださいって手紙にしちゃいましょう。でも、小瓶に入れて海に流せば、いつか誰かに見られる可能性があるのに、どうして?」
「私の国の言葉もわからないような遠い所まで、運ばれてしまえばいいと思ったのです」
 
 
 どうやら、私はご主人様のお役に立てたようです。大儀を果たせた私はまたサラ家の居間に置かれています。やっと安心できました。でも、長旅でしたが、思えば楽しい冒険の旅でした。小瓶に生まれてもこんな冒険ができる小瓶はそうはいないでしょう。内緒ですが、あの編集者さんとサラはもうすぐ結ばれるそうなんですよ。ということは、私は恋の架け橋になった小瓶ということになるんです。奇跡ってあるんですね。
 私はもう一度旅をしたいと思っています。将来、サラの子に願いを託そうと狙いをつけてます。その時は、ちゃんとした素敵な恋文を入れてくれると信じて密かに待っています。


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このストーリーに関するコメント

13/05/04 光石七

拝読しました。
小瓶目線というのが面白いです。
0点のテストを入れられたのには笑ってしまいましたが、ちゃんと人をつないで、いい仕事をしましたね。
素敵なロマンスに憧れているようですが、これも十分ロマンスだと思います。

13/05/05 草愛やし美

光石七さん、お読みくださってコメントありがとうございます。
確かに、小瓶は結果的にいい仕事をできたようです。でも、たぶん、彼自身は、まだ満足していないのでしょう、素敵な恋文を運ぶ小瓶に憧れ続けることと思います。結末をどうしようか少し悩みましたが、コミカルな話ですので、ハッピーエンドにしました。七さんのコメントを読んで、これでよかったと思いました、ありがとうございました。

13/05/05 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

小瓶の中の手紙って、すごく興味を惹きますね。
想いを込めた手紙が小瓶の中で何年も海を漂って誰かの手に入る
なんてロマンティックな設定ですが、出て来たものがビックリでした。

でも、最後はハッピーエンドで嬉しいですね。
夢のあるお話ありがとう!

13/05/05 ohmysky

どんな展開になるかと思いきや......
この展開は予想できませんでしたね。ラブロマンスかと思って読み進んでましたから。
ある意味、楽しく読めました。

13/05/05 ドーナツ

ロマンチックですね。

瓶に手紙を入れて流してみたいと思ったことがあります。何処へ行くのかわからないというのも、それはそれで面白いものです。
このお話の瓶のように、男女を結びつけることもあレバ、素敵ですね。

0点のテストは、ちょっと恥ずかしいけど、愛嬌があっていいですね。優しさに溢れたロマンス小説ですね。

13/05/06 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

海を旅する小瓶、ロマンチックですね。
誰に読まれるかも、いつ読まれるかも、永遠に読まれないかもしれない
けれど未来にむかっていることだけは確実な手紙
いつか拾ってみたい気がします。

13/05/06 kotonoha

草ちゃん 夢のある物語ですね。
私もいつかロマンが詰まった小瓶を流してみたいと思います。
いつもワクワクさせてくださってありがとうございます。
また来ます。

13/05/08 草愛やし美

泡沫恋歌さん、お立ち寄りくださってありがとうございます。
ロマンティックな設定だったのですが、どうしたわけか、書いている間に、この中味になってしまいました。苦笑
たぶん、昔、テストを川に捨てた私自身の経験が、そう書かせてしまったのかと思います。でも、このままではあまりにも切ない小瓶のために、結果をよくしました。喜んで下さったコメント見て、ほっとしました。ありがとうございました。

13/05/08 草愛やし美

ohmyskyさん、コメントいつもありがとうございます。
途中で驚かせてしまう展開になってすみませんでした。でもわかってくださって嬉しいです、コメディロマンスというカテゴリーとかあるのでしょうか? 楽しく読んで貰えたようで、ほっとしています、ありがとうございました。

13/05/08 草愛やし美

ドーナツさん、いつもお立ち寄り感謝しています。
私も昔、小瓶に手紙を入れるとか風船に手紙を結び付けて飛ばすとか、ロマンティクな設定を夢にみた一人です。手元に適当な小瓶がなく、飛ばせる風船もなかったので、夢は叶わなかったです。あの海を越えられる小瓶ってどんな種類のものなのでしょうね。蓋がしっかり止まらないといけないでしょうから、相当凄い根性のある瓶でないと駄目でしょうね(爆笑)楽しいコメントありがとうございました。

13/05/08 草愛やし美

そらの珊瑚さん、お立ち寄りありがとうございます。
とても素敵な詩のようなコメント嬉しいです。確実に未来に向っている手紙、私も拾ってみたいです。もしかして珊瑚さんや私が流した小瓶が、何年も経ってどこかに辿り着くかもしれないということは、希望なんですね。
自分が残せるものとして、創作をして小瓶に詰めてネットで流しているなんて考えると楽しいかもですね。誰も拾ってくれないと寂しいから読んでもらえてほっとしています。

13/05/08 草愛やし美

月見草さん、お立ち寄りくださってありがとうございます、コメント嬉しいです。
わくわくして読んでくださる方がおられると思うだけで、私は幸せになれます。こちらこそ、いつも、お読みくださって感謝しています。

13/05/10 鮎風 遊

大海原を漂う小瓶、そして浜に辿り着く。
まずはご苦労さんと言いたいですね。

そこからまたドラマが…、想像が膨らむ物語でした。

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