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鮎風 遊さん

訪問していただき、ありがとうございます。 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 このためひとり脳内で反応を起こし、投稿させてもらってます。 されど作品は次のシリーズものに偏ってしまってます。。。 ツイスミ不動産。。。 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)。。。 未確認生物。。。 ここからの脱出、時には単品ものも投稿したいと思っております。気が向いた時にでも読んでいただければ嬉しいです。    

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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漢字一文字の旅 連載2

13/04/30 コンテスト(テーマ):第七回 【自由投稿スペース】 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:2112

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旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
脳の中でも歩ける。

旅は道連れ、世は情け。 
皆さまからの熱い情けを受けて、御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどをよろしくお願いします。


連載2  純 穴 丼 波 麝 梅
     風 鶻 湖 石 犬 情


2−(1) 【純】

 【純】、汚れがないこと。
 「純愛」、「純真」、「純情」と熟語を作る。
 英語ではピュアー(pure)。日本語のジュンと同様に響きが良い。
 【純】は、元々厚織物の端に垂れた混じりけのない単色の糸のことらしい。

 しかし、こんな【純】、「糸」と「屯」に分解できる。そして語源を辿(たど)って行くと、この「屯」、なかなか大したものなのだ。
 地面を突き破るために、草の芽が頭をもたげる様。地中でぐっと力を溜め込んでいることを言うらしい。
 「糸」の横にこんな力強い「屯」が貼り付いて、「糸」が秘めた力を持ったことになる。

 したがって【純】、本来はまことにパワフルなのだ。
 例えば、「純愛」、「純真」、「純情」。
 現代の流れから行くと……、それらは美しい。しかし、何か弱々しさを感じ取ってしまう。

 だが、【純】は元来充分過ぎるパワーを保持している。
 だから、人生の旅路の果てに、たとえ満身創痍(まんしんそうい)でヨレヨレだとしても、「純心」でありさえすれば、清々しく、かつ力強く生きて行ける。

 なぜなら、そこにはまだまだ新芽吹く 【純】パワーが残されているからだ。


2−(2) 【穴】

 【穴】、中国の黄土地帯では地下の家に住んだ。その土の部屋への入口の形だとか。

 不思議の国のアリス。
 それは一八六五年に、イギリスで出版された児童文学。作家は数学者だと言う。
 アリスは白うさぎを追い掛け、【穴】に落ちる。そして、身体を大きくしたり小さくしたりして、言葉を話す動物たちの世界を冒険する。不思議な話しだ。
 ワンダーランドへと通じるこんな【穴】。なぜか歳を重ねても忘れられない。

 だが、世間には好まない【穴】もある。
 その一つが「空っ穴」(からっけつ)。財布の中が空っぽなのだから、堪らない。

 そして、【穴】の中には、だいたい何かがいたり、何かあったりするものだ。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」
 危険はあるが、勇気を持って飛び込めと……、そう急かされてみても、やっぱりビビッてしまう。

 それに比べ、一生に一度は味わってみたい【穴】がある。
 それは『大穴』だ。
 しかし、普段の生活、巣穴にじっと引き籠もるような穴子状態では、そんな【穴】には絶体に巡り逢えない。 

 否、そう雖(いえども)も……。
 勇気と幸運がない限り、とにかく【穴】に近付かない方が良いのかも知れない。


2−(3) 【丼】

 【丼】は不思議な字だ。
 井戸の中に水が落ち、跳ねる様子の「ゝ」が「井」の中にある。そして、その音が……「どぼん」。 
 それが高じて、(どんぶり)と読むようになったと言う。
 アホにすな! そう叫びたくなるが……、かなりホントの話しなのだ。

 そんな御高説以外に、江戸時代のこと。
 鉢に盛り切りだけの飯屋のことを、ケチで無愛想と言う意味で、慳貪(けんどん)屋と呼んでいた。
 店員は無愛想で、実に慳貪な振る舞いばかり。だから、そこで出される飯が、慳貪振(けんどんぶ)りと呼ばれるようになった。そして最終的に……「どんぶり」に短縮されたとか。

 どちらも眉唾ものだが、それにしても【丼】は、頭にありとあらゆる字を付けて、「OX丼」。どんどんと増殖してきた。
 そして、これからも好き放題に増え続けて行くだろう。

 その途中にある今でさえ、「OX丼」のメニューは無限にある。
 天丼に鰻丼、そしてカツ丼。
 これくらいまではまだまだ情緒もあって、我々庶民も暮らし易かった。

 しかしだ。
 今はカレー丼までもが……。そんなの、ただのカレーライスじゃないのか?
 その上に、驚きの【丼】がある。それは……目玉焼き丼。せめて出汁巻丼にして欲しい。
 日本の食文化は、もう地に落ちてしまったのか。
 近々に、スウィーツ・宇治抹茶丼とか、鮭茶漬け丼とかが登場するかも。

 そして究極のどんぶり、それはどんぶり三段重ねの『丼々丼』(どんどんどん)が出現。
 そんな予感までしてくる。
 そして、それが現実になった時、大和民族が滅びる時なのかも知れない。

                   丼々。
               追記: ↑は、草々の代わり。


2−(4) 【波】

 【波】、それは空間や物体に加えられた状態の変化が、次々に周囲にある速さをもって伝わっていく現象を言うとか。
 砂浜に立つと水平線の彼方より途切れることなく、【波】が押し寄せてくる。
 さざ波のような小さな波もあるが、津波のような大きな波もある。

 しかし、世の中には目には見えない【波】もある。音波、電磁波、光波の類で、人の生活に活用されている。
 そんな様々ある波の中で、一番やっかいでなんともならない【波】がある。

 それは……『年波』。
 音も立てずにひたひたと、しかし確実に。 
 人は感じずに、この波を被り続けて行き、不幸にも……、ある日ふと気付くのだ。
 新聞の活字がはっきりと読めな〜い!
 オシッコのキレが悪くなったー!
 そして、吐く言葉は一言……「なんでだろ?」

 日常会話、それはいつの間にか、アレ/コレ/ソレの三大指示代名詞だけで、事を済ませてしまう。ほとんど何が言いたいのかわからない。だが心配無用、ツレアイだけはわかってくれるから……と自虐的に、互いに慰め合う。

 そして人たちは、この状態を自覚した時に、必ず呟くのだ。
「やっぱり、寄る『年波』には勝てないなあ」と。

 まことに、こんな『年波』を上手く乗りこなして行けるサーフボード、どこかに売ってないものだろうか?


2−(5) 【麝】

 【麝】(じゃ)、漢字の「鹿」を下から「射」で支えている。
 麝香鹿(じやこうじか)の【麝】で、難しい字だ。
 そのジャコウジカは、体長一メートル程度の鹿より原始的な動物。南アジアの山岳地帯に生息しているらしい。

 そして、そのジャコウジカの分泌物を乾燥した香料のことを麝香(じゃこう)と言う。それは甘い香りで、六神丸や救心などにも入っているとか。

 戦国時代、織田信長と同年生まれの細川幽斎(ゆうさい)と言う武将がいた。文武両道に優れ、歌人でもあり、立派な人だった。
 幽斎は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、これらの個性の強い三人の上司に仕え、七六歳の人生を全うする。

 現代社会を生きる満身創痍でヨレヨレのサラリーマンたち。幽斎に「上司と上手く付き合って行く方法」を伝授してもらいたいことだろう。

 だが、本エッセイでは……特別に教えましょう。
 なぜ細川幽斎は個性豊かな三人の上司に仕えることができたのでしょうか?
 そこには秘密があった。それは幽斎の奥さまだ。  

 三十歳の時に娶(めと)った二十歳のレディ、彼女は麝香姫(じゃこうひめ)と呼ばれていた。
 幽斎は、妻が甘く放つ香しい麝香の香りで、まるで魔法を懸けられたかのように……。
 生涯側室を設けず、浮気もせず、勝手気ままな上司が三人次から次へと変わろうとも、麝香姫の麝香の香りに操(あやつ)られ、ただただ仕事に励んだ。そして、その結果、戦国の世を生き抜くことができたのだ。

 現代でも一緒かな?
 嫌な上司にうまくホイホイし、出世できるかどうかは……。

 要は、ツレアイの……、香りの問題なのかも知れない。


2−(6) 【梅】

 【梅】(うめ)、この漢字は小学四年生で習うらしい。
 元々平安時代に、熱冷ましや下痢止めの漢方薬として中国から入ってきた若い梅の薫製。
 それは烏(う)のように真っ黒な色をしていて、烏梅(うばい)と呼ばれていた。

 烏梅は、中国語の発音ピンインでは、「wu mei」となる。これがどうも日本語発音の(ウメ)になったようだ。
 学名では「Prunus mume」と名付けられ、バラ科サクラ属の落葉高木だとか。

 「wu mei」がウメで、正式学名が「mume」。
 そして、バラとサクラの花の女王様たちと従姉妹だということらしい。
 まことに複雑な話しだが、現実に咲く梅、花は香もあり美しい。

「梅一輪一輪ほどの暖かさ」
 万葉の時代から、雪解けとともに、毎年春を感じさせてくれるのだ。


2−(7) 【風】

 【風】は「帆」の原字の「凡」と、「虫」が組合わさった漢字。
 しかし、なぜ虫なのだろうか?
 一説に、かぜが吹き、虫が揺らされている様だとか。「うーん、これこじつけ?」と言いたくなる。

 そんな【風】、映画では、やっぱり……「Gone with the Wind」。
 ヒロインのスカーレット・オハラの波瀾の人生を描いた「風と共に去りぬ」だ。

 その映像の中に、今でもアメリカで一番人気のセリフがある。それはレット・バトラーがスカーレット・オハラに吐いた捨てゼリフ。 
 振り向きざまに、
「Frankly, my dear, I dont give a damn.」
 要は、「知らないね、勝手にするがいいよ」と言い放つ。
 この「damn」が宗教上の観点からアメリカ人に衝撃を与えたとされている。

 さて、それでは日本人にとって、人気のあるセリフは何だろうか? それは、その後に続く、スカーレット・オハラの最後の言葉だ。
「After all, tomorrow is another day.」
 これが名訳され、字幕として登場した。

「結局……、明日は明日の風が吹く」
 まことに上手いこと訳したものだ。
「明日はもう一つの日」を、「明日は明日の風が吹く」とは。

 そして、その映画の初公開からすでに七十年以上の歳月が流れた。
 しかし、やっぱり明日になれば吹くだろう、明日の風が。

 しかも、きっと心に優しい風が……。
 いや、そうあって欲しいものだ。


2−(8) 【鶻】

 【鶻】、「骨」の横に「鳥」がいる。
 この漢字を読める人は、そういないだろう。
 「骨」の「鳥」だから、うーん、そうそう焼鳥屋の(てばさき)、思わずそう読んでしまいそうだ。

 だが、正解はもっともっと格調高い。それは(はやぶさ)と読む。
 はやぶさは鳥で、「隼」とも書く。
 直線的な飛翔で、獲物を見つけると翼をすぼめ急降下。そして強烈な足蹴りキックで一撃し、捕獲。なんとカッコイー鳥なんだろう。

 東北新幹線、東京から青森まで時速三〇〇キロで走る最新鋭のE5系、それは「はやぶさ」と名付けられているとか。
 ファーストクラスのグランクラスまで備えられ、お酒は飲み放題。そんな高級新幹線の名称、それはあくまでも「はやぶさ」であって、決して骨の鳥の【鶻】にはなり得ないのだ。

 しかし、もしも……、もしもの話しだが、新幹線「はやぶさ」に、手羽先の入った駅弁、【鶻】弁当が出現したら……。
 きっと旅は、愉快なものになるだろう。


2−(9) 【湖】

 【湖】、それは「さんずい」に「胡」の組み合わせ。
 「胡」は「おおう」と言う意味があるとか。そのため、水でおおわられた所、そこが【湖】となる。

 日本には、楽器の琵琶の形をし、水におおわれた所がある。それが琵琶湖だ。
 この湖、なかなか大したもので、一〇万年以上存在し続けてきた古代湖の分類に入る。
 世界に二〇ほどしかなく、その兄弟にはバイカル湖や、モンゴルの青い真珠のフブスグル湖がある。

 そんな古代湖の中でも最もミステリアスな湖、それは南極大陸にあるボストーク湖だ。
 琵琶湖の二〇倍以上の大きさで、氷床から四、〇〇〇メートル下に静かに眠っている。
 水温は氷点下三度、それでも氷らずに液体のまま。湖を被(おお)う氷の圧力と地熱で、氷点下でも氷らないそうだ。

 現代人の祖先の新人類が誕生したのが約四〇万年前。この湖はそれ以上に、五〇万年以前から氷で被われ、氷底深く眠り続けてきたと言われている。
 したがって、未だ人類は誰一人として、その湖畔のほとりに立ったことがない……ということになる。

 こんな【湖】という漢字、まことに神秘な世界へと誘(いざな)ってくれるものなのだ。


2−(10) 【石】

 【石】、これは「厂」で表される崖に、「口」(いしころ)が転がっている様を象形にした漢字だとか。
 そのためか、石の大きさは岩より小さく、砂より大きいのが常識。

 だが、それとは異なった例がある。それは「蛇石」(じゃいし)と呼ばれている【石】だ。

 今から四百三十五年前、織田信長は安土城の築城を開始した。その時、蛇石と呼ばれる一〇〇トンの石、それは岩より大きい石が安土山山頂に引き上げられたとか。
 だがその作業の最中に、山から一度転がり落ち、何百人の人夫を圧死させたと伝えられている。
 不幸なことだ。

 そして現代、そんな大きな蛇石を、歴史ロマンを追い掛ける人たちが必死になって探している。だが見付かっていない。
 なぜなのだろうか?

 しかし、そこには伝説がある。
 山頂にそびえ立つ天主は、高さ四六メートルの七階建てだった。そんな巨大な天主を支えるために、それはその地下に埋められたとか。だから見付からないのだと言い伝えられている。

 本当かどうか、一度掘ってみたいものだ。
 あれば……流石(さすが)! 

 流石流石と…【石】だらけの、声があがることだろう。


2−(11) 【犬】

 【犬】、「大」の字の右肩に点を打って(いぬ)と読む。
 不思議だ。なぜ、こんな字体で「いぬ」なんだろうか?
 そうならば、「小」の右肩に点を打って、(ねこ)と読めば良いものなのだが……。

 調べてみれば、【犬】、これでもどうも象形文字だとか。どうして「いぬ」の姿形(すがたかたち)が、【犬】になったのかがわからない。

 右肩の点は何なんだろうか? 
 それは尻尾だとか、寄生している蚤だとか……、ヤケクソ気味に言い放つ輩までいる。

 そんな【犬】だが、犬の日は11月1日。
 なぜなら、ワンワンワンと三回吠えたから……だって。
 そんなぁ〜!  と叫びたくなる。

 だが、随分と人間がお世話になってきた「お犬様」。
 そうならば、11月1日に、亡くなった「お犬様」の成仏を祈り、象形文字・【犬】文字焼きを始めてみてはどうだろうか。

 ウ〜 ウ〜 ワン!


2−(12) 【情】

 【情】、その字は「心」と「青」から成る。
 「青」は草木が茂る色であり、元々の有様のことを言うらしい。したがって、【情】は人の心にある元の有様のことだとか。

 だが、こんな【情】に、強い対抗馬が存在する。
 それは……「愛」だ。

 こんな【情】と「愛」、どこがどう違うのだろうか?
 侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を生むところだ。

 一般的には、心の向かって行く方向が違うと言われている。
 「愛」は、好きだからこそ相手を解放して上げたい、そんな許す気持ちになって行くのが基本だそうだ。
 一方【情】は、相手を縛っておきたい、また導きたいという独占の方向だとか。

 なぜかいつまでも別れずにいるカップル。女は時として切れる。
 そして……「あなたへの情はあるけど、愛はない」
 こんな捨てゼリフを吐くものだ。
 要は心根からの、独占だけはしておきたいという【情】の発露、そうではないかと思えてくる。

 一方、男の方も実に身勝手で、フランスの詩人、アンリ・ド・レニエは言う。
「男がもっとも情を込めて愛している女は、必ずしも一番愛したいと思っている女ではない」と。
 これはきっと、男にとって実務的、いや便利な、そんな女の方に、「愛」以上の【情】を抱くものなのかも知れない。 
 そして一番愛したい女より、手放せないものだと言いたいのだろう。

 そんな【情】、それはまさに「愛」を凌駕(りようが)するほど強いものなのだ。


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このストーリーに関するコメント

13/04/30 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

漢字の成り立ち勉強になります。
これはライフワークでやっていけそうですね。

13/04/30 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

ライフワークのつもりで、
旅は続けます…ので、ご愛顧のほど。

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