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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

性別 女性
将来の夢 可愛いおばあちゃん
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オレは新人に嫉妬する

13/04/28 コンテスト(テーマ):第三十回 時空モノガタリ文学賞【新人】 コメント:4件 光石七 閲覧数:1944

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「虎次郎、ご飯だよー」
マキの声を聞いてオレは駆け出した。お、マグロの刺身なんて珍しい。気が利くじゃねえか。
「たまには贅沢もいいでしょ?」
そうそう、安いキャットフードばっかじゃ飽きるっつーの。腹が減るから仕方なく食べてやるけどさ。
「虎次郎、なんでそんなにちまちま食べるかなー。時間かけ過ぎ」
余計なお世話だ。オレの勝手だろ。
 オレは虎次郎というマキに飼われている猫だ。もとい、飼われてやってる、だな。マキは結構いい年のはずだが、縁結びの神様に見放されているらしい。一人暮らしの寂しさを紛らわせたかったのか、3年前マキはオレを自分のアパートに連れてきた。親兄弟と引き離されたのだと思うが、オレも小さかったからその時の記憶は曖昧だ。気が付けば、オレはマキと暮らしていた。たまにオレを風呂に入れようとするのだけは閉口してしまうが、おもちゃで遊んでくれたり、膝に抱きあげて喉を撫でてくれたり、マッサージをしてくれたり、何かと世話を焼いてくれる。トイレも寝床もちゃんとしつらえてくれた。オレが放っておいてほしい時は、鈍いなりに察して自由にさせてくれる。飼い主としては一応合格だと思う。オレは今の生活がまあまあ気に入っている。
 マグロを堪能し、オレは毛づくろいを始めた。
「虎次郎、美味しかった?」
ああ、やっぱり魚は生が一番うまい。マキ、これからも頼むぜ。
 翌日、オレが昼寝から目覚めるとマキはいなかった。買い物だろう。オレは寝床から出て、思いきり伸びをした。エサ皿にキャットフードが3粒入っているのをみつけ、食べた。それから、お気に入りのネズミのおもちゃを転がしたり咥えたり、前足で弄んだりして遊んだ。飽きと疲れで欠伸が出てくる。そこへマキが帰ってきた。……ん? 買い物袋の他にも何か抱えてる? なんだよ、その黒い物体は。
「にー」
……げっ、黒猫のガキだ。
「チビちゃん、お腹空いてるよね? ちょっと待ってね」
マキはチビを抱いたまま台所に向かった。ミルクを鍋に入れ、火にかける。
「熱すぎてもダメだよね」
ミルクを皿に移し、指につけてチビになめさせる。おい、マキ。オレの飯は? オレも腹減ってんだけど。
「よかったー、食欲はありそうだね」
だからオレの分は? 刺身じゃなくてもいいから、何かよこせって。
「目もきれいだし、病気はないかな。一応注射は打っといてもらった方がいいかもね」
マキはオレを完全に無視してる。何メロメロになってんだよ。オレの飯も準備しろよ。
「虎次郎、うるさいよ。今チビちゃんの食事中。この子、捨てられてたんだよ。毎日ご飯食べてるアンタと違って、久しぶりの食事なんだから」
オレだってひもじいっつーの。
 オレがしつこく鳴いたからか、ようやくマキはエサ皿にキャットフードを入れてくれた。くそっ、これで勘弁してやる。オレがいつものようにゆっくり食べていると、チビが寄ってきた。まあ、興味はあるかもな。でも、てめえにはまだ早いって……ええっ?
「すごーい! 固形物、大丈夫なんだ。あはは、慌てなくてもいいのに」
マキ、笑いごとじゃねえぞ! こいつ、オレを押しのけてがっついてやがる。さっきミルク飲んだだろーが!
「これならずっとついてる必要ないね。なんて名前にしようかなあ?」
おい、まさかこいつを居候させるつもりか? オレは認めねえぞ。
「黒いから……。あ、黒丸ってどう?」
「にー」
……すごいタイミングで鳴きやがる。あ、全部食いやがった。
「かわいー。よろしくね、黒丸。――虎次郎、いじめちゃダメだよ」
マキ、オレの飯……。
 こうして黒丸も同居することになった。黒丸はまだしゃべることもままならないガキのくせに、マキの心をがっしり掴んでしまった。マキはオレより黒丸の世話に力を入れている。オレのより立派な寝床を作りやがって。エサも黒丸の分を先に用意する。黒丸はその後オレの分まで食うんだけどな。マキの膝に自分から乗って、「かわいいねー」なんて言われて喉をゴロゴロ鳴らしている。オレのおもちゃも取られた。時にはオレまでおもちゃにしてしまう。後ろから急に飛びついて爪を立てたり。てめえ、加減しろ!
「にー……」
「虎次郎、黒丸に何するの!」
叩かれた。ちょっと脅かしただけなのに。
 ある日、マキは酔っぱらって帰ってきた。
「なんでみんな新人ってだけで贔屓するのよ? たかがコピーで大げさに褒めて……。私の仕事は全然評価してくれないくせに」
会社の愚痴だ。新人の女の子がちやほやされるのが気に食わないらしい。……マキ。お前、同じことしてるの気付いてないのか?
 オレも新人になればかわいがられるんだろうか? そんな馬鹿なことを考えたりもしたが、オレはこの生活も悪くないと思い始めている。なぜなら――
「虎次郎さん、遊びましょ?」
か、かわいい……。黒丸は美猫だった。


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このストーリーに関するコメント

13/05/01 草愛やし美

光石七さん、拝読しました。
新人がどこで出てくるのかしらとわくわくして読み進み最後になるほどって思いました。〆かたがいいですね、同朋だったんですね。黒丸ちゃん、いい名前だなって思います。今度、白い子猫ちゃん来たら白丸確定かな? 

13/05/01 光石七

>草藍さん
ありがとうございます。
二匹目の猫が我が家に来た時の状況をもとに書いてみました。名前は違いますけど。
新人の癖に我が物顔のチビちゃん、それに押される先輩猫がすごくおかしくて…
ちなみに避妊手術をしたので、二匹が結ばれることはありませんでした(笑)

13/05/13 鹿児川 晴太朗

拝読いたしました。
題材は猫ですが、人間にしても新しい兄弟ができたらそちらばかり可愛がられて、とにかく人というのは新しいものが好きな生き物なんだなあとなんだかしみじみ思わされました。
飼い主のマキさんは少し可哀想ですが、最後の最後で虎次郎に救いがあったのが良かったです。

13/05/13 光石七

>鹿児島 晴太朗さん
コメントありがとうございます。
あまりマキの気持ちは考えていませんでしたが(苦笑)、下の兄弟がいるので子供の頃はいろいろ思ったなあと記憶がよみがえりました。
猫の新人(新入り?)に振り回される先輩猫のお話を書いてみました。

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