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ぬるたんさん

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すばらしき防弾傘

12/04/22 コンテスト(テーマ):第四回 時空モノガタリ文学賞【 傘 】 コメント:2件 ぬるたん 閲覧数:4293

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 短いサイレンが鳴り響くと、皆が一斉にビルの壁に駆け寄って素早く傘を拡げるのも日常の光景になってしまった。最初の頃こそどこの小学生が傘をさし遅れてケガをしただの、直撃弾を受けた老人が転倒して骨を折っただのというニュースが流れていたが、もうそんなことは話題にもならない。話題にしたところで誰かに文句が言えるわけでもなく、これといった防御策があるわけでもないからだ。どんな天災もわれわれにはただ慣れることしかすべがない。
 しかしどんな事態でも儲ける人間というのはいるもので、ずっと横ばい状態の続いていた傘業界はこれで今や一番の成長産業である。ガスを感知するサイレンが鳴ってから胞子が降り注ぐまでにわずか15秒。どこかへ逃げ込む時間はないから、いつも手に持っている防弾傘をかざしてボタンを押す。バラバラバラと音高く降り注いでくるドングリ大の胞子を、衝撃を吸収する特殊な繊維が受け止めるのである。(なぜ金属製の傘ではだめなのかと問われた開発者は、気にいらない上司に実体験してみることをお勧めしてこっぴどく叱られたそうだ)。この猛烈な音と衝撃を吸収する傘が出たおかげでわれわれはようやく昔のように町を歩けるようになったのである。今や傘なしで外出する人間はいないというわけだ。最近ではカラフルなプリント柄やスポーツタイプといったものまで登場したそうである。
 不便にも案外早く慣れたが、これももとはといえば地震から国民を守るために始まったことなのだ。竹の如く地面の奥深くまで根をはりめぐらして地殻を強化するという発想は悪くなかった。ただ植物は地下だけでなく上へも伸びることを忘れていたのである。天高く伸びに伸びた植物はやがて巨大な胞子をのべつまくなしに上から撒き散らすようになった。胞子は破裂する直前にガスを出す。それを上空で感知するとただちにサイレンが鳴る仕掛けである。地表に触れた胞子は瞬時に地中にもぐりこむのだが、地面以外のものには急降下で直撃する。ドングリ大とはいえ猛烈な数が一度に降り注ぐと間違いなく顔は腫れ上がる。やれやれ、地震か、胞子の直撃か、どちらがよいかと言われても困るが、われわれにはとにかく辛抱するしかないのである。
 


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このストーリーに関するコメント

12/04/22 デーオ

ストーリーに矛盾はないし、面白い発想です。
もう少し緊張感を書き込めばよかったかなという気がします。

12/04/22 かめかめ

正統派ショートショートだ^^

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