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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

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『3』の欠落     (1998文字)

13/04/26 コンテスト(テーマ):第五回 【自由投稿スペース】 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:2829

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「ちょっと何か変だなあ」
 高見沢一郎はこんな独り言を吐きながら、単身赴任のアパートへと帰って来た。
 初夏の熱が籠もった部屋。まずはヨタヨタと冷蔵庫へと歩み寄り、冷え切った缶ビールを取り出す。そして命蘇生のために、グビグビと。
 とりあえずこれで一息入れて、後はパソコンの前にドサリと座り込んだ。そして「おかしなことが」と一人小首を傾げる。

 それはオフィスでの出来事だった。
 緊急案件が生じ、3階の会議室へと急ぎ向かうためエレベーターに乗り込んだ。しかし、しかしだ、3階のボタンを押そうとしたが……、ない!
 そう、あるはずの『3』のボタンが消えていたのだ。
「え、え、えっ! これって?」(汗、汗、汗)
 高見沢は呻きながらエレベーターから降り、ゼーゼーと階段を駆け上がった。

「3、3、3、なぜ『3』は消滅したのだ!」
 単身赴任の殺風景な一室で、缶ビール片手に、高見沢は犬の遠吠えのごとく叫ぶ。
 そう言えば最近のゴルフのこと、ショートホールでパーの『3』が取れない。しかもミドルのバーディーも、とんと縁がない。
「いやいや、これは腕が悪いからかな?」
 こう思い直したりもしてる時に、部下の榊原が話していたことを思い出す。

 あれは先週のことだった。生意気な部下であっても、たまには食事くらいは奢ってやろうかと、連れだって焼き肉店へと入った。
 そして、タン塩にレモン汁をたっぷりかけながら榊原が訊いてきた。
「高見沢さん、知ってますか? 最近わかってきたことですが、宇宙を司(つかさど)る神から与えられた人間の宿命ってやつ。それ何だと思いますか?」
 高見沢はこんなことを唐突に尋ねられても訳がわからない。「その大袈裟な宿命って、何だよ?」と聞き返すと、榊原は厚かましくタン塩2枚をまとめて口に放り込み、そしておもむろに。
「数字って、0、1、2、3と始まり、その後は百、千、万、億と無限に続いて行くでしょ。だけど、それぞれの人には、1年周期で変わって行く、欠落した数字があるのですよ」
「ホッホー、欠番ね。それはどんな数字だよ」
 高見沢は特に興味があったわけではないが、大袈裟に反応してやると、榊原は今度はロースを口一杯に頬ばって、嬉しそうに話す。ホント、遠慮のないヤツだ。
「例えばですよ、その欠番が768,076のような大きな数字だったら、日常生活に実害は出ないでしょ。だけど、時々神さまの気まぐれで、小さな数字を割り振ることがあるのですよね」
 高見沢はこんなくだらない話しに、「そんなのどこかの三流週刊誌の記事だろ」と結論付けた。しかし、榊原は怯(ひる)まなかった。
「実は私、ちょっと好きな娘(こ)がいたのですが、その娘いわく、ある日突然、数字の『5』がこの世から消えてしまったと。そのせいで、5円玉までもがなくなってしまったとか。その上にですよ、その娘がある時言ったんですよ、私との『ご縁』までデリートされたわって。その娘とはそれっ切りとなってしまって……、ホント、欠落数字って、生意気なんですよ」
 高見沢はこんなオヤジギャグ含みのアホ話しに開いた口が塞がらない。そのため安物の赤ワインを口からポタポタと、じゅんじゅんと焼き上がるカルビの上に零してしまった。

 こんな珍奇な会話を思い出した高見沢、「ひょっとすると、今の俺の状態って……、数字『3』の欠落ってことかな」とどことなく納得できる。
 それにしてもこれは大変なことだ。1年間、『3』という数字が目の前から消えてしまうのだから。
「思えば、部内での立ち位置は、居心地の良い『3』番手。これもなくなるということか? あ〜あ、俺はどうしたら『3』を奪回できるのだろうか?」
 まさにこれは非常事態だ。高見沢は神にもすがる思いでネットで調べてみる。するとどうだろうか、この現代社会で、数字の欠落が結構深刻な問題となってるようだ。
 そして幸運にも、その打開方法があった。
 いわく、なくした数字を取り戻すためには、まずは1万円のお供えを持って、数字地蔵に参れと!
 そうすれば、地蔵は宇宙の神に掛け合ってくれて、欠落数字を、自分が指定する数字に差し替えてくれると言う。
 高見沢はこれを読み、1万円とはちょっと高いが、とにもかくにもエレベーターの『3』のボタンがなくなってるのだから、早晩業務にも支障が出る。もう背に腹はかえられない。
「よし、明日参るとして、『3』の代わりに望みの欠番を提案する必要があるのだな。さあ、何にしようかな。うーん」
 高見沢はいろいろと考えを巡らせ、最終的に「俺も年だし……、ヨシ、この数字をぜひ欠落させてもらおうかな」と呟き、手帳に「183703」と書いた。

「183703」、それは……『いやみなおっさん』……とも読め、それを消してしまいたいと願うものだった。


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このストーリーに関するコメント

13/04/30 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

ユニークな発想にはいつも感心させられます。
「3」が消えたら、大3事な〜んちゃって(笑)

失礼しましたO┓ペコリ

13/11/30 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

ホッホー!

大3事。
オモシロ〜イ!

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