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名無さん

名無 ななと申します。よろしくお願いします。 スマホからの投稿なので、読みにくかったら申し訳ないです。

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レジ店員の独白

13/03/16 コンテスト(テーマ):第二十七回 時空モノガタリ文学賞【 財布 】 コメント:4件 名無 閲覧数:1589

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かさっ、ぴっ、かさ。
かさっ、ぴっ、かさ。
リズム良く品物を機械に読み込んでいく。私はこのスーパーのレジ店員。ここでパートを始めてから、三年が経とうとしている。 単調なこの仕事を楽しむコツ、それはリズムに上手く乗ることだ。
かさっ、ぴっ、かさ。
かさっ、ぴっ、かさ。
ふむ、 この栄養ドリンクとお弁当をご購入の、ちょっとお疲れ気味サラリー マンは茶色。使い古されて縁はボロボロだ。
かさっ、ぴっ、かさ。
この派手なお姉さんはきっとブランド物。色はえ〜と…ゴールド。よっしゃ!あったり〜。
そしてもう一つの楽しみがこれ。人の財布当てゲームだ。財布というのは結構個性が表れる。いつも渋い顔でレジを通る六十絡みのおばさんがキラキラのピンクの財布だったり、真面目そうな青年がアニメキャラの財布だったり。オーソドックスな財布のなかに、煌めくレア財布たち。そんな財布を見つけると、つい「素晴らしい!」と拍手喝采して握手を求めたくなる。勿論実際にはさりげなくチラ見するだけだ。怪しい店員だと思われたくはない。
そして今日もチラチラ財布を気にしながら、レジを打つ。今度のお客様は背の高い男性だ。缶ビール、さきいか、ナッツの詰め合わせ。今夜は晩酌ですか?
かさっ、ぴっ、かさ。
かさっ、ぴっ、かさ。がしゃっ…………。
いけない、つい財布に目を奪われてリズムを崩してしまった。しかし、目が離せない。なんだ、なんなんだこの財布は!
男性が手にした財布は、黒い革の長財布で、それだけだったらごく普通の財布だか…目をこすって見てもやはりどうみても……手足が生えていた。生身の細い足がパタパタと着地点を捜すように動き、妙に長い手は財布から千円札を抜き出されまいと必死に抑えている。その動きは愛嬌があってコメディのようだ。じっとその動きを見詰めていると、男性は少しも気にした様子もなく、財布の手を軽くあしらう。と、財布の足が男性が手を捉えて、グイッと押した。男性の手から飛び出した財布は、体操選手の様に見事な三回転で着地し、ビシッとポーズを決めたかと思うと、ばたばたとバランスの悪い体を左右に揺らしながら疾走しだした。一目散に出口へと向かう財布ーーー。
しかし次の瞬間、ぐわっと財布に黒い影が落ちたと思うと、目の前に男性の黒い革靴が降り下ろされ、行く手を阻まれて財布は尻餅をついた。ひょいっと財布は掴みあげられ、抵抗虚しく千円札を二枚抜き出されてしまった。私はなんだか後ろめたい気分でその千円札をレジにしまい、釣り銭を手渡した。財布はあたふたと小銭入れを広げ、小銭で少し膨らんだお腹を、まるで胎児を守る母親のようにぎゅっと抱き締めた。店を後にする男性の手元には、今度こそ中身を出されまいとするようにお腹を擦る財布の姿……。

と、まぁこのように、本当に財布というものは奥の深いものです。今日もレジ店員は、単調な日々に一片の奇怪を織り混ぜながら、軽快なリズムを刻みます。
かさっ、ぴっ、かさ、
かさっ、ぴっ、かさ、
………!ガチャン


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このストーリーに関するコメント

13/03/17 名無

はぐれ狼様
コメントありがとうございます!
どんな財布だったら面白いかなぁと悩んで書いたので、とても嬉しいです。

13/03/31 草愛やし美

名無さん、拝読しました。

凄い発想ですね、でも、もしかしたら、財布自身に意志があれば、せっかく抱いたお宝を盗られたくないという思いがあるかもしれません。財布は、持っている人の本質を表しているかもしれないですね。そう考えると、今後、財布を選ぶ折は慎重になりそうです。(笑)
面白かったです、ありがとうございました。

13/04/01 名無

草藍様
こんな使い辛い財布を使っている男性は、きっと懐の大きい男性だと思います。笑
突飛な作品ですが、コメントまでくださって、本当に嬉しいです。ありがとうございます。

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