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AIR田さん

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野で生きろ

13/03/15 コンテスト(テーマ):第二十六回 時空モノガタリ文学賞【 サーカス 】 コメント:0件 AIR田 閲覧数:1909

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「おはようピエロちゃん」
「さーかす!させろ!」
「はいはい」
私が野生の子ピエロを拾ってきてから一週間が経つ。野生のピエロはあまりお目にかかれず、日本では山間部の一部地域でサーカスをしているのが時折目撃される。子供の頃一度だけ、北アルプスの麓で見たことがあるが、私の姿を見るなり甲高い声を上げ逃げてしまった。それ以来野生のピエロを見たことがなかった。
しかし、野生のピエロを見なくとも、サーカス園に行けば、保護(ピエロ保護団体曰く捕獲)されたピエロ達の生態をいつでも見ることが出来る。
中でも、ユーラシアオオピエロのジャグリングは非常にテクニカルかつユーモラスで、上野サーカス園は毎日多くの来場者で溢れている。
基本的に、一般市民が野生のピエロを捕獲、飼育するのはポリジョイ条約によって禁止されているので、つまり私が子ピエロをかくまっているのは、
「犯罪なんだよなぁ」
つまりはそういうことで、それならそれで役所に報告しなければならないのだが、子ピエロの愛くるしさに魅了されてしまい、一週間が経ってしまった。
「さーかすさいこう!さーかすさいこう!」
私の気持ちなんて全く知らない子ピエロは、電灯の紐で空中ブランコの真似事をしてはしゃいでいる。
「どうしたものかな……」
これまでピエロにこれといって興味が無かったので、まさかこんな事態になるとは思っていなかった。
つい先日、絶滅危惧種に指定されていたニホンピエロを飼育し自宅でサーカスを行わせ、客から見物料を取っていた会社経営の男性が逮捕されたニュースが報じられ、日本ならずとも世界を大きく騒がせたばかりで、
「ふーん」
ピエロに興味が無かった私は、全くの他人事でいたが、今なら会社経営の男性の気持ちが少し分かる(見物料を取るという点では理解出来ないが)。
ピエロは、自由な空間で、自由にサーカスをしている姿が最も美しいのだ。
いつだったか、テレビでピエロ特集の番組でそう言っていた大学の教授がいた。
全くその通りだ。
高校生の頃、初めて出来た恋人と、上野のサーカス園に行ったことがあるが、そこにいたジャイアントピエロは目が死んでいて、来場者が来る度に向かって唾を吐いていた。それから数日後、そのジャイアントピエロが飼育員に大怪我をさせたというニュースが報じられ、私は言いようのない気持ちになったことを今でもハッキリ覚えている。
「おまえ、檻の中はいやだよね?自由がいいよね?」
「さーかすさせろ!」
「そうだね。自由にサーカスしてほしいな」
「ぴぃっ」
私は子ピエロを鞄に入れて、家を出た。

「お母さん!何じっと地面を見てるの?」
「うん?……なんでもないよ」
北アルプスの麓に広がる草原に、花で出来た大きなブランコと小さなブランコがあった。
「ぴぃっ」
時折、嬉しそうな鳴き声がどこからか、聞こえてきた。


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