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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
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ドリアン   (1998文字)

13/03/09 コンテスト(テーマ):第三回 【 自由投稿スペース 】 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2875

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「高見沢君、ちょっと頼みがあるんだけどなあ」
 正月も明けたある日、高見沢一郎は上司の花木部長に話しかけられた。
「なんですか?」と問うと、「君なあ、一週間ほどマレ−シアに出張するだろ」と部長がニヤリと笑う。
 確かに支援要請を受け、出向くことになっている。高見沢が「はい」と答えると、コテコテの関西弁で花木部長がほざいた。
「ホンマのことや、俺まだ……ドリアン食べたことがないんや。お前はエエやっちゃやろ、そやさかい……、土産で買うてきてくれへんか」
 こんなねちっこい要請に、高見沢は「うっ!」と唸った。
「ドリアンは天国の味、だけど地獄の匂い。ホント臭いっすよ。それにアルコ−ルは飲めませんから」
 駐在経験のある高見沢は知っていた。ドリアンは確かにチ−ズのように美味。だが精が強いためかアルコ−ルを控えなければならない。胃の中でドリアンとアルコールが相まって発酵し、夜中にうなされる。
 ほとんどアル中の部長に、高見沢はこれを言い訳として訴えた。その上に、新たな提案を。
「花木部長、他に良いお土産がありますよ。そうそう、蘭の花とか、蝶々はどうですか?」
 要は、匂いがきついドリアンの持ち運びはご勘弁願いたいのだ。しかし残念なことに、部長は怯(ひる)まない。
「食べたいんや! 買うてこなかったら、ボーナスはないものと思え!」
 まあ上司というものはすぐに権限を乱用し、まことに我がままなものだ。
 そしてこんな場面に、より不幸が。そう、イッチョカミのお姉が横槍を入れる。
「私もドリアン食べてみたいわ。これからも高見沢君が出世するように、一応……応援するからね」
 同期の、いや今ではお局様のマキコが、入社以来の『君付け』と『一応』を相変わらず外さずに、口をはさんできたのだ。
 高見沢はこんな恐いお二人さまに絡まれて、「ああ、わかりましたよ。鼻がひん曲がるほど……、くっさいドリアン買ってきますよ」と居直らざるを得なかった。

 あっという間に時は流れ、マレーシアでの出張業務は無事終わった。そして高見沢は帰路についた。
 もちろんドリアン二個を、匂いが漏れないようにシートでくるみ、ダンボール箱に詰め込んでだ。
 しかし、微かに漏れてくる。そのため機内持ち込みは禁止。
 マレーシア出国時、やたらと検査されたが、「これ持ち帰らないと、ボーナスがもらえません」と泣き付いて、なんとか日本へ無事ランディング。そして入国手続きを終え、ダンボール箱を抱えて税関へと進んだ。
「これ、何ですか?」
 さすが係官、勘が働く。「植物です」と素直に答えると、「植物検疫へ行ってください」と指示が飛ぶ。
 南国からの持ち込みは果物や花が多い。そのため検疫部署は長蛇の列。そこへ並んだ高見沢、やっと順番が回ってきた。
 高見沢はおもむろにデスクにダンボール箱を差し出した。検疫官は「開けます」とすかさず言い、手際よくカッタ−で包装を切っていく。高見沢はその手早さに感心しながら見ていた。
 そんな時だった、突然の出来事が。検疫官の目が黒から白に変わったのだ。後は「うっうっ!」と絶句。高見沢も思わず「うわっ!」と叫んだ。
 さらに後方の人たちは、驚きの声「わっ!」と発し、その後「わっ!」、「わっ!」、「わっ!」と波紋のように伝搬していった。最終的には、三、四〇人の人たちから「うわ−!」というドヨメキが起こり、一斉に後ずさりをしたのだった。
 原因は明らかにドリアン。それも密封され続けてきたメッチャ濃度の濃い匂い。検疫官が卒倒しかけている。
 されど高見沢は張本人、一旦「ゴメン」と小さくなったが、後は「スゴイ!」と感動しっ放し。そして、それはそれは危険な思考を巡らせてしまうのだ。
「ひょっとすると、ドリアンの匂いで人を殺せるかもなあ。ならばこれで、花木部長とマキコを、いっそのこと……」と。

 しかし、結果はだいたいたい意図に反するもの。
「高見沢、このドリアン、うまいよ」
「おいしいわ、高見沢君。出世街道ばく進してよ、一応応援するからね」
 花木部長もマキコもドリアンにしゃぶりついて、まことに上機嫌。
 それは粉雪が吹き付ける極寒の夕暮れのことだった。一面真っ白な公園にドリアンを持ち込んで、誰しも未体験な、雪のドリアン・パーティ。凍える北風が、悪魔の匂いをどこかへと運び去ってくれる。
 ドリアンの匂いで二人を卒倒させてやろう、あわよくばお陀仏になれと企んでいた高見沢、不運にもそれは果たせなかった。しかし、今は幸せ気分で一杯だ。
 男二人と女一人、六花(りっか)白銀の公園で南国の果物ドリアンにむしゃぶりついている。こんな珍奇で幻想的な、決して忘れることができない光景がそこにあったのだ。そして高見沢はしみじみと呟いた。
「ホント、ドリアン殺人事件にならなかって……、ほっ!」


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このストーリーに関するコメント

13/03/09 そらの珊瑚

鮎風さん、楽しく拝読しました。

ドリアンひとつで半径100メートル四方はト○レの臭いにも似ているというその匂いに包まれるという(?)史上最強な果物を買ってこいだなんて
ほんと、サラリーマンは辛いですねえ。

13/03/10 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

私もドリアンは食べたことないです。

とにかく、強烈なトイレ臭と腐敗したゴミの臭いが混ざったような悪臭で、
食べた後のオナラは地獄の臭さだと聞きました(爆)

そんなことをを想像しながら読んだら、まことに面白いお話でした。


けど・・・創作者の好奇心でドリアン食べてみたいσ(´∀` )ァタシ

13/03/11 草愛やし美

鮎風遊さん、面白かったです。

ドリアンは未体験の私ですので、匂いも味も想像でしかないのが残念です。殺人まで、できそうなその香しい香り、知りたいような、でも、それは恐怖なような……気がしています。

くさやより臭いのかしら? ちなみにくさやは臭いを嗅ぎました。食べたのか?ですって、無理ーーーーです。あんな生ごみのようなもの(すみません、好きな方)食べるどころじゃなかったです。すぐさま厳重にくるんで、冷凍しました。臭いには冷凍が一番、粉雪の降る公園でドリアン、妙案なんですよね〜なるほどと、頷ける結末でした。

13/03/13 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

そうですよね、上司は気ままなものです。
それでもたくましく、サラリーマンは頑張ってます。

13/03/13 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

そうですよ、一度食べてみてください。
100個くらい物語が生み出せますよ。

13/03/13 鮎風 遊

草藍さん

面白くて良かったです。

その通りです、冷凍で臭いは消えます。
しかし、とけると地獄です。

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