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- ドリアン (1998文字)
鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そう思って書いて来ましたが、老いは進んでいます。 されど諦めず、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 されど作品は、申し訳ございません、次のシリーズものに偏ってしまってます。 ツイスミ不動産。。。 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)。。。 未確認生物。。。 ここからの脱出を試みますが、なかなか発想が飛ばせなくて。。。老いるということはこういうことなんだと思う今日この頃です。 が、どうかよろしくでござりまする。
性別 | 男性 |
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将来の夢 | この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 |
座右の銘 | Do what you enjoy, enjoy what you do. |
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このストーリーに関するコメント
13/03/09 そらの珊瑚
鮎風さん、楽しく拝読しました。
ドリアンひとつで半径100メートル四方はト○レの臭いにも似ているというその匂いに包まれるという(?)史上最強な果物を買ってこいだなんて
ほんと、サラリーマンは辛いですねえ。
13/03/10 泡沫恋歌
鮎風さん、拝読しました。
私もドリアンは食べたことないです。
とにかく、強烈なトイレ臭と腐敗したゴミの臭いが混ざったような悪臭で、
食べた後のオナラは地獄の臭さだと聞きました(爆)
そんなことをを想像しながら読んだら、まことに面白いお話でした。
けど・・・創作者の好奇心でドリアン食べてみたいσ(´∀` )ァタシ
13/03/11 草愛やし美
鮎風遊さん、面白かったです。
ドリアンは未体験の私ですので、匂いも味も想像でしかないのが残念です。殺人まで、できそうなその香しい香り、知りたいような、でも、それは恐怖なような……気がしています。
くさやより臭いのかしら? ちなみにくさやは臭いを嗅ぎました。食べたのか?ですって、無理ーーーーです。あんな生ごみのようなもの(すみません、好きな方)食べるどころじゃなかったです。すぐさま厳重にくるんで、冷凍しました。臭いには冷凍が一番、粉雪の降る公園でドリアン、妙案なんですよね〜なるほどと、頷ける結末でした。
13/03/13 鮎風 遊
そらの珊瑚さん
そうですよね、上司は気ままなものです。
それでもたくましく、サラリーマンは頑張ってます。
13/03/13 鮎風 遊
泡沫恋歌さん
そうですよ、一度食べてみてください。
100個くらい物語が生み出せますよ。
13/03/13 鮎風 遊
草藍さん
面白くて良かったです。
その通りです、冷凍で臭いは消えます。
しかし、とけると地獄です。
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「高見沢君、ちょっと頼みがあるんだけどなあ」
正月も明けたある日、高見沢一郎は上司の花木部長に話しかけられた。
「なんですか?」と問うと、「君なあ、一週間ほどマレ−シアに出張するだろ」と部長がニヤリと笑う。
確かに支援要請を受け、出向くことになっている。高見沢が「はい」と答えると、コテコテの関西弁で花木部長がほざいた。
「ホンマのことや、俺まだ……ドリアン食べたことがないんや。お前はエエやっちゃやろ、そやさかい……、土産で買うてきてくれへんか」
こんなねちっこい要請に、高見沢は「うっ!」と唸った。
「ドリアンは天国の味、だけど地獄の匂い。ホント臭いっすよ。それにアルコ−ルは飲めませんから」
駐在経験のある高見沢は知っていた。ドリアンは確かにチ−ズのように美味。だが精が強いためかアルコ−ルを控えなければならない。胃の中でドリアンとアルコールが相まって発酵し、夜中にうなされる。
ほとんどアル中の部長に、高見沢はこれを言い訳として訴えた。その上に、新たな提案を。
「花木部長、他に良いお土産がありますよ。そうそう、蘭の花とか、蝶々はどうですか?」
要は、匂いがきついドリアンの持ち運びはご勘弁願いたいのだ。しかし残念なことに、部長は怯(ひる)まない。
「食べたいんや! 買うてこなかったら、ボーナスはないものと思え!」
まあ上司というものはすぐに権限を乱用し、まことに我がままなものだ。
そしてこんな場面に、より不幸が。そう、イッチョカミのお姉が横槍を入れる。
「私もドリアン食べてみたいわ。これからも高見沢君が出世するように、一応……応援するからね」
同期の、いや今ではお局様のマキコが、入社以来の『君付け』と『一応』を相変わらず外さずに、口をはさんできたのだ。
高見沢はこんな恐いお二人さまに絡まれて、「ああ、わかりましたよ。鼻がひん曲がるほど……、くっさいドリアン買ってきますよ」と居直らざるを得なかった。
あっという間に時は流れ、マレーシアでの出張業務は無事終わった。そして高見沢は帰路についた。
もちろんドリアン二個を、匂いが漏れないようにシートでくるみ、ダンボール箱に詰め込んでだ。
しかし、微かに漏れてくる。そのため機内持ち込みは禁止。
マレーシア出国時、やたらと検査されたが、「これ持ち帰らないと、ボーナスがもらえません」と泣き付いて、なんとか日本へ無事ランディング。そして入国手続きを終え、ダンボール箱を抱えて税関へと進んだ。
「これ、何ですか?」
さすが係官、勘が働く。「植物です」と素直に答えると、「植物検疫へ行ってください」と指示が飛ぶ。
南国からの持ち込みは果物や花が多い。そのため検疫部署は長蛇の列。そこへ並んだ高見沢、やっと順番が回ってきた。
高見沢はおもむろにデスクにダンボール箱を差し出した。検疫官は「開けます」とすかさず言い、手際よくカッタ−で包装を切っていく。高見沢はその手早さに感心しながら見ていた。
そんな時だった、突然の出来事が。検疫官の目が黒から白に変わったのだ。後は「うっうっ!」と絶句。高見沢も思わず「うわっ!」と叫んだ。
さらに後方の人たちは、驚きの声「わっ!」と発し、その後「わっ!」、「わっ!」、「わっ!」と波紋のように伝搬していった。最終的には、三、四〇人の人たちから「うわ−!」というドヨメキが起こり、一斉に後ずさりをしたのだった。
原因は明らかにドリアン。それも密封され続けてきたメッチャ濃度の濃い匂い。検疫官が卒倒しかけている。
されど高見沢は張本人、一旦「ゴメン」と小さくなったが、後は「スゴイ!」と感動しっ放し。そして、それはそれは危険な思考を巡らせてしまうのだ。
「ひょっとすると、ドリアンの匂いで人を殺せるかもなあ。ならばこれで、花木部長とマキコを、いっそのこと……」と。
しかし、結果はだいたいたい意図に反するもの。
「高見沢、このドリアン、うまいよ」
「おいしいわ、高見沢君。出世街道ばく進してよ、一応応援するからね」
花木部長もマキコもドリアンにしゃぶりついて、まことに上機嫌。
それは粉雪が吹き付ける極寒の夕暮れのことだった。一面真っ白な公園にドリアンを持ち込んで、誰しも未体験な、雪のドリアン・パーティ。凍える北風が、悪魔の匂いをどこかへと運び去ってくれる。
ドリアンの匂いで二人を卒倒させてやろう、あわよくばお陀仏になれと企んでいた高見沢、不運にもそれは果たせなかった。しかし、今は幸せ気分で一杯だ。
男二人と女一人、六花(りっか)白銀の公園で南国の果物ドリアンにむしゃぶりついている。こんな珍奇で幻想的な、決して忘れることができない光景がそこにあったのだ。そして高見沢はしみじみと呟いた。
「ホント、ドリアン殺人事件にならなかって……、ほっ!」