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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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アンドロメダ大サーカス団

13/02/25 コンテスト(テーマ):第二十六回 時空モノガタリ文学賞【 サーカス 】 コメント:3件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:2337

時空モノガタリからの選評

最終選考

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 いよいよ明日、サーカスがはじまるぞ。
 国中の人々が、待ちに待った、その名もアンドロメダ大サーカス。
 大テントの下では、明日の開幕をひかえた団員たちの、熱がこもった練習風景がくりひろげられていた
 団長のシノメンは、そんな団員たちをながめながら、満足げに口髭をひねった。
 彼の眼前ではいま、アズチがひとり、全身から汗をしたたらせながら、危険な技にとりくんでいた。
 シノメンは、彼の集中力のさまたげになってはと、固く口をむすんで、アズチの演技をみまもった。
 まずアズチは、地面の上に静かに足を踏み出した。
 それをみたシノメンは、ああっとおもわず声をあげそうになる自分をいましめた。まさにこのスリルをもとめて明日、客たちは来場するのだ。
 アズチは、さらに一歩、前にふみだした。さらに一歩、また一歩―――そんなふうにして彼は、むこうのゴールまで一度もたちどまることなくぶじ、たどりつくことができた。
「すばらしい」
 一歩まちがえば、たちまち命とりになったことだろう。シノメンはこのときとばかり、惜しげもなく、拍手を送った。
「あしたもこの調子で、たのむよ」
 つぎにシノメンがむかったところは、これまた命がけの技を練習しているコノハナファミリーのところだった。
 コノハナファミリーは、アンドロメダ大サーカスの最大の出し物といえる、『寝台横たわり』の離れ業を得意としていた。
 みるものの度肝をぬくこの技を演じられるものは、世界ひろしといえども、かれらファミリーのほかにはいなかった。それほどこれは、至難で、危険な技だったのだ。
 このときもまたシノメンは、慎重な足取りで、かれらファミリーにちかづいていった。まんがいち、騒音でもたてて、かれらの注意力をそいだりしたら、どんな大事故につながるかもしれなかった。
 ファミリーの五人の男女たちは、いま、用心深く、ベッドの上に乗りあがろうとしていた。
 ベッドのうえに、横になるときのその緊張感に、みているシノメンまでがハイテンションになってしまったほどだった。
 五人全員が、やわらかなベッドに横になるまで、三十分以上がたっただろうか。
 明日実際にまのあたりにする観客たちは、この緊迫にみちた30分間はこたえられないにちがいない。
 シノメンはほかにも、テーブルに向いあってじっと坐っているタツタブラザースや、やっぱり向こうでその場に動かずにいる団員の上に、いかにも満足そうな視線をめぐらせた。
「あとはもう、明日をまつばかりだ」
 団長は、なんどもうなずきながらみんなからはなれていった。
 翌日、昼からはじまるサーカスに、朝から大勢の客たちがつめかけた。
 くるくるくると、目にもとまらぬ前転をみせながら、子供たちが、そして親たちが、テントのまえまでやってきた。広場のむこうに高齢者の二人が姿をみせたかとおもうと、二人そろって、側転と前転、そしてバク転、さいごに女性が前方宙返り、男性がムーンサルトをみせながら、テント入り口のまえで着地した。
 宙高くにはりめぐらしたポールからさがる、いくつものブランコを飛び移り、ときに空中三回転をくりひろげながら、何十という数の男が女が、テントめざして殺到してきた。いくら人数がいても、かれらは、巧みに空を飛びかい、それがごく当然とばかりに、一度としてぶつかることもなく、つぎつぎとサーカス小屋に集まりはじめた。
 遠くのほうで、ドンというすさまじい音が響いた。数秒後に空を、大きく弧を描きながらひとりの男がとんできて、地面にひろげたネットにキャッチされた。焼けてちりちりになった髪の毛から彼が、大砲によってうちだされたことが判明した。その後もあちこちで轟音がとどろき、つぎつぎと大砲から発射された人々が、広場に飛んできた。
 空中にはブランコのほかにも、何本ものロープがはりめぐらされていて、地上30メートルの高さを人々が、駆け足になってサーカス小屋めざしてつきすすんでいた。なかには綱のうえで目隠ししているものや、自転車をこいでいるものもいた。それがかれらのふだんのもっとも安全な移動方法だった。
 昼になるまでにサーカス小屋のまえには、そんな連中たちで黒山のひとだかりができていた。
 そしていよいよ、開演の時がきた。
 入口があけられるやいなや、待ちに待った人々が、みないっせいに、またまた側転、前転、バク転をくりかえしながら、サーカスが演じられる舞台をとりかこんだ。それからも客たちはたえず、めまぐるしくうごきまわり、とびはねがら、舞台で演じられるアンドロメダ大サーカス団の、その場にじっとたちつくしたり、地面をカタツムリのようにゆっくり歩いたり、ベッドに静かによこたわったりするスリル満点の曲芸を、ハラハラ、ドキドキ、手に汗しながら、鑑賞しはじめた。


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このストーリーに関するコメント

13/03/18 光石七

団員よりも客のほうがスゴ技の持ち主とは…(笑)
それに慣れている身には、何もしなかったりゆったりした動きのほうがスリルなんですね。
これなら運動音痴の私でも団員になれるかも、と思ってしまいました。

13/03/19 W・アーム・スープレックス

三石七さん、コメントありがとうございます。

たとえば疾風怒濤の惑星の傑作SF小説が、お茶の間で熟年夫妻がのんびりよもやま話にふけっているモノガタリだったり、あまり多用はできませんが、これはひとつのテクニックといえるかもしれません。ただし私の場合、それをうまくこなしきれていませんが。

13/03/19 W・アーム・スープレックス

光石七さん。
大変申し訳ありません。光と三を、まちがってしまいました。深くお詫びします。

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