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クナリさん

小説が出版されることになりました。 『黒手毬珈琲館に灯はともる 〜優しい雨と、オレンジ・カプチーノ〜』 マイナビ出版ファン文庫より、平成28年5月20日発売です(表紙:六七質 様)。 http://www.amazon.co.jp/dp/4839958211

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将来の夢 絵本作家
座右の銘 明日の自分がきっとがんばる。

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原始の感覚

13/02/21 コンテスト(テーマ):第二回 【 自由投稿スペース 】 コメント:7件 クナリ 閲覧数:1880

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「男と女って友達になれると思う?」
「思う」
「知り合いみたいなやつじゃないのよ。親友みたいなやつ」
「思うよ。君が言ってるのとは少し違うのかもしれないけど」
「どうしてそう思うのよ」
「僕が今一番大切に思っている友達が、女の人だから」
「それって、私じゃないのよね」
「違う。君の知らない人」
「いくつの人?」
「少し年上。らしいってだけだけど」
「その人と付き合いたいとか、キスしたいとか思わないの」
「思わない。
たまに会ってくれたり、声を聞かせてくれたり、手紙を書いたりするだけでいい」
「そんな人がそんなに大事なの」
「正直、自分よりも大事だ」
「そんなのあてにならないわよ。あんた、自虐的で、生きがいがないって顔をいつもしてるもの」
「僕は家族が死んだら、ものすごく悲しむと思うけど、きっと泣かない」
「そんな感じがする」
「でもその女の人が死んだら、一生分も泣くと思う。いつまでもいつまでも泣くと思う」
「変なの」
「変だね」
「むこうはあんたのこと、どう思ってるの」
「僕と同じように思ってくれてるらしい。保証はないけど」
「じゃあ、男女の友情は存在すると考えてる人なんだ、あんた」
「どうかな」
「どうかなって」
「友情なんて都合のいいもの、僕らにはないよ」
「友情がないのに友達って、変じゃない」
「他に適切な言葉がないんだよ」
「まじめに考えてるの」
「君が思っているよりも、僕らはずっと不器用な関係なんだよ。
感情に名前をつけることもできない、ひどく原始の感覚なんだ
ただ、お互いにものすごく大切ってだけで、それ以外がないんだよ。
その意味も、その先も、その根拠もないんだよ」
「変なの」
「変だね」
「前の彼女と別れたのは、その人が原因じゃないの」
「彼女には、そんな女友達となんて連絡を取らないでくれって言われたんだ。
あたしと女友達、どっちかを選んでって」
「あんた、彼女と友達天秤にかけて、友達をとったわけ」
「だって、ずっと大事なんだもの」
「どれくらい悩んだの」
「彼女のことも好きだったから、少しは悩んだよ。
息を吸って、ため息をつき終わるくらいまでの間」
「ため息をつき終わった後、次の一言で捨てたわけね」
「あの人と関わるなというのは、僕に僕でなくなれと言っているのと同じだよ。
それは、断るだろう」
「あんた、心を捧げちゃってるわね。
女神みたいにあがめて、理想を見て、その人に依存してるんじゃないの」
「そんな崇高なものじゃないよ。もっと何気なくて、そのくせゆるぎないものなんだ。
水とか、風みたいに。
理想なんて見ていない。何の期待もしていないし。
あの人のどんな醜い姿やひどい性質を見せつけられても、いっさい幻滅しないと思うもの」
「変なの」
「変だね。あの人も変な人だし」
「どんな人なの」
「変わっているよ」
「あんたより?」
「もしかしたらね」
「それなら相当ね」
「でも、きれいな人だよ」
「その方がむかつく」
「かもね」
「あのさ、もしも、もしもよ。その人と夜、二人っきりの部屋で、同じベッドに入ったとしてよ。
何もしないでいられるの?」
「……それはさすがに無理かもね」
「友達なのに寝ちゃうんだ」
「友達だったら、寝てはいけないの?」
「あんた、最低」
「今のは買い言葉だったよ。ごめん」
「でも、寝ちゃうんでしょう」
「いや、本当は多分、何もしないと思うよ。
顔を互いに横に向けて向き合って、おやすみ、はいおやすみ、ぐう、みたいになるんじゃないかな。
翌朝も、おはよう、はいおはよう、って言って、一緒に朝食を食べて、他人らしく別々に出かけて」
「ほんとにそんなことになるの」
「わからないけど、一番確率が高いパターンは、それだよ」
「すごく変なの」
「すごく変だね」
「……寒くなってきた。もう帰ろうか」

「雨が降りそうだ。雪は降らなさそうだけど」
「ねえ、私思うんだけど、あんたやっぱりその人のことが好きなんじゃないの」


「君には、わからないよ」





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このストーリーに関するコメント

13/02/21 泡沫恋歌

クナリ様。

拝読しました。
ちょっと不思議な話ですね。
私個人としては男女の友情は存在すると思っています。

13/02/22 クナリ

泡沫恋歌さん>
まったく持って、変な会話ですね(^^;)。
男女の友情ですね、存在すると思うんですけどね…本人たちが「友情だ!」と言い張っても、多くの他人は全てを分かったような顔で、それを愛情ということに『してしまう』のでしょうね。

自分にとって今…というか、ずっと前から一番大切な友人が異性なので、それについての他人の不理解に、ずっと苦しんできました。
そんな感覚を、なんとなく文章にして形作ってみたのが、この投稿なのかもしれないです。
自己満足ですね(^^;)。

13/02/22 草愛やし美

クナリさん、私も男女間の友情は存在すると思っています。でも、ここまで思い入れできるのかと感じます。実際、クナリさんには、そういう方がおられるのですね。それは、親友を持っていらしゃるということでしょうね、羨ましい限りです。

 

13/02/23 クナリ

草藍さん>
「親友ッ!」というほどの熱量もなく、会わないときは一年に一度も顔も合わせないローテンションな関係なのですが、「ああ、この人がこの世からいなくなってしまったら、自分が生きている意味も半分近くが喪失するかもなー」と思ってしまう変な友達です。
異性ということで、自分が特別視しているのかもしれないんですけどね。
以前、やさぐれた自分のせいでその人との仲がこじれて疎遠になり、それからだいぶ時間が経って「もう一生言葉を交わさないのかもしれないな…」と思っていたとき、その人がクナリの見るはずのない場所で(ネット上ですが)、クナリのことを大切に思ってくれているという書き込みをしてまして。
それを偶然見つけたとき、クリックもスクロールもできずにただずっと固まっていました。涙ばっかりぼたぼた落ちて。
恵まれた出会いをしたなあとは思っています。
…何の話や(^^;)。

13/03/03 名無

男女とか、人間かどうかすら問題にならない関係の人が、わた

13/03/03 名無

変なところで間違って投稿してしまいました。ご免なさい。
私にもこんな不思議な関係の人がいました。本当に人と人との関係って不思議なものですね。

13/03/04 クナリ

名無さん>
お読みいただき、ありがとうございます。
出会いや関係の仕方って、本当に不思議ですね。
自分の価値観や判断基準や優先順位も、ほとんどが誰かとの出会いによって形作られている気がします。

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