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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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8

憑喪神

13/02/18 コンテスト(テーマ):第一回 【 自由投稿スペース 】 コメント:4件 石蕗亮 閲覧数:2099

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ドサッ
私は袋の中に投げ捨てられた。見上げた視界には少し寂しげな持ち主の顔が見えた。少し溜息をつくと彼女は思い切るように袋の口を縛った。
ビニールで歪んだ世界からはもう今までの景色を見ることはできなかった。
 私は人形である。遊ぶときは友達として、夜は眠りに着くまで私を抱き私は彼女の安眠剤だった。彼女は私を糧に成長してくれた。彼女が私を必要とし大切にしてくれたから、私は自分の存在に誇りを持ち、彼女を見守った。
彼女が悪夢にうなされれば枕元でなだめ安眠を守り、失くし物があれば探してわかりやすいところにそっと置いておいた。
 月日は流れ彼女も大人へと成長し、もう私で遊ぶこともなくなって大分経つ。私に毎日のことを話しかけてくれることもなくなり、私を抱かなくても眠りにつける。それでも部屋の中に飾っておいてくれているだけで、私は彼女の成長を見守ることができていた。
 しかし、それも今日までのようだ。別れの時がきたようだ。さみしくて悲しくて、私は心が痛んだ。「明日にはゴミ捨て場か。」紙くずに埋もれながら私は今までを思い返していた。袋の外には闇が訪れていた。
 ガヤガヤガヤ……。わはははは……。遠くから大勢の気配と声が聞こえてくる。
ん?あれは人間の気配ではないぞ。そう思っていると袋の外を怪しい光の群れと共にたくさんの気配が通りすぎていく。ビニール越しにその行列を眺めていると、「おい、袋の中に誰かいるぞ。」と声がした。
 「お前さん、袋の中で何しとるのかね?」
 「あぁ、私は明日にはこの袋ごと捨てられる定めのようです。あなた方は何故ここにいるのですか?」
 「わしは塵塚怪王。お前さんみたいなまだ使えるのに捨てられた憑喪神を率いて百鬼夜行しているところさ。お前さんも私達と一緒に妖怪の世界にいかないかい?」
 「どうせ捨てられるのであればそれもいいかもしれない。しかし、私は彼女の想いから生まれた存在だ。それが私の誇りだ。であれば彼女の行為に従うのが私の矜持だ。お誘いはうれしいが、気持ちだけ受け取ろう。」
 「そうか、せっかく自由になれるのになぁ。まぁ、生き方なんてそれぞれだ。じゃぁな。」
そういうと怪異の一団は去っていった。私のような存在が、仲間が、他にもあんなに大勢いるのか。そう思うとこのまま独り捨てられていくことにまた悲しみを感じられずにはいないかった。
 翌朝、私は静かな心持で最期を迎えようとしていた。
ガサッ、袋を持つ音がした。いよいよ別れだ。
そう思った直後、袋の口が開いて彼女の顔が見えた。彼女は袋から私を取り上げると埃を払い抱きしめてくれた。
 今では彼女の娘が私の持ち主だ。私にはまだまだ見守る人がいる。幸せだ。


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このストーリーに関するコメント

13/02/19 泡沫恋歌

また拾い上げて貰えて良かったね。

これは良い話です!

13/02/19 石蕗亮

心が宿るまで大事にされたのだし、持ち主の行為を己が矜持にするくらいなので捨てられないという結末を決めてから描いてみました。
捨てられないお気に入りって何かしらありますよね?

13/02/22 草愛やし美

石蕗さん、よい結果でほっとしました。

おもちゃも含めて、まだ使えるものを捨てることの多い時代になっています。捨てるのにお金までかけなければいけないというのに……。飽食の時代、ものは溢れています。景気が悪いはずなのに……、矛盾を感じないではいられません。でも、こんなことを書いている私もその中の一人です。そのうち、百鬼夜行に出会うかもしれませんね。

13/02/24 石蕗亮

価値観が変わってしまいましたからねぇ。
過去の贅沢品が現在では消耗品扱いされていますからねぇ。
実家の納戸ではそろそろ何かが爆誕しているかも(笑)
百鬼夜行に混ざると妖怪の仲間になっちゃいますから気をつけてくださいね♪

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