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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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しあわせー!

13/02/14 コンテスト(テーマ):第一回 【 自由投稿スペース 】 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2774

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 バリバリバリ……、ドカーン!
 朝方の薄暗い部屋に霹靂(かみとき)の電光が走り、天鼓(てんく)が轟き渡る。近くで落雷したのだろう。
「ウッセイなあ」
 ベッドの中で、高見沢一郎は不機嫌に独り唸り、重い瞼を開けた。
 そして……ギョッ!
 口から心臓が飛び出すほど驚いた。
 ベッドの脇に、一人の男が……立っているではないか。
 さらに高見沢は度肝を抜かれる。よく見ると、ヤツは高見沢自身ではないか。
 これは、ひょっとすれば、幽体離脱という現象?
 それにしても、まるで狐につままれたようだが、ここはサラリーマンを生業(なりわい)としている高見沢、こんな場面でも、いつもの調子の、ヨイショの言葉を掛けてしまう。
「えっと、どちらさまの社長さんでしたっけ?」
 すると男は実に馴れ馴れしく言う。
「俺だよ、C星のおまえだよ」
 高見沢は何のことかさっぱりわからない。
「ほう、私ですか。ところで、C星って、……、どこの県?」
 こんなトンチンカンな質問を受けた男は口をポカーンと開け、まことに呆れ顔。その後、高見沢の記憶を蘇らせようと語り出す。
「地球の一郎、おまえ忘れてしまったのか? C星は20光年先にある獅子座の星だよ。まるで鏡に映ったように、C星は地球が裏返ったようなもの。何もかもが同じなんだよ。最近ホームセンターで、やっと時空トンネルが販売されるようになってなあ、何はさておき一番に、地球の俺に会いに来てやったんだぜ。少年時代、一度C星に行ってみたいと、おまえは夢見てたんだろ」
 高見沢はこの男の解説で思い出した。そう言えば、宇宙マガジンに載っていた。獅子座に太陽に似た恒星があると。そしてその惑星の一つが地球と瓜二つ。いわゆるミラー星だ。
 そこには地球と同じ町があり、もう一人の自分が存在している。
 こんなことを知った高見沢、一度C星の自分に会いに行ってみたいと願うようになった。しかし、過ぎ行く時間の中で、少年はそんな夢を忘れ去ってしまった。
「さあ、地球の一郎、出掛けるぞ」
「えっ、どこへ?」
 高見沢は目をこすりながら訊く。
「決まってんじゃん、今からおまえの夢を叶えてやるから。俺の後を付いて来い」
 男は有無を言わさず、急かせてくる。だが、考えてみれば、これは千載一遇のチャンスだ。「ヨッシャー! 頼むぞ、C星の一郎さん」と返した。

 このようにして、C星一郎さんの後をトコトコと付いていく。すると神社の雑木林にゴロンと転がっていたのだ。長さ10メートルほどの時空トンネルなるものが。
 高見沢はC星一郎さんの後を追って潜り込む。すると想像だにしていなかった、星々が煌めく空間をペガサスに跨(また)がって、悠々と飛翔して行く嬉しい羽目に。
 その時間は30分程度のことだった。そして天馬から下りトンネルから抜け出すと、ここがC星だとのこと。しかし、そこはやっぱり神社の雑木林の中、地球とまったく変わらない。
 そこから導かれ、赤いトンガリ帽子の洋風の館(やかた)へと案内された。
「さっ、ここが俺の家だよ、遠慮なく入ってくれ」
 C星一郎さんが高見沢を暖かく招き入れてくれた。しかれども、そこにいたのだ、高見沢の連れ合いが。
「おい、夏子、ここで何してんだよ」
 こんな失礼な問い詰めに、女性は「ほほほ」と上品に笑うだけ。
「おいおい、地球の一郎、その奥方は……俺のカミさんだよ」
 C星一郎さんからこんな横槍が入った。これでやっと高見沢は、そのご婦人がC星の夏子さんだと理解できた。
 その後、高見沢は高級調度品が並ぶ洋室で、手作りのフランス料理をご馳走になった。また高級外車で観光へと連れて行ってもらった。まさに「アナザー・ミ−、遠方より来たる。また楽しからずや」であり、高見沢は大歓待を受けた。そして暇を乞うた。

「それにしても、C星の一郎さんは金持ちだし……、奥さんのC星夏子さんはいつも夫を敬い、お淑やかな御婦人だったよなあ。地球の俺たち夫婦とはぜんぜんチャウで、……、なんでだよ!」
 地球とC星は互いを映し合ったミラー星、つまり何もかもが同じ星、のはずだった。
 ところがどっこい、その実態は……どうもC星の方が幸せそう。
 高見沢は羨ましくもあり不満でもある。そんなちょっと複雑な感情を抱きながら、時空トンネルを通って単身赴任の安アパートへと戻ってきた。

「ふー、ちょっと疲れたなあ」
 高見沢はため息を吐き、ソファにどっかと座る。目の前に家族の写真とカエルの置物がある。いつぞや夏子が「あなた、ここへ必ずカエルのよ」と言って飾ったものだ。
 高見沢はそれをまじまじと眺める。そして手にしていた冷えた缶ビールをシュパッと開け、後はゴクゴクと一気に。
 美味い!

 そして、現代サラリーマンの雄叫びを……一発。
「しあわせー!」


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このストーリーに関するコメント

13/02/14 草愛やし美

鮎風遊さん、拝読しました。

不公平ですよねえ、でも高見沢さんには、小市民の幸せで充分なんですね。ある意味、その性格は、最たる幸運かもしれませんね。面白かったです。時空トンネル一度トライしてみたいもんですわ。

13/02/15 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

やっぱり、地球の高見沢一郎さんには小市民的な幸せが一番ですよ。
缶ビール1本の幸せだってイイじゃないですか。

13/02/18 鮎風 遊

草藍さん

時空トンネル、その内にコーナンあたりで売られるようになるかも。
いつも探してるんですが。

13/02/18 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

そうなんです、高見沢は小市民。
だけど、結構満足しとります。

缶ビールで、しあわせです。

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