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藤代成実さん

性別 男性
将来の夢
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かぶと虫

13/02/11 コンテスト(テーマ):第一回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 藤代成実 閲覧数:1592

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ある樹齢を経たクヌギの木に、かぶと虫の王様が住んでいた。王様は、毎日ほかのかぶと虫や、ほかの虫たちに威張り散らしていたが、ある日突然、虫取りに来た男の子に、あっけなくつかまえられてしまった。
 王様は悔しそうに少年の小さな手の中でもがいた。
「気をつけたまえよ。きみだっておれみたいにならないとも限らない」
 男の子はニヤリと笑って、虫かごの中にポトリとかぶと虫を入れた。

あたりはもう漆黒の闇。門限はとうにすぎている。男の子は見つからないよう、そっと玄関のドアを開けた。鬼のような父親の顔が彼を迎える。男の子は逃げようとしたが、もう遅かった。男の子は襟をつかまれ、そのまま押入れに放り投げられた。父親は言った。
「おれがいいというまで押入れの中からでちゃだめだ」
 押入れの戸が大きな音を立てて閉まった。
 父親の足音が遠ざかると、男の子はすっと押入れの戸を開けた。足音を立てないよう、すり足で歩きながら、呑気そうに野球中継を見ている父親のそばを通り過ぎた。少年は玄関そばの電話機で、なにやら話していたが、すぐに虫かごを持って、外へとび出した。
「待ちなさい」
 父親は何度も言った。父親のどなり声はだんだんと遠くなり、やがて消えた。

 男の子はクヌギの前に着くと、真っ先に虫かごのふたを開けた。かぶと虫はうれしそうに飛んでいった。男の子はかぶと虫に手をふった。冷たく、清らかな風が辺りを包む。
 遠くのほうで、パトカーのサイレンが聞こえた。男の子は笑いながら、誰もいなくなったわが家へと、一目散に駆けていった。


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