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村升 青さん

趣味で二次創作する程度。 書くのは好きですが稼ぎたい程ではないです。 閲覧が主で、他の方の文やその評価を読んだり、たまに投稿したりして文章力を付けられたらなあと思ってます。 夢で見た光景を文にするので意味不明な所もあるかもしれません

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埋まった

19/05/26 コンテスト(テーマ):第169回 時空モノガタリ文学賞 【 純情 】 コメント:0件 村升 青 閲覧数:108

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ある雨の日の放課後、親友に伝言を伝えられた。
「雪絵が、タイムカプセル埋めるから裏山に来て欲しいって」
にやけてそう言う彼は、良い奴だが嘘も多い悪戯好きだったので、一瞬驚いた僕はふうんと平静を装い、傘を差すといつも通り一人で家に帰った。
次の日登校すると、幼馴染の雪絵はいつも通り席に着いていた。
僕が来てもおはよと笑うだけだったので、やはり彼の言葉は嘘だったのだと僕は胸を撫で下ろした。
休み時間に彼は僕の所にやって来て「お前昨日裏山行った?」と確認してきたが、僕が行っていないと返すと不満だったのか眉を下げて黙り込んでしまった。

その後の数年間もそんな風に、何事も無く平和に過ぎていった。
いつも担任の話は長くて退屈だし、親友の彼は時々変な事を言い、雪絵と僕はただの幼馴染。
そうして卒業式を迎えた。
いつもと違い泣いている担任のやはり長い話を聞き終え、物悲しい気分で卒業証書をランドセルに押し込んでいると、彼が僕の元へやって来た。
大きな学生服に包まれ動きづらそうに、しかし式で泣いて赤くなった目元を恥じるようにそわそわと落ち着きなく目線をさ迷わせている。
「あのさ、」
切り出したその声はいつもと違って真剣味を帯び、その態度もあって何だか気持ちが悪かった。
案の定教室にいた他の男子に「告白は校舎裏だろ」と笑われ本気で怒っていたけれど、それでも彼らが走り去ると再び真面目な顔をして僕の方を向いた。
「…雪絵どこ行ったんだろうな?」
彼に言われ教室を見るが、既に殆どの生徒が親と帰り終えたそこに雪絵の姿は無く、また先に一人で帰ってしまったのだろうと僕は残念な気がした。
卒業という非日常に二人の関係の変化を期待していたのかもしれない。
彼の言葉はこう続いた。
「昨日さ、雪絵が俺んとこ来たんだよ」
その一言にすっ、と腹の底が冷え、続いて押し寄せた鉛のような感情に僕はゆっくりと彼を睨み上げた。
「流石にこんな最低な嘘つかねえって」
彼は変にずれた解釈をし慌てて手を振った。
「何かな、掘って欲しいからお前に裏山来てくれって。ずっと待ってるって言ってた。変だよな、やっぱあの時何か埋めてたのか?」
彼に嘘をついている様子は見られなかった。

まさかと思いつつ家に帰った僕は小さなシャベルを持ち、若干急ぎ足で裏山へ向かった。
また嘘かとも思っていたが、山へ入ってすぐ雪絵を見つけた僕は今度こそ歓喜した。
小学校に入学した頃、僕達二人は裏山の秘密基地と称した横穴でよく遊んだ。
壁のような斜面に開いた穴で降りてみないと見つからないのだが、雪絵に先導され久々にやって来たそこはすっかり崩れて埋まっており、目前まで来ても暫く気付けない程だった。
ここだと示されて僕はシャベルで穴を掘り進めた。
スコップが必要な深さの穴だったが、そう深くは埋めていなかったのかすぐにこつんと小さな手応えがあった。
手を伸ばすと、雪絵は突然すき、と言った。
僕が驚き固まると雪絵は大好き、と再度言って照れるように笑った。
意味を理解すると僕はかっと体が熱くなり、顔を逸らして動揺しつつ僕もと答えた。

両想いとなった僕らは中学校へは共に登下校するようになった。
放課後も共に過ごすし休日は一日中お喋りする。
背の伸びた僕を雪絵は羨ましげに見て、僕は乳歯も抜けきらない雪絵を笑った。
やがて二人の時間を制限される学校へ行く事など無意味に思えてきて、僕は学校へ行かなくなった。
そうすれば雪絵はずっと隣にいてくれるし僕はずっと雪絵を見ていられる。

ある日、タンスと扉の向こうから母の小さな声がした。
僕らに遠慮してか躊躇いがちに「親友の彼が来ているけどどうする」と。
彼には散々嘘もつかれたし、からかわれ変な事を言われもしたが、卒業式のあの日きちんと伝言を伝えてくれた事を思えば彼は僕と雪絵のキューピットだったのかもしれない。
懐かしいねと雪絵と笑い合い、僕は彼を部屋に通すよう母に伝えた。
扉を少し開けて待っていると、やがて彼は大きくなった体を押し込むように扉の隙間から入って来た。
学生服を着こなした彼は久々に会うせいか随分と大人びて見えた。
そんな彼を雪絵に会わせるのは少し嫌だったけれど、雪絵が嬉しそうに見えたので我慢する事にした。
「お前さ、」
低くなった彼の声があの日のように真剣味を帯びて部屋に響く。
僕は雪絵を抱き寄せて彼の言葉の続きを待った。
すると彼は突然その体を揺らし、目を見開いた。
青ざめて、「警察、」等とまたおかしな事を呟いている。
僕が首を傾げると、彼は震える指で雪絵を示した。

「それ、雪絵の骸骨か?」

相変わらず不思議な事を言う。
雪絵は雪絵。
秘密基地で僕を待ち、幼い姿のまま冷たく硬くなろうと、鞄に入れられ運ばれようと、僕の隣にいてくれる、愛しく大切な僕の恋人なのだ。


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